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第21話  金崎

 経丸達は金崎の居城春日山城に無事着いた。


 金崎の居城春日山城は大きな山を丸ごと城にしておりこの日ノ本一の大きさの山城である。


 難攻不落無敵の城に見えるがしかし弱点がひとつある。冬は豪雪によって身動きがとれなくなる城なのである。そのため金崎軍は冬の間は全く戦ができなくなるのである。


 経丸達を見つけた門番のいかつい男は経丸達に向かって


「お主達、何者だ」


 横柄な態度の門番に対して経丸は丁寧な口調で


「この城の城主金崎様に用事がある天羽経丸と申します」


 門番は経丸の言葉を聞いてガラリと態度を変えて


「天羽様でしたか、これは失礼しました。ただいまご案内させていただきます」


 経丸達は城の中を通された。


 門番は金崎の部屋の前まで経丸達を案内し


「ここでございます、では私はここで」


「ありがとうございます」


 経丸達は丁寧に門番に頭を下げた。


 経丸は


 (うわぁ緊張する、こういうの初めてだから)


 経丸は緊張しながら、震える手で戸を開けた。


「失礼します」


 丁寧に頭を下げる経丸に金崎は


「初めまして、経丸様」


 と言って丁寧に頭を下げる。


 経丸は金崎に


「初めまして」


 と深く頭を下げる。その後、凛と士郎とひのが入って来て


「おっ久しぶりですね。士郎君、凛ちゃん」


 士郎は金崎の顔を見て昔の記憶が一瞬でよみがえり驚き


「先生、もしかして先生じゃないですか?」


「士郎君あいかわらず元気そうで」


 凛は士郎と対照的に


「お久しぶりです、先生」


 金崎は笑顔で


「二人とも立派になって」


 士郎と凛は金崎の言葉が嬉しく自然と笑顔になっていた。


 士郎は手をあげて


「先生、ずっと名前教えてくれなかったから金崎が先生ってわからなかったよ」


「あの時は城主を放棄して逃げ出してたから名前は教えられなかったんですよ」


「そうだったんですか」


「しかし、二人がこんなに立派になって驚きましたよ」


 士郎はツッコむように


「いや、先生がこの日ノ本一、二を争う大大名だったことの方が驚きですよ!しかもおなごなのに凄すぎます!!」


「いや、そんなすごい事ではないですよ」


「先生、紹介しますね。こちら天羽家当主の経丸さんと僕らの仲間のひのさん」


「天羽経丸です」


「ひのです」


「で、こちらが先生、それがしと凛の寺子屋時代の先生です」


「安房の寺子屋で先生やっていた、金崎です。今は越後の大名です」


 経丸は驚きながら


「金崎様と士郎さんと凛ちゃんはお知り合いだったんですね」


 金崎は優しい口調で


「そう、だから同盟は結びましょうね。経丸さん」


「えっ、もう結んでくださるんですか?私にあってから次第だと」


「一目見てあなたは気品があって賢い顔立ち、それに士郎君と凛ちゃんが仕えているから信用も出来るだから同盟は結びましょう」


「はい、ありがとうございます」


  経丸は深々と金崎に頭を下げた。


 金崎は経丸に近づき右手を差し出して


「経丸さん、これからよろしくお願いしますね」


「はい、よろしくお願いします」


 と言って金崎とガッチリ握手する。


 金崎はひのにも近づき右手を差し出して


「ひのちゃんもよろしくお願いしますね」


「はっ、はいよろしくお願いします」


 と言ってひのもガッチリ金崎と握手した。




「ドタバタ、ドタバタ」


 廊下から足音が聞こえ襖が勢いよく開き二人の男が声を揃えて


「おい、士郎来てたのか⁈」


 士郎は驚きながら


「Uーうーた、Oーおーたじゃん!!」


 士郎はU-太、Oー太と握手する。


 金崎は経丸達にお茶を出して一息ついた後


「じゃあ、さっそく町を案内させていただきます」




 金崎に連れられて経丸達は城を出た。


「金崎殿、どこへ連れて行ってくださるのですか?」


「経丸さん達服に興味ありますよね?」


 士郎以外の皆は目を輝かせながら


「はい、あります」


「それはよかったです、この近くにいい服を揃えている呉服屋がありますので今からそこへ行こうかと」


 士郎以外は「やったー‼」と喜ぶ服に興味のない士郎はあまり喜ばないその様子を見ていた金崎は


「士郎君ごめんね、少し付き合ってね」


「それがしの事は気にしないでください。女性陣、喜ばしてあげてください」


 金崎は笑顔で


「もちろん、士郎君。紳士になったんだねぇ」


 士郎は顔を真っ赤にしながら


「先生。それがし褒められ慣れてないんで反応に困ります」


「士郎君。可愛いね」


 士郎は更に顔を真っ赤にした。


 士郎達は呉服屋についた。


 士郎達は呉服屋に入るとそこには凄い数の着物が置いてあった。


 あまりの数の多さに経丸は


「うわぁー!凄い数ですね!!」


 金崎は優しい笑顔で


「皆さん欲しいものがあったら私達に遠慮なく言ってください」


 経丸は慌てて


「それは悪いですよ」


「遠慮しなくて大丈夫ですよ、私から見たら皆、娘みたいなんですから」


「しかし」


 戸惑う経丸の横で


「先生、ありがとうございます。早速服を見て回ります」


 経丸はちょっと強い口調で


「ちょっと、士郎さん図々しいですよ」


 士郎はドヤ顔で


「図々しいのはそれがしの専売特許ですから」


 金崎は優しい表情で


「経丸さん達選んできてください」


 経丸と凛とひのは声を揃えて


「すみません、ありがとうございます」


 経丸達はウキウキしながら服を見て回った。


 士郎は退屈で大あくびしながら椅子に腰をかけていた。


 ひのは少し派手めの赤色の主張が強い着物を持って


 これは私には少し派手かなぁ、でもちょっと着てみようかなぁ


 凛はひのの後ろから


「あっ、ひのちゃん!いいじゃんそれ」


「そう?」


「似合ってるよ」


「いや、ちょっと着てみただけだよ」


「いやわかるよ、私も女の子だから変身してみたい気持ちわかるわかる」


「いや、そんなつもりじゃないよ」


 顔を赤くして言うひのちゃんに凛は


「まぁ、変身願望があるのは恥ずかしがることじゃないよ」


「別に変身願望があるわけじゃないからね‼」




「凛ちゃん。ちょっと来てください」


「どうしたんですか?経丸さん」


 経丸はアジサイの刺繡が入った黄色と赤の二つの着物を持ち


「色を黄色と赤で迷っているんですがどちらがいいと思いますか?」


 凛は即答で


「黄色がよろしいかと」


「なんで黄色?」


「経丸さん、その黄色に着替えて少し待っていてください」


「えっ!ちょっと凛ちゃん」


 凛はそう言うと困惑する経丸を置いて走り出した。


 凛は士郎の右腕を乱暴に引っ張り


「兄貴、兄貴」


士郎はけだるそうに


「なんだよ」


「ちょっときて」


士郎は渋々凛に付いて行った。


凛が士郎を案内したところには新しい黄色の着物に着替えた経丸の姿があった。


「ねぇ、この経丸さんの格好どう思う?」


 士郎は鮮やかな黄色の着物姿の経丸に


 (すっげぇー綺麗だ)


 士郎はどもりながら心の声が漏れるように


「おっ、経丸さん綺麗ですよ。凄く」


士郎の意外な言葉に経丸は戸惑うように


「えっ?」


「えっ?って」


「さっきなんて言いました?」


「あっ!あっ!あああああああああ!!」


 凛はニヤニヤしながら


「兄貴、経丸さんの事綺麗って言ったよね」


 士郎は少し大きな声で


「バカ、余計な事言うな」


 経丸は士郎を茶化すように


「士郎さんが私の事綺麗ってお世辞言うなんて」


 士郎は小さい声で


「それがしはお世辞なんか大っ嫌いなんですよ」


 経丸は呟くように


「えっ?」


「なんでもないです」


 そう言って士郎はその場を急いで立ち去った。


 なんだかんだで皆着物が決まった。


 士郎と経丸と凛とひのは声を揃えて


「金崎様、ありがとうございました」


 深々と頭を下げた。


 金崎は優しい表情で


「皆、更に綺麗になって良かったですね」


 経丸達は少し照れた。


「士郎君は何か欲しい物ある」


「カツオ食べさせてください!!」 


 金崎は微笑みながら


「士郎君昔からカツオ好きだよね」


「まぁ、それがしカツオの神様って言われてますから」


 経丸は


「誰が言てるんですか?」


「今はそれがしだけだけどそのうち日ノ本中で言われるようになりますよ」


 経丸は


「いつか言われるようになるといいですね‼」


「はい!日ノ本中にそれがしがカツオ好きって事を認めさせてますから!!」


「じゃあ、皆で越後の美味しい海鮮食べに行きますか」


 金崎の言葉に皆声を揃えて


「はい!!」


 これにて天羽家は無事金崎家と同盟を結べたのであった。



















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