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第20話  越後

 ここ天羽家の居城館山城の経丸の部屋で


 経丸は穏やかな口調で


「三人でゆったり、お茶会するのは初めてですね」


 凛もにこやかな表情で


「そうですね、なんか三人だけでゆっくり話せる機会初めてなので今日は色々話しましょう」


 ひのも笑顔で


「そうですね、色々お話したいです」


 三人はお茶を飲みお茶菓子を食べながら話し始めていると


「ドタドタドタドタ」


 と急いで走っている士郎の足音が昼間の館山城の廊下に響き渡る士郎はいきなり勢いよく経丸の部屋の前に行き息をゼイゼイさせながら


「経丸さん、緊急の知らせです。入ってもよろしいでしょうか」


「はい、わかりました」


 士郎は経丸と凛とひのの三人の女子会の中に入り


「楽しい会を邪魔してすみません。経丸様、八坂家と国光家が同盟を結んだそうです!!」


 凛とひのとお茶を飲んでいた経丸はビックリし


「えっ!なぜ八坂家と同盟を結べたんですか?彼らは私達天羽家と共に八坂家に敵対したではないですか!!」 


「あくまで噂ですが・・・」


 凛は士郎を疑いの目で見ながら


「兄貴、その噂あてになるの?」


「なるね、なるなる」


「経丸さん、私達もいち早くどこかの国と同盟を結びましょうか」


「そうですね。凛ちゃん同盟相手はどうやって決めますか?」


 士郎は元気よく手をあげて


「はい、はい、経丸さん、壁に地図を貼って経丸さんが弓矢で射抜いた名前の大名と同盟を組めばいいと思います」


 経丸は士郎の背中を軽く鉄扇で叩きながら


「士郎さん、そんなふざけた方法で同盟相手を決めちゃダメですよ。天羽家の命運がかかってるんですから」


 士郎はもの凄い大声で「痛ってぇー‼」叫びながらのたうち回る


「兄貴、大げさだよ。経丸さん軽く叩いてたじゃん!!」


「いや、痛いって何で叩いた?」


 経丸は自分の右手に握られているのが鉄扇だと確認すると驚き慌てて


「ごめんなさい、士郎さん。本当にごめんなさい。大丈夫痛くない?」


「何で叩いたの?」


 経丸は申し訳なさそうに


「鉄扇です」


 凛が笑顔で


「まぁ、まぁ大丈夫ですよ。たいした怪我してないですから」


「そのセリフ言うとしてもそれがしが言うセリフだから‼」


「ところで経丸さん、意見を言ってよろしいでしょうか?」


「ねぇ、何話進めようとしてるの?君の兄貴がこんなに痛がってるんだよ」


「はい、可哀そうだね。ところで経丸さん」


「おい、もっと心配しろよ!」


「経丸さん、すみませんが兄貴うるさいので背中をさすってあげてください」


「あっ、はい」


 凛は士郎にだけ聞こえる声で


「兄貴、これでよかったろ?」


 士郎は凛にだけ見えるように親指を立て


「ナイス!」


 凛は思いっきり引いた顔で


「気持ち悪‼」


「お前、後でぶっ飛ばすぞ!」


「ふ~ん」


 (やべぇ!凛が何かそれがしの弱みを暴露しようとしている顔だ)


 士郎は慌てて


「ごめん凛」


 凛はニコッとした表情で


「わかればいいよ」


「同盟相手は越後の金崎殿が良いかと」


「なぜですか、凛ちゃん」


「まずは領地が大きいのと金崎家の家風が義でございます」


 士郎は会話に割って入るように


「義ってなんなんだ凛」


「絶対に裏切らず弱気を助け、強気をくじく正義のこと」


 士郎は凛の言葉を聞いて


 (何かその言葉聞いたことあるなぁ)


「しかし何で凛は金崎の家風まで知っているの?」


「まぁ、兄貴もホントは知ってるはずなんだけどね」


「えっ、えっ!!それがし知ってる?」


「うん、知ってる」


「なんだ、教えろ!!」


「ホントに気づかないとは」


「もったいぶるな、早く教えろ」


「越後まで行けばわかるよ」


「越後に行く前に教えろよ」


「い・や・だ!!」


「何でだよ!!」


「凛ちゃん、教えてあげれば」


「そうだ!経丸さんの言う通りだ!!」


「わからないなら、越後に行ってわかった方がサプライズ感があっていいじゃん。ネタバレは面白くないよ」


「確かに、ネタバレは面白くない!!じゃあ教えんなよ!絶対にネタバレすんなよ!!」


 凛はニヤニヤしながら


「どうしようかなぁ?ここでネタバレしちゃおうかなぁ?」


 士郎は慌てて両耳を両手に当てて


「やめろ!それがしは耳塞ぐからな!!」


 凛は声を出さずに口だけ大きく動かすと士郎は大きな声で


「やめろ!やめろ!!ネタバレするんじゃねぇ!!」


 凛は笑いながら


「アホですねぇ、兄貴」


 経丸とひのも笑ったのであった。


 片倉さんは焼き焦げた納屋の跡地に行くとそこには必死に納屋を立て直そうとしていた海老太郎とチビルの姿があった。


「君たち、まさか倉庫を作り直そうとしてるの?」


 海老太郎は凄く大きな声で


「はい‼僕が壊してしまったので申し訳ありません‼」


 片倉さんは笑いながら


「うるさ、声量調節してしゃべらないと」


 片倉さんにそう言われてもすぐ大きく元気な声で


「はい‼」


 返事をしたと思えばいきなりテンション低い声で


「しかし、僕はほんとに皆さまに悪い事をしてしまって」


 片倉さんは笑いながら


「海老太郎君は見かけによらずちゃんと敬語しゃべれるんだな」


「失礼ですよ!!片倉さん」


 片倉さんと海老太郎の横で二人の会話を聞いていたチビルの三人は笑った。


 そこへ士郎が来て


「皆、経丸さんが呼んでるよ」


「わかった」


 そして皆が集まり話し合いが行われ


「片倉さん、私達は金崎殿と同盟を結ぶびたいと思っているんですけどどうでしょうか?」


「金崎殿ですか、確かに大大名で義を貫く良き大名ですが、逆に言えば弱い者は皆、金崎殿を頼りに行くのでこれ以上は断られるかと」


 凛が自信満々に


「絶対に断られることはないかと」


「凄い自信だね。凛ちゃん。なにか自信の根拠はあるの?」


「あります!ここで言いたいんですが」


 凛は士郎を見ながら


「言うと困る人がいるので」


「あっ!ネタバレに繋がるのかそれなら言わなくていい!!片倉さん凛が自信あるって言ってるんだ!!信用できないのか!!」


「いや、凛ちゃんは信用できる。まぁ、士郎君は全く信用できないけど」


 片倉さんの言葉に士郎は


「一言、余計じゃね。めっちゃ余計じゃね」


 皆が笑う。


「では、同盟を申し込みます」


 この経丸の発言に片倉さんは


「わかりました」


「じゃあ、金崎殿と同盟を結ぶことに反対する方はいませんね?」


 海老太郎がいきなり大きな声で


「ちょっと待ってください!!」


 士郎が


「おい、びっくりさせるな!結婚式に新婦を取り返しにくる男みたいな感じで言いやがって!!」


「何ですか、海老太郎さん」


 海老太郎は真剣な表情で


「同盟ってなんですか?」


 ひの以外の皆、頭を打ちつける。


 片倉さんが優しく


「簡単に説明すると、お互いにお互いと戦をしないのと同盟相手が敵と戦っていたら共に同盟相手の敵と戦ったりすること」


 ひのが


「仲良し!仲良し!!になるってことですね」


 士郎はひのに


「まぁ、簡単に言えばそう。仲良し二回繰り返す必要あるかな?」


 ひのは即答でハッキリと


「ないです!!」


 思わず、皆笑う。


 海老太郎は片倉さんに真顔で


「片倉さん、意味わかってましたか?」


「わかってるから、説明したんだよ!!」


 皆、笑った。


「海老太郎さん、金崎家と同盟を結んでもいいですか?」


「はい、同盟はいい事なのでいいと思います」


「若、とりあえず手紙を出して会いに行くことを伝えましょう。向こうにも用事があるかもしれませんから」


 片倉さんの言葉に経丸は


「そうですね、片倉さん」




 そして後日、金崎から手紙が来た。


 経丸は少し不安な表情で


「金崎様から、とりあえず会うことは会うが同盟を結ぶかどうかは私に会って次第だそうです」


「そうですか」


 片倉さんは呟くように言った。


「それでですけど今回は私とひのちゃんと凛ちゃんと士郎さんとで行きたいと思います」


「若、私は」


「片倉さんは城の留守を頼みます」


 士郎はふざけて、偉そうな感じで片倉さんの肩をポンと叩いて


「しっかり留守を頼むぞ。片倉さん」


 片倉さんは真剣な表情で


「士郎君、皆を頼むよ。なんかあった時、士郎君が皆を守り抜くんだからね」


 海老太郎は真顔で


「士郎さん、早く行ってね!!」


 皆は笑った。士郎も思わず笑ってしまいながら


「早く行ってねって、どういう事だそれがしに早くいなくなってもらいたいのか」


「いや、僕はそんなつもりじゃ、ただ士郎さんが早く行って遅く帰って来ればその分、安房が平和な時間が長くなって嬉しいなぁと」


 士郎は海老太郎を捕まえて頭をぐりぐり攻撃しながら


「そんなにそれがしが平和を乱してるか?」


「めっちゃ、平和。士郎さんめっちゃ平和。士郎さん鳩です」


「鳩?それがし鳩ってどういう事?」


 海老太郎は必死に


「士郎さん、知ってました?鳩って平和の何とかって言うんですよ」


「まず、お前が理解してねぇじゃねぇか!!」


 と士郎がツッコむと皆笑う。


 片倉さんは笑いながら


「海老太郎君、平和の象徴だよ」


 海老太郎はいきなり士郎の耳元でめちゃくちゃ大きな声で


「そう、それです!!」


「うるさいわ!!」


 と士郎は海老太郎の頭をはたいた。


 皆はこの一連のやり取りに大笑いしたのであった。



 そして翌日、館山城正門前で経丸は皆に向かって


「じゃあ行きましょうか!皆の者出陣じゃー‼」


「オゥ!!」


 こうして金崎と同盟を結ぶために経丸達は金崎の国、越後に向かって行ったのである。


 果たして経丸達は金崎と同盟を結ぶことができるのだろうか?







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