第18話 葬儀
長経を討った鷲雪は大樹寺に戻るとばったり麒麟と会い
麒麟は鷲雪の姿を見て心配そうに
「どうした、何があった怪我してるではないか!まっててくれ、すぐに怪我の手当てをするから」
「いや、手当なんてそんな大丈夫です」
「いや、大丈夫ではない」
そう言って麒麟は手当の道具を急いで持ってきて。
「ごめんな、少し染みるけど我慢してな」
麒麟はとても丁寧に鷲雪の手当てを行う。
「どうした、こんな傷ついてどこで戦ってたんだ」
鷲雪は体を震わせながら
「天羽長経を討ち取りました」
「えっ?えっ」
麒麟は鷲雪の言葉に思わず絶句する。
「はい、私天羽長経を討ち取りました」
しばらく間が空いてから麒麟は鷲雪に怒りの含んだ声色で
「なぜ、そのような事をした?」
「なぜって、長経を討ったことを手土産に八坂翔平と同盟を組むからです」
鷲雪の行動の意図がわかった麒麟は冷静な口調で
「鷲雪、俺に力がないばかりに辛い役割をやらせてしまい申し訳なかった」
鷲雪は目を真っ赤にし涙を溜めながらも麒麟を真剣な表情で見つめながらハッキリとした口調で
「辛くなんかないです。それに私が勝手にやった事です。麒麟様は何も悪くないです」
「俺、誓うよ。鷲雪に二度と辛い事はさせぬと」
この言葉を聞いて鷲雪は泣きじゃくる。麒麟は鷲雪を優しく抱きしめる。
翌日、麒麟は軍率いて岡崎城に帰った。
長経様が亡くなって数日後
経丸は皆の前に現れ
「私が前を向かなきゃダメですよね、明日、父上の葬儀を行います」
士郎達は声を揃えて
「はい」
長経様の葬儀は館山城の近くの、南妙寺で行う事になった。
昼下がりの南妙寺に長経様を慕っていた、たくさんの村人が長経様の死を惜しみに来た。
士郎は寺がある場所よりも山を登った展望台に経丸達を連れて行き
「経丸さん、ここからの景色を見てよ」
その場所は景色を遮るものはなく山の斜面一面に美しく咲いているアジサイを一望できた。
「経丸さん、このアジサイ達はこんな山奥の中でも力強くそして綺麗に咲いてますよ」
「私もどんな状況でも力強くこのアジサイのように生きないとですね」
士郎はこの綺麗に咲き誇るアジサイに向かって
「外岡士郎は一生、天羽経丸さんを守り抜きまーす‼」
経丸は驚いた表情で
「士郎さん!」
片倉さんも大声で
「片倉水道は若を、命懸けて守ります‼」
続いてひのが
「私は経丸さんに一生仕えます‼」
凛も大声で
「私は経丸さんをどんな敵からも守れる策を考えます‼」
チビルは元の声は小さいが自分なりの精いっぱいの声の大きさで
「僕は足を使って経丸さんに情報を届け続けます‼」
海老太郎は興奮しながら
「うわぁ、なんかいい。皆カッケェーッス!!」
「皆カッケェーッスじゃないだろ!お前もなんかないの?」
「僕は経丸さんにカッコいいカブトムシ沢山あげます‼」
士郎は呆れながら
「いや、何かお前のだけズレてるぞ」
海老太郎は大声で
「皆と服装がズレてる士郎さんに言われたくないですよ‼」
皆は海老太郎の言葉に思わず笑いだした。
士郎は海老太郎の首を絞めながら
「この野郎!お前の口きけなくしてやる」
「キャー、ごめんなさい」
経丸は一人一人の顔を見て
(私は皆さんの為にもこの国を守っていかなきゃいけないな)
「片倉さん、武士の誓い、金打やりますか」
「そうだな、士郎君」
皆は経丸を囲むように円になって座り
「片倉さん、武士の誓いって何ですか?」
片倉さん海老太郎に丁寧な口調で
「刀の刃を少し鞘から出して戻す時にキンと鳴らして約束を守ると言う誓いの儀式の事だよ」
海老太郎は目を輝かせながら
「なんか、かっこよさそうですね」
士郎は真剣な声色で
「よし、やるぞ」
皆は自分の刀の刃を少し鞘からだけ出して
「それがし達は生涯、天羽経丸に仕えることを誓う!金打」
皆はキンと音を立てて刀を鞘にしまった。
この金打ちに経丸は心が熱くなった。
「若、あの雲を見てください」
経丸は片倉さんに言われ天を見上げる、その雲はなんか長経様が笑っているように見えた。
経丸は天に向かって心の中で
父上、私この仲間達と天羽家を守るので見守ってください
たくましくなっていく経丸は仲間達と共に天羽家を守って行く事覚悟を決めたのであった。