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第13話  八坂

ある日の事


 長経様と経丸と片倉さんが長経様の部屋で談笑しているとチビルはその部屋に入って


「申し上げます長経様、南平金々(ボンボン)様が隣国の尾張に攻め込むため兵を出せとのこと」


「おー戦かぁ、どうだ水道。一緒に戦いに行かないか?」


「えっ、私が付いて行ってよろしいのですか?」


「まぁ、今回の戦は楽勝なんだが、なんかあった時は水道は強いから頼りになるしな」


「はっ、ありがたき幸せ」


 この時の片倉さんはとても嬉しそうな顔をしていた。尊敬する長経様に頼りになると言われたからだ。


「父上、私は?」


「経丸はこの城を留守に出来ないから城を頼む」


「わかりました」


 普段の若なら付いて行きたいと言い張るのに、やはり当主になられてまた一段と成長されましたな


 経丸の成長に嬉しさを感じる片倉さんであった。




 


その頃、尾張の那古野城では


 よれよれの服を来て髪の毛ボサボサのだらしのない格好だがイケメンで身長百九十位の二十三才の男、八坂翔平がお供の鉄平を連れて馬乗りから帰って来て馬を小屋に戻していると


「殿―‼」


 那古野城内に怒鳴り声が響き渡る。


 物凄い形相で登場した小柄の六十代くらいのおじいさんに八坂は驚きながら


「おーどうした、どうした爺や、いきなり出てきて怒鳴りつけてくるとわ」


「殿!毎日、毎日どこほっつき歩いてんですか‼」


 八坂はめんどくさそうに


「またぁ説教か爺や、天下を取る俺に説教なんてナンセンスだぜ」


 爺やは大声で


「お待ちくだされ!南平金々が攻めて来ます‼」


「それはまことか!」


 八坂は顔を引き締めて低い声で言った。


「まことでございます。相手の兵力は二万五千。こちらは二千五百ですよ」


 八坂はニヤッとしながら


「ほーまぁ我が軍の十倍かぁ。まぁ天下を取る俺にはちょうどいいハンデだ!とりあえず寝ながら考えとくわ」


「殿、大きな事ばかり言っておられないで真面目にお考えくだされ‼」


 八坂は爺やの忠告を無視してその場を去っていった。



 南平からの手紙が長経様の元に届いて一か月後



 朝早く長経様と片倉さんは南平金々の本陣に着き太っている金持ちのボンボンみたいにのほほんとしているブサイクな顏の男太南平金々に


「天羽長経ただいま参陣いたしました」


「おー、天羽殿よく来たな、的な」


 南平の隣には体格の良い人当たりの良さそうな頼りになりそうな男がいた。


「天羽殿、こちら三河の国を支配している国光麒麟殿だ、的な」


「初めまして、安房の国、館山城、城主天羽長経です」


 麒麟は感じよく


「こちら、先ほど南平殿に紹介されている三河の国の麒麟です。共に南平殿の為に頑張りましょう」


「はい」


 長経様と麒麟は握手を交わした。


 南平はニコニコした表情で


「国光殿が先陣を務めてくれるお陰で今回の戦はスムーズになるようになる的な、だから天羽殿も活躍期待してる的な」


 長経様と片倉さんは声を揃えて


「はい」


 南平軍は国光軍を先陣に南平軍、天羽軍という順列で進軍をしていった。国光軍は次々と南平家と八坂の家の国境にある八坂家の支城を次々と落としていった。


 次々と城を落としたとの情報を聞いて南平金々は上機嫌で


「やはり、八坂は噂通りのうつけだ。数少ない兵を一か所に集めて籠城せずに格支城にバラバラに配置し個々撃破されるなんて」


 横にいた家来も南平に同調し八坂をバカにして笑った。


 夜中になって八坂の居城那古野城では元から年老いている爺やが此度の戦で更に老けた顔で


「殿、太松の先鋒国光軍の攻撃で次々と我らの城が落城しております」


「死者は多く出てしまってるか?」


「いえ、皆状況不利になるとすぐに降伏するのでそこまで出ておりませぬ」


「おし、それでよい」


「それでよいじゃないですよ!南平金々は刻々と我らに迫って来てるんですよ。どうするおつもりですか?」


 いかつい血気盛んな禿げ頭の男元木が


「もう、こうなった突撃だ‼」


 それに対して太っている男、山岡が


「いいや、籠城だ」


「意気地がないから籠城と申してるんだろう」


「バカは突っ込んで行くしか能がないからなこの禿げ太郎」


「何だ、このデブ助!」


「やんのか!」


「いいぞ、やってやるよ!」


 禿げ頭の元木と太っている男、山岡の喧嘩が始まった。


 二人の取っ組み合いを爺やは慌てて


「おやめください!おやめください!殿!どちらか早く決断してください‼」


 南平金々が桶狭間を通るのがいつになるのか?そして南平金々の居場所を突き止めれられるのか?


 八坂はずっと目をつぶって明日の戦のシュミレーションを頭の中で繰り返していたがあまりの二人のうるささに


「やめんかー‼」


 大声で怒鳴った八坂の迫力に皆が凍り付いた。


 爺やは心の中で


 殿もやる時はやるんですね


 と感心し少し涙を出していた。


 緊迫した空気になり皆は八坂の言葉を待った。


 八坂は一呼吸置いて


「明日は早い。いつでも戦えるようにじゃあ皆もう寝ろ!」 


 爺やは八坂の前に立ちふさがり


「殿!いい加減にしてください‼殿が南平の大高城の周りに砦を築いたから南平金々が攻めて来るんですよ!殿のせいで此度の戦が起きたんですからね、もっと真剣に考えてくださいよ‼」


 八坂は真剣な表情で


「皆は俺なんかを主と認めてくれて従ってくれる大切な家臣達だ。皆がいるのに負けるような戦を俺は絶対にしない‼」


「だから皆いつでも戦に行けるように早く寝ろ」


 禿げ頭の元木が


「殿がそう申されるなら我らは寝て来ます」


 太っている男山岡は


「そうですな、殿の命令だ!皆早く寝よ‼」


家臣達は大声で


「はい‼」


 心配性の爺やはまとまる家臣団を横目で見ながら


 本当に大丈夫なのだろうか、殿はちゃんと策を考えておるのだろうか



 八坂は自分の部屋に戻り


「天子、どうしたらいい?南平が攻めて来るよ~」


「南平は強いのですか?」


「強い強すぎる。日ノ本の四天王大名の一人、僕じゃ勝てないよ~」


 八坂はみんなの前では自信家で一切弱音を吐いたりしないが、右側の頬半分に大きな痣が目立ちはするが凄く綺麗な顔立ちの整った八坂の妻、天子の膝の上で甘えた声で言った。


 天子は八坂の弱音を聞きながら八坂の背中をさすっていた。


 天子は優しい口調で


「殿、私は殿なら太松を倒してこの国をお守りする事が出来ると思いますよ」


 天子は八坂の頭をさすりながら


「私は殿が天下人になる人だと心から信じてますから」


 八坂は上機嫌で


「おっし!天子、俺にとってその言葉心強いわ!ありがとう」


 天子はにこやかな表情で


「殿、明日は存分に戦ってください」


「もちろん、戦うよ」


 八坂は天子をギュッと抱きしめた後


「明日、早いから寝るわ」


「そうねぇ、お休みなさい」


 八坂は子犬みたいな表情で


「待って、不安で寝れなくなると明日の戦に支障が出るから、今日は天子と手を繋いで寝てもいい?」


 天子は優しく八坂の頭をなぜながら


「もちろん、いいですよ」


 明日の早朝からおこなわれる戦がこの時代を!この日ノ本を!大きく変える男の幕開けの戦になるとはまだ誰も知る由もないのであった。



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