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第12話  乗馬

昨日家督を継いだ経丸はいつもと変わらず士郎と片倉さんと稽古をし、そして皆で朝ご飯を並んで食べた。朝ご飯を食べた後、昨日もらった馬の事が気になり




「父上、父上から貰った馬に乗ってもよろしいでしょうか?」




 長経様は機嫌よく




「おー乗って来い。乗って来い」




「はい」




「せっかくだから皆も馬に乗れた方がいいから経丸に付いて行きなさい」




 士郎達は息を合わせたかのように




「はい」




 と大きく返事をした。






 片倉さんは士郎達を馬小屋に案内し馬を指して




「皆、この馬達の中から好きな馬を選びな」




 士郎と海老太郎は走って馬を選びに行った。




 皆が自分の乗る馬を選び終えると凛はキョロキョロ周りを見て




「あれ、兄貴。そういえば経丸さんは?」




「さっきまで、いたよな?」




 すると士郎と凛の後ろから経丸が馬に乗って




「皆さん、お待たせしました」




 士郎は振り返って




「あっ!経丸さん‼」




 経丸は毛並みの綺麗な白馬に堂々と乗っていた。




「経丸さん、カッコいいです」




「ありがとう。凛ちゃん」




 海老太郎は士郎に




「士郎さん、経丸さんめっちゃかっこよくないですか?」




 意見を聞かれた士郎は




「めちゃくちゃカッコいいし絵になる美しさだよね」




「惚れました?」




 士郎は勢いよく




「元から惚れてるわ!!」




 海老太郎は士郎の言葉に




「えっ!えっ!!」




 士郎も本音を言ってしまった事に大慌てて




「あっ!あああ!!」




「いや、いや待て待て!!その、あの、これな経丸様には言わないでよ」




「本気で好きだったとは」




「本気だよ、めっちゃくちゃな」




「何が本気なんですか?」




 士郎と海老太郎の二人はいきなりひのに声をかけられて驚くと海老太郎が




「士郎さんの事本気で好きなんですよ!!」




 ひのは大きな声で




「えっ!そうなんですか!!」




 士郎は慌てて




「いや、違うそんな話一切してない!!」




「間違えました。士郎さんが本気で好きなんですよ」




「あ!いつも仲いいですもんね!!素晴らしいです!!」




 そう言いながら拍手するひのに士郎は慌てて




「違う、違う!そんな話もしてない!!素晴らしいとかじゃないから!!」




「素晴らしいです!!仲良し素晴らしいです!!」




「仲いいけどなんかちょっと違う!!なんか勘違いされてる」




 ひのと海老太郎は士郎に向けて拍手をする。




「なんで、お前まで拍手してんだよ!!」




「ひのちゃん、楽しそうだから」




「はい、楽しいです」




 二人は楽しそうに大きく拍手をする。士郎は




 (もう、どうでもいいや)




 と思った。




 


 経丸が皆に近づき




「皆さんも馬に乗ってください」




 経丸にそう言われても士郎達は眺めているだけで誰も馬に乗ろうとしない




「あれ、皆さんもしかして」




「それがし達、せーの馬に乗った事ありません」




 一人だけ大きな声でセリフを言った士郎は恥ずかしくなり強い口調で




「なんでせーの皆で言わないんだよ‼」




 片倉さんは呆れた感じで




「いやいや、そんな恥ずかしい事皆でわざわざ合わせて言うか!」




 経丸は少し驚いた感じで




「もしかして片倉さんも乗れないんですか?」




 片倉さんは少し恥ずかしがりながら




「すみません、乗れません」




「片倉さんが乗れないなんて意外だよな」




「昔ね、落馬したことがあってそれからトラウマなんだよ」




「へぇー片倉さんも意外とダサいんだな」




「そうなんだよ、ダサいんだよ。士郎君には勝てないけど」




「おい、片倉!今から殺り合うか?」




 海老太郎が慌てて




「士郎さん、やめた方がいいですよ。自分が思ってる百倍は弱いんですから」




 士郎は海老太郎の頭を握り拳でぐりぐりと擦りながら




「とりあえず、謝りなさい」




「何でですか!僕、喧嘩を止めようとしただけですよ」




「いいから」




 海老太郎は大声で




「すみません!すみません!」




 士郎は海老太郎を開放すると




「士郎さん理不尽なんですよ。弱いくせに」




 海老太郎の言葉を聞いた皆は爆笑する。




 士郎はすぐ海老太郎を捕まえて頭を握り拳でぐりぐりと擦りながら




「お前はバカか!文句を言うならそれがしから離れてから言うだろ普通」




「ギャー、すみませんでした。次からはそうします」




「って事はお前はまたそれがしの文句を言うつもりか」




「はい、士郎さんの文句は言い続けます」






 はっきり言い切る海老太郎に士郎は思わず笑ってしまいながら




「後、五回はぐりぐりやるわ」




「えっー!何でですか!ギャー‼」




 経丸は士郎達に




「じゃあ、今から私が皆に教えます」




「おー、馬って意外と高いな」




 士郎は馬の高さに少し恐いと思っていたが横で片倉さんが




「あー、無理。無理!恐い、恐い‼」




 片倉さんは足を恐怖でプルプル震わせている。




 士郎は片倉さんのビビっている姿が面白く、恐怖心を忘れ大笑いし落馬した。




 凛は少し笑いながら




「兄貴、あご外して落馬するほど笑うほどじゃないでしょ」




「そう言ってる凛ちゃんも笑ってんじゃん」




 凛は片倉さんの指摘に後ろを向いて誤魔化そうとした。




 経丸は優しい口調で




「片倉さん、大丈夫ですよ。そんなに高くないから落ち着いて下さい」




 士郎はニヤニヤしながら片倉さんの足を触った。




「うわぁ、プルプルしてて面白い」




「どれですか、僕も触ってみます」




 経丸は厳しい口調で




「海老太郎さん!」




 海老太郎は経丸に注意されるのは初めてなので驚き




「すみません、つい」






「片倉さん、少し歩いてみましょう」




「はい、しかし」




 経丸は優しい口調で




「大丈夫ですよ、私が付いてますから」




「そうですね。若が付いてるので大丈夫ですね」




 経丸は片倉さんの馬のたずなを引いてゆっくり歩き始めた。




「うわぁー動いた、動いた」




 片倉さんは慌てて両腕をしっかりと馬の首にしがみついた。




 いきなり首を絞められた馬は驚き暴れまわって片倉さんは背中から地面にドーンと大きな音を立てて落馬した。




 落ち方が凄かったため皆は慌てて馬を降りて片倉さんの元に駆けつけた。




 経丸は心配そうに




「片倉さん、大丈夫ですか‼」




 片倉さんは呟くように




「うっ、気持ちー!」




 士郎は大きい声で




「おいっ、片倉さんがどMに目覚めたぞ‼」




 ひのは引いた感じで




「片倉さん気持ち悪いですね」




 凛はひの発言に




「ひのさん、それはストレートに言いすぎじゃない?」




 片倉さんは小さな声で




「皆を心配させないようにボケたのに」




 片倉さんの言葉を聞き取った海老太郎は大きな声で




「皆さん、片倉さんボケだったらしいですよ」




 海老太郎はキョトンとした顔で




「片倉さん、どういうボケだったんですか?僕聞いてなかったのでもう一度言ってください」




 片倉さんは恥ずかしくなり両手で真っ赤になった顔を覆って下を向きながら




「海老太郎君、やめて頼むからさっきの発言は忘れたいんだ」




 海老太郎は大きい声で




「はい、わかりました」




 経丸は凄い心配そうに




「片倉さん、本当に大丈夫ですか?」




「はい、思ったより痛くなかったです」




 士郎はニヤニヤしながら




「そりゃ痛くないだろ、気持ちよかったんだから」




「士郎君、人が忘れたいって言う事を掘り返して楽しい?」




 士郎は満面の笑みで




「うん、楽しいよ」




「あー、そう」






 皆、馬に乗るのがうまくなっていった。




今がチャンスだな




 片倉さんは後ろから徐々に近づいてお尻を上げて馬に乗っている士郎にカンチョーをしようとしたが急に片倉さんが乗っている馬がスピードを上げたので片倉さんは思わず




「うわぁぁぁぁぁぁぁ」




 と叫びながら




 勢いそのまま士郎のお尻に指を突き刺した。




「いってえええええええぇ‼」




 士郎は思いっきり飛び跳ねて落馬した。




 片倉さんは慌てた顔で




 やべぇ、やり過ぎた。




 その横で海老太郎とチビルは落馬した士郎を見て爆笑してる。




 士郎はお尻を抑えながら




「おい片倉‼いってええよ。第二関節まで入ったぞ!」




「ごめん、マジごめん」




 皆は心配しながらも爆笑している。




 士郎はズボンを下ろしてお尻を確認しようとすると凛が




「ねぇ、まさかここで脱ぐつもり」




「あっ、あぶねぇ。そっか女の子いるんだった」




 士郎は慌てて草むらで確認し




「おい片倉さん!血が出てるじゃねぇか‼」




「ホント!ごめんね士郎君」




 謝る片倉さんの横で海老太郎が




「片倉さん凄いっすね、カンチョーで血を出させるなんてカッケーっす」




 この海老太郎の言葉に皆、爆笑する。




 士郎は海老太郎捕まえ首を絞めながら




「おい、海老太郎ふざけんなよ!お前も片倉さんのカンチョー喰らうか?」




 海老太郎は大声で




「やだぁー!絶対やだぁー‼」




「大丈夫だよ、海老太郎君には絶対しないから」




「さすが片倉さん、優しいですね!!」




 海老太郎とひのは




「片倉さん優しい」




 って連呼して拍手する。




「優しい奴は血が出るほどのカンチョーしないんだよ」




「士郎さんってしつこいですね」




「しつこいじゃねぇ、痛かったんだぞ‼」




「士郎さん、痛い!痛い!」




「とにかく、謝りなさい」




 士郎に首を絞められている海老太郎は大きな声で




「片倉さん、もう一回士郎さんにカンチョーしてあげてくださーい‼」




「ふざけんなよ!海老太郎‼」




 海老太郎は大声で




「冗談ですよ!士郎さーん‼」




 これにて乗馬は終了したのであった。

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