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「よし、それじゃあ次は、左隣のお宅に行ってみようか。そうだねぇ、それじゃあ……悠叶。はい、やってみておくれ」
「……は? 何をだよ」
「何って、聞き込みに決まっているだろう?」
「……何でオレが、んなメンド―なことやらなきゃならねーんだよ」
悠叶の不機嫌丸出しの声にも一切ひるむことなく、玲衣夜は「当然」と言わんばかりの表情で人差し指をピッと立てて見せる。
「何でって、悠叶も一ノ瀬事務所の立派な一員だからね。これから給料も払うことになるのだし、それに見合う分の働きをしてもらわなくてはならないだろう?」
「……チッ」
見つめ合うこと数秒。短い沈黙を経て、本当に渋々といった様子で了承したらしい悠叶は、左隣にある三原さん宅のインターホンを鳴らす。
「悠叶、スマイルだからね、スマイル」
「悠叶くん、ファイト!」
完全に傍観役に徹するつもりらしい二人は、悠叶の背後でのんきに声援を送っている。
悠叶のこめかみにピクリと青筋が浮かび上がったことに、もちろん二人が気づくことはなく――家の中から現れたのは、丸眼鏡をかけた小太りの中年男性だった。
「何だね、君は」
「……おい、最近銃声の音を聞いたか」
「……は? じゅ、銃声って、いきなり何のこと…「三秒以内に答えろ」
「ひぃっ……!」
悠叶に凄まれた男性は小さな悲鳴を上げて後退る。
傍から見たら完全に、かつあげする不良男子と、恐喝されているおじさんの画にしか見えないだろう。これでは悠叶が恐喝犯として、理たちに連行されることになってしまう。
「あぁ、申し訳ない。私はこういう者ですが、お聞きしたいことがあってお宅を訪ねた次第です」
玲衣夜がサッと悠叶の前に出れば、まともに話が通じそうな人物の登場に男性は安堵の息を漏らしながら、カチャリと眼鏡のブリッジを押し上げる。
「き、聞きたいこととは何だね」
「実は、最近この周辺で、銃声音を耳にしたという話がありまして。何か心当たりはありませんか?」
「銃声音だって? ……そんなもの、どうせ子どもの悪戯か何かだろう。私はそんな音を聞いた覚えはないよ」
「そうですか……では、ここ数日、怪しい人物を見かけたりした覚えはありませんか?」
「怪しい人物? ……いいや、全く覚えがないな」
「そうですか……わかりました。ご協力ありがとうございます」
その後も周辺の住居を何軒か回って聞き込みをしてみたが、結局手掛かりになりそうな情報は、一つも得られなかった。




