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同時刻、警視庁内にて。
自販機で缶コーヒーを買い廊下を歩いていた理は、偶然出くわした上司である藤堂から、驚くべき事実を聞かされていた。
「拳銃がなくなった? しかも複数挺……ですか」
「あぁ。保管庫にあるはずの拳銃の数が合わなかったらしい。科警研に亡失の送付書を送らねーとってぼやいてたよ」
「複数挺を所持して返却し忘れていた、なんて可能性は低いですよね。……誰か、内部の者が盗みだしたんでしょうか?」
「さぁな。……まぁ何にせよ、今日の会議で話があるだろうさ」
午後からの会議で詳しい話を聞けるだろうと話しながら、二人は廊下の角を曲がり、溜まっている書類を片付けるために各々のデスクに戻っていった。
***
江里子の住んでいるという自宅は、庭付き一戸建ての木造の平屋だった。
先月までは祖父との二人暮らしだったが、病気で亡くなってしまったため、今はこの広い家に一人で暮らしているのだという。
祖母にも先立たれ、もう長くないという祖父の面倒を見るために、借りていたアパートを解約して、この家に住み込みで介護していたらしい。
初めはこの家も取り壊してもらう予定だったらしいが、甲斐甲斐しく介護してくれる江里子の姿を見た祖父が、自分が死んだあとこの家をどうするかは江里子に一任するとの言葉を遺していたらしいのだ。
「ご立派ですね、お祖父さんのために介護だなんて」
千晴が純粋に賛辞の言葉を口にすれば、江里子は眉を下げて小さく首を横に振った。
「いえ、全然立派なんかじゃないです。誰も祖父の面倒を見る人がいなくて、だから私がしていただけで……やりたくて、やっていたわけじゃないですから」
どこか愁いを帯びた声に聞こえる江里子の発言を、玲衣夜はやんわり否定する。
「ですが、やりたくないことだったとしても、鈴木さんは最後までやりきった。それは事実ですよね?」
「……はい」
「世の中には……やらなくてはならないことを後回しにしたり、誰かがやってくれるだろうと、見て見ぬふりをする人間だってたくさんいますから。だからあなたは、とても頑張ったと思います。始まりや過程がどうであれ、それは誇るべきことだと……私はそう思います」
「……はい。ありがとうございます」
玲衣夜の言葉に、何か思うところがあったのかもしれない。江里子は今にも泣きだしそうな、何かを堪えるような顔をして微笑んでいた。




