04
「……杉本くんから連絡があったんだ。お前が熱を出して寝込んでいると」
「千晴から?」
千晴直々に理に連絡をとるだなんて――そもそも、二人が連絡先を交換していることさえ知らなかった玲衣夜は驚いた。
二人が仲良くしていることが嬉しいような、自身の知らないところで親交を深めているのを想像してほんの少しだけ寂しいような――不思議な心地になる。
「その熱、原因はあの時海に飛び込んだからしゃないのか? ……俺がもう少し早く助けられていたら、お前が体調を崩すこともなかったかもしれないだろう」
「え? いや、あれは私が勝手に……」
珍しく口籠る玲衣夜を一瞥した理は、眉根を寄せてスプーンで粥を掬った。
「杉本くんから連絡があったのは事実だが、此処へはパトロールのついでに寄っただけだ。……いいから黙って食え」
理は有無を言わせぬ物言いで玲衣夜の口にスプーンを突っ込んだ。玲衣夜は突然のことに目を丸くしながらも、ゆっくりと咀嚼して飲みこむ。
「おひゃむく、…、ふぅ。ちょっとあついよ」
「……文句を言うな」
口ではそんなことを言いながらも、すぐに粥をスプーンで掬って持っているのは、早く冷めるようにと配慮してのことなのだろう。――やっぱり彼の優しさは、かなり分かりにくい。
「……ふうふうはしてくれないのかい?」
「っ、はぁ?」
「あ、それに、もう一回アーンもしてくれてもいいのだよ?」
「……するわけないだろ」
眉をこれでもかと寄せて、思いきり怪訝そうな顔をする理。山崎が見たら萎縮してしまいそうな表情だが、玲衣夜からしたら理のこんな顔はすっかり見慣れているのだ。
「私、病人なんだけれどなぁ……うっ、頭が痛い……」
「お前なぁ……」
わざとらしく頭を押さえて俯く玲衣夜を見て、理は口許を引き攣らせる。
理に見えないよう下を向きながら、玲衣夜はひっそり表情を緩めていた。玲衣夜は別に、理が本当に実行してくれると思って口にしたわけではない。いつもの軽口のようなもので、それは理も分かっていることだろうと考えていた。ただ、いつも通りのこんなやりとりを楽しみたかっただけだ。
けれど。小さく溜息を漏らした理が、ふぅ、と吐息を吐き出す音が――玲衣夜の耳に届いた。
顔を上げれば、口許に差し出されているスプーン。
「……ほら、これでいいんだろう」
ふぅふぅに、アーン。まさか本当にしてくれるとは思ってもみなかったので、玲衣夜はぽかんと口を半開きにしてしまった。
「ふっ、間抜け面だな」
玲衣夜の顔を見て、理は口許を緩めた。穏やかなその表情に、玲衣夜は何だか気恥ずかしいような気持になってしまって……。
「……うむ。ありがとう」
いつもはぽんぽん飛び出してくる揶揄いの言葉も、何故だか今日は喉の奥でつっかえて出てこない。玲衣夜は理に促されるままに口を開けて、気づけば卵粥と林檎を完食していた。




