05
「……あ。今気づいたけれど、千晴と悠叶、二人ではるはるコンビになるねぇ」
「はるはるコンビ? ……何それ」
「だって“ちはる”と“はるか”だろう? 二人共“はる”が入っているじゃないか」
凄いことに気づいてしまった、とでも言いたげに胸を張る玲衣夜。
悠叶は馬鹿らしいとでも思ったのか玲衣夜の言葉を無視しているし、千晴は「まぁ、確かに……?」と不思議そうな顔をしているけれど、玲衣夜は一人で嬉しそうだ。
そんな風に雑談を繰り広げながらもウィンドウショッピングを続けていれば、背後から悠叶を呼び止める声が聞こえてきた。
「あぁ! やっぱり悠叶じゃ~ん! 最近全然会ってくれないし、ユミ、心配してたんだからねぇ」
悠叶の左腕にぎゅっとしがみついて上目遣いで見上げる彼女は、この辺りの区域にある私立高校の制服を着ている。
桃色のグロスで唇は艶やかに濡れそぼっていて、その目元はぱっちりとした二重だ。瞬きするたびに長い睫毛がバサバサと揺れている。イマドキの可愛らしい女の子、といった感じだ。
無言で女子高生を見下ろしていた悠叶だったが、その腕を振り払ったかと思えば、その口から発せられたのは何とも冷たい一言で。
「……誰だオマエ」
「……え?」
まさかこんな風に返されるとは予想外だったようだ。女子高生の甘ったるい笑顔は剥がれ落ち、一瞬呆けた顔になる。けれどすぐに我に返って、表情を取り繕った。
「ひ、ひっど~い! いくら最近会えてなかったからって、それはないでしょ!」
「……」
「ユ、ユミのこと、彼女にしてくれるって言ったじゃん! だから抱いてくれたんじゃないの……!?」
「……ヤッた女の顔なんて、いちいち覚えてねぇよ」
「はぁ!? っ、何それ、最低……‼」
「そうだそうだ~、悠叶くんサイテ~!」
涙目で悠叶を睨みつける女子高生の言葉に続けて、玲衣夜が囃し立てるようにして言う。しかし悠叶にギロリと睨まれたことで、その口をそっと閉じた。
「おいおい、誰だぁ、俺の女泣かせやがったやつはよぉ!?」
何とも言えない沈黙が流れる中、突如として現れたのは、いかにもガラの悪そうな私服姿の若い男だった。
多分千晴や悠叶と同い年くらいだろう。派手なオレンジ色に染められた髪に、シルバーの鼻ピアス、手にはごついリングが何個も嵌められている。
「たっくん~! ヒドイの、そいつがユミのことナンパしてきてね、断ったら無理矢理乱暴しようとして……!」
悠叶を指さす女は、彼氏らしきオレンジ頭の男に抱きついた。手の甲まで覆い隠している長いセーターの裾で目元を隠し、見事な嘘泣きを披露している。その演技力たるや、マカデミー賞レベルである。
「え? 君の方から悠叶に彼女にしてくれと言ったんじゃなかったのかい?」
はて、と首を傾げる玲衣夜は、空気が読めないのか、あえて読んでいないだけなのか……。
玲衣夜をキッと睨みつけた女子高生――ユミは、「あ、あんな男のいうこと信じないでたっくん! でたらめよ!」と喚いている。
「オマエら、ユミが可愛いからってちょっかいかけてんじゃねぇよ。殺されてーのか」
「いや、僕たちは……」
「怪我したくなかったら、さっさと失せろや」
千晴の言い分に耳を貸す気はないらしい。言葉を被せ、ユミの後頭部を引き寄せた男は、悠叶と玲衣夜を鋭い視線で射抜いている。
このまま大人しくこの場を立ち去れば、すべて丸く収まったのかもしれないが――しかし、ここにも空気の読めない……いや、読もうとさえしない男が一人いた。




