04
乗り気ではないらしく最後まで外へ出ることを渋っていた悠叶だったが、玲衣夜に手を引かれ、本当に嫌々ながらといった様子で外出を了承したようだった。
事務所から一歩外へと踏み出した瞬間、獲物を待ち構えていたかの如くむわりとした熱気が三人に襲い掛かってくる。悠叶と玲衣夜は同時に顔を顰めて項垂れた。
「あつい……もう溶けそうだよ……」
「……オマエが行くっつったんだろ……」
「今日の最高気温は三五度らしいよ」
「うむ……それはこの暑さも頷けるね……」
悠叶は親の仇でも見ているのかと言いたいほどの鋭い視線をもって真上に輝く太陽――そして玲衣夜を睨みつけているし、玲衣夜はそんな視線をさらっと無視してふらふらと覚束ない足取りで歩いている。
三人の中で一番暑さに耐性がありそうな千晴でさえも、今日の暑さはさすがに辛いのだろう。常時よりぐったりした様子だ。
首筋に汗のしずくを伝わせ、とりとめのない会話を続けながらも、電車を乗り継いで歩くこと約二十分。
辿り着いたのは、昨年オープンしたばかりの大型ショッピングモールだ。ぐわりと開いた自動ドアをくぐれば、冷気が身体全体を包み込む。
「こ、ここが天国か……!」
「玲衣さんは大げさだなぁ。……ふふ、悠叶くんもおんなじこと思ってそうだね」
「……うっせ」
玲衣夜と同じく、気持ちよさそうに目を細めている悠叶。その表情を見てクスリと笑った千晴。
笑われたことが気恥ずかしかったのか、悠叶はばつが悪そうな顔でそっぽを向いてしまった。
「福引き、の前に……そうだねぇ。千晴が此処で働き始めて一年が経ったし、それに悠叶の入社祝いも兼ねて、私から二人に何かプレゼントをしよう。欲しいものはあるかい?」
「え、いいの?」
「あぁ、勿論。何でも好きなものを買ってあげるよ」
千晴は何を買ってもらおうかと思案している様子だが、そこに異議を唱えたのが悠叶である。
「……おい。オレはここでバイトをしてるつもりはねぇぞ」
「ん? まぁ確かに、悠叶は依頼を熟しているわけではないし、給料も払ってもいないけれど……これだけ事務所に入り浸っておいて全くの無関係というのも寂しい話だろう? せっかくだし、何かプレゼントさせておくれよ」
「うん、それは確かに。ほぼ毎日顔を合わせてるし、もう従業員仲間みたいなものだよね。今回は玲衣さんに甘えても良いと思うよ?」
「……」
玲衣夜に続いて、千晴にまで同意を示されてしまった悠叶は、返す言葉が思い浮かばなかったのだろう。フイッと顔を背けて、一人で先を行ってしまう。
そしてそんな悠叶の後を、玲衣夜と千晴は追いかけた。そろって目を合わせて、クスリと優しい微笑みを浮かべながら。




