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霊聴探偵一ノ瀬さんの怪傑推理綺譚(かいけつすいりきたん)  作者: 小花衣いろは
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02



「ただいま。私が帰ってきたよ!」


 室内が一気にうるさく――いや、賑やかになる。右手にはぱんぱんに膨れ上がったビニール袋、左手には何故か大きな西瓜を二玉も持った玲衣夜は、楽しそうに笑いながら千晴の座るソファにどかりと腰を下ろした。そういう場(・・・・・)での仕事だったのか、珍しく真っ黒なスーツを着ている。


「いやぁ、ちょっと野暮用が合って出かけていたんだけれど、帰りにばったり山田さんに会ってね。あぁ、悠叶は会ったことがないかな。山田さんは以前依頼を受けたことがあるご夫妻なんだけれどね、貰い物でたくさんあるからと西瓜に桃まで頂いてしまったんだよ」


 休むことなく話し続ける玲衣夜に、悠叶は「……うるせぇ」と一言。


 千晴は「はいはい、分かったから。まずは荷物を置いて、手洗いうがいしてきなよ。あ、玲衣さんもそうめん食べるでしょ?」と、子どもに対する母親の対応を彷彿とさせる台詞を口にする。


「あぁ、そうしよう。ちなみに昼は食べてきたから必要ないよ」


 脱衣所に消えていった玲衣夜を見送って、千晴は貰い物の西瓜と桃をキッチンへと運ぶ。――桃は今から冷やしておいて、あとで三人で食べればいいかな。

 玲衣夜の分の麦茶を入れて、ついでにと冷蔵庫の中身までチェックしている千晴の行動は、もう完璧に主婦のそれである。


 玲衣夜はこんな風に食べ物から花束に雑貨類から時には家電といった高価な品々まで……以前の依頼主だったり、ご近所さんだったり、はたまたその美貌に当てられた初対面の人物からと、何かしら貰って帰ってくることがある。

 玲衣夜はその派手な髪色と美しい容姿も相俟って、良くも悪くも目立つ。また親しみやすいその性格から、好意的な声を掛けられることが多いのだ。

 まぁこの間悠叶が伸したという男たちのように、悪目立ちして絡まれてしまうことも稀にあるのだが……理に“ゴリラ”と称される玲衣夜は物理的にも強いため、千晴もあまり心配はしていなかった。


 ――あれ? そういえば玲衣さんは、どうしてあの時悠叶くんに助けを求めたんだろう? いつもの玲衣さんなら一人で対処してそうなものだけど……。


 千晴に言われた通りきちんとうがい手洗いをして戻ってきた玲衣夜はジャケットを脱ぎ、ソファに座って冷えた麦茶をグイっと一気に飲み干した。炎天下の中大荷物で歩いてきたのだ、体力のない玲衣夜からしたら中々に重労働だったのだろう。

 悠叶の向かいにあるソファに寝転がって「あ~涼しい……此処が楽園だねぇ……」と気持ちよさそうに目を細めている。


 ――まぁ、深く考える必要もないか。


 どうせ玲衣夜の気まぐれだろうと考えることを止めた千晴。

 玲衣夜と悠叶が各々ソファに寝転がっていてスペースがなくなってしまったため、空いている誕生日席の小さなソファに腰を落ち着けた。



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