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毛利元就、現る

 元旦の奇襲作戦による凄惨な殺戮によって経久(つねひさ)月山富田(がっさんとだ)城奪回に成功し、その後出雲国内の有力国人である、三沢(みさわ)三刀屋(みとや)赤穴(あかあな)氏らを屈服させ勢力を拡大。事実上の出雲守護となり、戦国大名としての道を歩み始めた。

 

 その後、近江国のお家騒動(京極騒乱)に破れて出雲に下向してきた京極(きょうごく)政経(まさつね)が病死し、名実ともに出雲守護となると、経久は出雲大社の造営を行い出雲国内における影響力を示した。その上で西出雲の有力国人である宍道(しんじ)氏と婚姻関係を結び、対立関係にあった塩冶(えんや)氏を圧迫するなど出雲における支配体制を確立していく。


 更に西国一の大大名である大内(おおうち)義興(よしおき)に従い、上洛。義興や管領、細川(ほそかわ)高国(たかくに)との関係構築に力を入れ着実に力を付けていった。


 一五一五年(永正一ニ年)、厳島神主家の後継者を巡った内訌に際して、京都へ上洛中の大内義興は鎮圧の為、安芸(あき)国旧守護の武田氏当主、武田(たけだ)元繁(もとしげ)を帰国させた。武田元繁は最盛期には中国の偉大な武将、項羽(こうう)と並び称される程の武勇を誇ったと言われる勇将である。

 だが、武田元繁には既に経久の調略の手が伸びており、元繁は帰国後、義興の養女を離縁し、経久の弟幸久(ゆきひさ)の娘を妻とした。そして義興不在の今こそ安芸守護職復権の好機と捉え、虎視眈々とその機会を狙っていたのである。

 経久はこの争いに背後から介入し、中国地方の覇者たる大内氏の勢力を弱体化させようと目論んでいた。


 そして安芸国内で武田氏と大内氏に与している国人の戦いが起こる。安芸国の国人、毛利家当主、毛利(もうり)興元(おきもと)が病死し、僅か二歳の嫡子幸松丸(こうまつまる)が跡を継いだのだ。毛利家家中の動揺は明らかであり、元繁はこの好機を逃さず毛利、吉川(きっかわ)氏の領土に攻め込んだ。

 元繁の呼び掛けに日和見の国人衆が集い、武田軍は総勢五〇〇〇の大軍となった。対する毛利・吉川連合は合わせても一〇〇〇人強。数の上でも指揮官の能力でも武田軍が圧倒的に有利であった。


 しかし、この戦いで稀代の名将が誕生することになる。

 毛利元就(もとなり)。幼い幸松丸の後見人を務め、この戦が初陣という若獅子である。

 初陣とは思えぬ胆力と巧みな用兵で武田軍の先鋒を壊滅させると、血気にはやり突撃してきた大将、武田元繁を見事討ち取ったのだ。

 後に西国の桶狭間と称されるこの戦いに勝利した元就は、『毛利に元就有り』とその武名を轟かせることとなる。

 元繁戦死の報を聞いた経久はまだ見ぬ元就に、底知れぬ危うさと同時に大きな興味を抱くのだった。


「秀綱、毛利元就をどのように見る?」


 経久は月山富田城内の一室で筆頭家老である亀井(かめい)秀綱(ひでつな)と密議を交わしていた。


「元就殿ですか……先の戦いから鑑みるに中々に将器溢れる御仁ではないかと」


 鼠を思わせる痩顔の眉尻を下げ答える秀綱。経久はため息を吐いた。


「分かりきったことをしたり顔で申すな。元就、味方につけるべきか否か?」

「ふぅむ、武田元繁は偶然で倒せる相手ではありませぬ。味方となれば相応の働きに期待できるかと。ただこちらに靡かせることができれば、ですが」

「その点は問題ない。先の戦いの後に我らに恭順した吉川と毛利は繋がりが深い。わしの方から吉川国経(義兄)に話を付け、毛利と吉川の間で婚姻を結ばせれば自ずと元就も従属しよう」


 経久の目論み通り、元就は吉川国経の娘、妙玖(みょうきゅう)を娶った。この政略結婚によって吉川氏との結び付きを強めた毛利氏は尼子方に従属することとなる。

 そして経久は大内家の安芸侵攻の拠点である鏡山城の攻略を目指し、その戦いに元就を従軍させるのだった。

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