クラスのあの子
前の席の男の子は、サッカーが得意で誰にでも優しい人気者。
後ろの席の女の子は、趣味の占いで他の女の子から注目を集めた人気者。
クラスのあの子は、アイドルのような表情の豊かさと風貌でみんなを笑顔に変える人気者。
――真ん中に座る僕は、たったひとりでお昼ご飯を食べる孤独の人間。
誰にも好かれない。人気にもなりやしない。当然だ。だって僕はみんなみたいに素敵な個性はないし、仲良くなるためにできることもコミュニケーション能力もない。
いわば無個性の塊。無個性を集めて凝縮して結局ゴミ箱に捨てられちゃいそうな感じ。
あぁ、僕もクラスのあの子になりたい。
サッカーが得意で、占いで注目を集めて、アイドルみたいな風貌でみんなを笑顔にする。僕はクラスのあの子になりたい。
そこで突如、考えが芽生えた。真似をしていけばいつかなれるんじゃないかと。あの子の存在そのものに。我ながら、天才の発想だった。
まずは文房具。
次に筆箱。
そして鞄。
更に洋服。
あとは髪型。
表情の作り方。
話し方。
歩き方。
指先まで全ての行動パターン。
家庭環境だけは真似できないから
最後に互いの家庭を殺して
僕はクラスのあの子になるんだ。




