表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
喫茶『Stern』 〜 月曜日の珈琲 〜  作者: 夏川 流美
51/60

ホットミルク

 レンジから取り出した。熱いマグカップで火傷しないよう気をつけて、慎重にテーブルの上に置く。ホットミルクが波を打つ。



 テレビをつけた。前に映画を観た時のままだった音量を大慌てで下げて、番組表を開く。この時間、特に決まって見るものはない。



 ぬいぐるみを抱きしめた。目の奥から込み上げる、熱を持った水滴がこぼれ落ちないよう。長毛の触り心地に癒されながら、強く強く抱え込む。



 ホットミルクに蜂蜜を入れた。ティースプーンで少しずつ垂らし、かき混ぜていく。すっと沈んで見えなくなる黄金色で、どうにかハートを描いてみようとしたりして。




 そうして、ようやく口に含んだ。



 鼻に抜けるいつもと違う香り。ミルクの甘さを際立たせる蜂蜜の味。ほっと一息ついた。



 これだった

 私が彼にいつも作ってもらっていたもの。


 とうの昔に別れた彼が、当時作ってくれていたもの。


 ずっと忘れてた

 けど本当は、忘れたふりをしていただけ。



 優しい甘さに酔いしれる。

 今となっては彼を思い出して泣くことはない。


 でも、今日みたいに涙が出そうなほどに疲れた時。

 彼が作ってくれたみたいに、これからはこうしてホットミルクを作ろうかな。



 ようやく、彼を思い出にすることができたから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ