ごめんねの前と後
ひとりで食べるケーキは美味しくない。
彼に祝ってもらった誕生日を思い出すから。
ひとりで飲むお酒は美味しくない。
彼と一緒に飲んだ居酒屋を思い出すから。
ひとりで見るテレビは面白くない。
笑えるところを共感する相手がいないから。
ひとりで行く水族館は面白くない。
周りはカップルばかりで私の隣には誰もいないから。
ひとりって、こんなにつまらないんだ。
彼がいなくなってようやく知った。彼は私にとって、もうとっくに当たり前の存在になっていたこと。そして私は彼にとって、当たり前の存在ではなかったということ。
別れてから思い出を辿った。
少しでも寂しさを紛らわせたくて。それから、全ての思い出を振り返れば、吹っ切れることができるんじゃないかと思って。
今考えれば当たり前だけど、逆効果だった。行く先々で思い出す彼のことで、どうしようもなく胸を締め付けられて、頭が痛くなった。恋しくなって、でも側にいられなくて、繰り返し泣いた。
あの日、あの時。
分かった、ごめんね。
じゃなくて
ごめんね、別れたくない。
って言ってたら
私達の未来はちょっとだけ
変わっていたのかな……。




