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今年もまた、
――あ。
太陽の光に目を眩ませる。さっきまで雨の降りそうな雲をしていたのに、気付けば晴天に変わっていた。
透き通った青空の中に、浮かぶ真っ白なでかい雲。視界の端に映る木々は青々とした緑を涼しげに揺らしていた。
どこか遠くから聴こえてくる、蝉の声。近くない、この距離感が一層景色を美しく魅せている。
その場に立ち止まり空を仰ぐ。額を伝う汗も、膝裏にこもる熱も、今だけは心地良い。
「おーい、働けー!」
少し先で仕事仲間に叫ばれた。はーい、と慌てて返事をする。陽炎が波打つ地面を蹴り、駆け出した。
――夏がきたんだ。




