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貴方の幸せを想う
「別れよう」
そうと告げてきたのは突然で。どんな時よりも真剣な眼差しで。見たこともない表情の奥に、貴方の苦しみが感じられた。
たぶん、ワガママで泣き虫な私に愛想を尽かし、他に好きな女性を見つけたんだろう。けど、そんな顔を見せるほど本気になった相手がいたとは、知らなかった。
……そっか
貴方を幸せにするのは、私じゃなくなったんだね。
私といると、貴方は幸せになれないんだね。
溢れそうになった涙をぐっと堪え、震える唇の両端を懸命に上げた。泣いて縋っては邪魔になる。なら私にできることは、笑って別れを受け入れることだけ。
貴方の幸せを想うなら
きっと
「わかった」
これが
正しいんだよね。




