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君の幸せを想う
僕といる君は泣き虫だ。
「もうやだ、辛い」
そう言ってぼろぼろと涙を溢し、くしゃくしゃにした顔。縋ってきた君の頭を抱き寄せ、優しく、ゆっくりと撫でてやる。
こんな時僕はいつも、声がかけられなかった。どんな言葉をかければ良いのか、分からなかった。下手なことを言って傷付けてしまうのではないかと、怖くもあった。自分の無力さを痛感して、僕まで泣きそうになる。
君の感じている苦しみから助けてあげたい。僕の言葉で、僕の想いで、助けることができたのなら存在意義がある。君の隣にいても良いんだと思えるのに。
僕は無力だ。
たったひとつの言葉で、君を救えるかもしれない。
たったひとつの言葉で、君を幸せにできるかもしれない。
だけど
そんなたったひとつの言葉すら思い浮かばず、声に出せず、黙ってそばにいることしかできない。
僕は君を幸せにできない。
僕といると君は、すぐに泣いてしまう。
君の幸せを願うなら
きっと
「別れよう」
これが
正しいんだ。
………先週分です




