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喫茶『Stern』 〜 月曜日の珈琲 〜  作者: 夏川 流美
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しあわせ

 "幸せ"って何だろう。





 心が折れた。


 酷く疲れたのだった。頑張っても頑張っても、終わらないことに。手を抜こうにも、抜けるほど頭は良くなく。


 常に一生懸命、向き合っていた問題は増え続けた。他人からも責め立てられ、追いやられていた。


 これ以上頑張るための時間も、体力も、能力も、なにもなかった。趣味に割く時間も、睡眠時間も、家事をする時間も削った。それでも、足りなかった。


 ゴミの散らかる部屋は、心の中のようだった。そんな部屋の隅で、ひとりで泣いた。悔しいとか、苦しいとか、悲しいとかじゃなかった。ただ、疲れていた。




 泣いた翌日、彼氏が来た。私が泣いていたことを知っていた。疲れ切っていることも知っていた。彼はただ黙って隣にいてくれた。ぐちゃぐちゃに喚く脳内が煩くて、彼の横でまた泣いた。


 泣き顔を見せると、そっと目元を拭ってくれた彼が抱き締めてくれた。よく頑張ったね。言われたその言葉が、始めは理解できなかった。なんでそんなこと言うんだろうって。私が勝手に疲れて、勝手に泣いてるだけなのに。


 でも、彼は優しいからだと気付いた。嬉しさがじわっと広がった。なのに同時に、悲しくなって、更に泣いた。



 私と付き合っているから。私が彼女だから。優しい彼はこんなことを言うしかない。わざわざ自分の時間を使って、他人の私を慰めるしかない。


 それが物凄く申し訳なくて、罪悪感に苛まれて、そして可哀想に思えた。私と付き合わなければ、勝手に疲れて泣くような女のことなんか相手しなくて済んでたのに……。



 そう考えながらふと、幸せを思考した。


 好きな人と一緒に喜んで、悲しい時は一緒に泣いて、苦しんでいる時は寄り添える。そんな過ごし方が、彼の幸せだったとしたら。


 可哀想、なんて言葉を向けるのは失礼だ。でも、それが幸せだとは思いにくい。私は一緒にいられて幸せ、だけれど。





 人の"幸せ"って何だろう。


 

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