花を添えて
大好きだった人が、死んだ。
とはいっても付き合ってたわけじゃない。彼はただのホスト。永遠の2番手。そう呼ばれていた可哀想なホスト。
私はそんな彼が大好きだった。
彼はホストなのに非道な世界には決して足を踏み入れなくて、いつだって一番に考えてくれていたのは私たち女の子のこと。だから私も、私以外の女の子も、彼の虜になったら絶対に離れなかった。
でも、死んじゃったのは突然で。
私のせいだよねって抱えた罪悪感は苦しくて。
彼がいたホストクラブには行かなくなった。彼がいないことを突きつけられるのは、今は間違いなく耐えられない。
週に1回。余裕がある時には週に2、3回。私はお花を持って、お墓に出向いている。何ヶ月経っても忘れられない、大切な人だから。
私がお墓に行くと、大抵いつも新しいお花が添えてある。私のものじゃない、他の誰かが置いていったお花。それを見ると心が締め付けられる。だけど同時に、少しの喜びを覚えた。
私の他に、彼をこんなにも愛している人がいるんだ。
嫉妬の感情も湧き上がってはくるものの、彼のことを誇りに感じた。決して特別な関係じゃない。でも彼のことに胸を張れる。ずいぶん身勝手な感情だと分かっていても、そう思ってしまうんだ。
――お花を添えて、手を合わせた。
貴方は優しいから、もしかしたら私のことを…………私たちのことを心配しているかもしれないね。
だけど安心してほしい、大丈夫だよ。
私の犯した罪は拭えないし、一生背負っていく。
それでもちゃんと前を向いて、貴方のことを忘れずに生きる。
だからまだしばらくの間は
貴方に花を贈らせて。
伝えきれなかった
「ありがとう」と「大好き」の代わりに。
「――なんか救われた気分。ありがとうね」




