料理教室②
キッチンに足を踏み入れると、そこは爽やかな笑顔にシェフの身なりをして男性のNPCが待っていた。
「自己紹介する。私はエド、ここの店主だ。ただいま、料理の作り方を教えてあげる。君たち、そしてパンダちゃん。そこの調理台の前に立ってくれ」
「「はい」」
「グォ~」
調理台の前に、既に様々な調理器具や材料を用意された。
「グォ~」
フィユはさっと調理台に飛び乗って、いろんな食材の中から竹の子を取り出し、玩具のようにぎゅっと抱き締める。
「フィユ、それは玩具じゃないんだ。早く元に戻して」
「グォ!」
まるで大好物を守る子供のように、フィユはギリギリと強い力で竹の子を締めながら、その小さく丸い頭を横に振る。
「アハハハ~、面白いパンダちゃんだな」
「グォ~」
笑いながらフィユの頭を撫で回したのは、店のマスター、エドだ。
「迷惑をおかけ、申し訳ございません」
「ヘイキよ、まだまだいっぱいあるから。それじゃあ、説明を始めるぞ」
「「はい、お願いします」
「[料理]のスキルは、[食材の加工]と[調理の心得]二種類がある。[食材の加工]を使えば、モンスターがドロップした素材から食材の部分が取り外されるだけでなく、一部の簡単な食べものが作られるが、それは料理とは言えないものだ。本物の料理を作りたりなら、[調理の心得]が必要だ。それを基本として、登録したレシピによって調理する。レシピは基本レシピと派生レシピ二種類がある。前者はスキルを上げ、それと色々なクエストをクリアしてから取得できる。後者は調理する時、自分の都合によって工夫して、オリジナル料理が作られる。それじゃあ、自分の手で作ってみろ」
『スキル[調理の心得][食材の加工]を取得しました
レシピ[おにぎり][サンドイッチ]を取得しました』
「やはり定番メニューだね。ヒュプちゃんは何を作るの?」
食材の中に既に焼きたての食パンもあるのを確認したヒュプ。
「ん…やはりサンドかな…タナは?」
「あたしもサンドだよ。よーし、どっちか美味しいを勝負だ!」
「いいぞ。料理なら、俺は絶対に負けないぞ!」
ヒュプはやる気満々で[サンドイッチ]のレシピパネルを空中に浮かべる。
――――――
[サンドイッチ]
食パン ベーコン チーズ レタス タマゴ
――――――
「普通のサンド…か。パンダって肉食べられる?じゃあ」
嬉しそうに竹の子を抱いたフィユを見て、アイデアが浮かんだヒュプは既に出来上がった竹の子やレタスなどの野菜を適当に切り、ドレッシングをかける。
食パンで挟んで、綺麗に四等分にカットすると、
「よーし、出来た」
『派生レシピ[パンダ風野菜サンド]を取得しました』
「こっちも出来上がったよ」
「二人は同時に出来上がったよね。それじゃあ、互いに食べてみてくれ」
鮮やかなイチゴと生クリームを挟んだイチゴサンドを口に運ぶと、果物の甘さと生クリームの柔らかさがヒュプの口の中に広がっていった。
続いて、ヒュプの顔に満足したような微笑みを浮かべる。
と同時に、野菜サンドを味わったタナとフィユの顔も幸せに満ち溢れている。
「なにこれ、マジヤバイ!」
「グオ~グォ~」
「アハハ、その美味しさはもう君たちの顔に書いてあるぞ」
エドは爽やかな笑顔で説明を再開する。
「それじゃあ、料理の品質について説明するぞ。君たち、さっき作ったサンドイッチの説明を開けてくれ」
「「はい」」
――――――
パンダ風野菜サンド
満腹度+15% 品質:3
パンとパンの間にパンダの大好物を挟む手料理
イチゴサンド
満腹度+15% 品質:3
パンとパンの間に新鮮なイチゴと生クリームを挟む手料理
――――――
「料理の品質は1から5までの五段階がある。品質は料理の回復効果に影響を及ぼす。品質をあげるため、調理の器具や食材の品質などに左右したが、一番大切なのは料理に対して心だ。それじゃあ、特別サービスとして、30分の間にここの食材で思い切って料理を作ってやろう。では、また会おう。アハハ~」
エドはそう笑いながら、後ろの部屋へ行っていった。
『クエスト:エドの料理教室が完了しました』
タナはその後ろ姿を見送ると、
「なんか、店主さん爽やかすぎと思わない?」
「俺もそう思う。ずっと笑って、いい人だな。さぁ、せっかくのチャンスで、早く皆の分を作ろう」
「はいな、ちょうどいい場所が知ってるよ。あとでピクニックしようよ」
「ピクニックか。久しぶりだな。フィユ、楽しんでくれ」
「グォグォ~」
魔法都市の傍にある川の上流に、鏡のように綺麗な湖があった。
ヒュプたちはそこで敷物を敷いて、先ほどで作った色とりどりのサンドイッチを取り出す。
「ホー!」
「メェェ!」
召喚したばかりのクロムとスフレはその鮮やかなサンドイッチを見て、目が興奮にピカピカと輝いている。
「グォ~」
フィユは経験者のような得意げな顔をして、「一番美味いのはこれだよ」と表すようにヒュプが作ったパンダ風野菜サンド持ち上げる。
「ホー」
「メェェ」
しかし、クロムとスフレはそれに興味がないように、別々にヒュプとタナの胸に飛び込んで、ツナマヨのおにぎりとフルーツサンドをうまそうに食べている。
「アハハハ~、クロムは和食派だね、あまり急がなくても大丈夫よ。まだいっぱいあるぞ」
「ホ~」
「ふふふ~、スフレはやはり甘党だよね。どんどん食べて~」
「メェェ~」
自分の好意がクロムたちに無視されたフィユは、頬を膨らんでもう一個の野菜サンドを持ち上げる。
「グォ!グォ!」
まるで「ちょうどだ。全ての野菜サンドは私のものだ!」と言いたげそうに鳴きながら、もりもりと食べ始める。
太陽が天頂を通過した後、美味しい料理を堪能していたモフモフの子たちは、けだるくて日光浴を楽しんでいる。
「ホ~」
「グォグォ~」
「メェェ~」
可愛いクロムたちを見て、感心したヒュプ。
「全く、食べ終わったらすぐ寝ちまった。三人ともまだまだ子供ね」
「まぁ、元々子供だもの。そいえば、これからどうするつもり?」
「どうするって?」
「店のことよ。開店の資金はもう十分稼いだよね。それと、四日後のバトルロワイアルの準備では?」
「なんだ、店のことか。今が店をオープンしても、商品としてのモフモフの子はまだ封印してなかった。俺は午後からすぐモフモフの子たちを封印しに行こうと思うんだ。予定は、ん……皆は今、イベンドのことしか考えないだろう?それを考えれば、イベンドの翌日でオープンしたらどう?」
「イベンドの翌日か?あたしはいいと思うよ。でも、イベンドを準備しないと大丈夫かしら」
ヒュプは紺碧に晴れた空を見上げて、爽やかな笑みを浮かべる。
「大丈夫、何とかなるさ」
「ったく、相変わらず呑気だよね。まぁ、それはヒュプちゃんのいいところだよね」
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