フィユと妖精の涙
翌日の朝。
ヒュプは昨日で集めた素材を持って、魔法都市に位置する『マジックアイテム・ナミ』という店に行き着いた。
「ナミさん、おはよう」
「グォ~」
「おはよう、ヒュプくん。アレ、今日はフィユちゃんしかないね」
「アハハハ~、これから料理教室へ行く予定で。あそこって一人つき従魔が一体しか連られないから」
「なるほど。これで責任重大ってことよ。フィユちゃん頑張ってね」
「グォ」
ヒュプはニコニコ笑ったフィユをカウンターに置いて、道具欄から昨日で探してきた[モンスター図鑑]を取り出す。
「ナミさん、なくなった図鑑はこれよね。探してきたぞ」
その図鑑を目にすると、ナミは感謝の涙に暮れて、ヒュプの手をしっかりと握っている
「助けてくれて、大変ありがとうございました!」
「アハハ~、とんでもないことだから」
ヒュプは爽やかな笑顔をしたて図鑑をナミに手渡す。
『貴重アイテム[モンスター図鑑]をNPC:ナミに渡しました
クエスト:[紛失したモンスター図鑑]完了しました』
それを開いたナミは、怪訝な顔色が浮かぶ。
それに気付いたヒュプが尋ねる。
「ナミさん、まさか間違ったんだか?そうすれば、今夜でもう一度探しに行く」
「いいえ、間違ってないけど。既に白い紙になってしまった中身は今ちゃんと元通りになっちゃった。これをあの方に見て貰わないと……ヒュプくん!」
「は、はい?」
「良かったら、三日後でもう一度来てもらえないか?」
「ん…三日後だよね。分かった。あっ、忘れちゃった。例の帽子の素材を」
『[ハッピーの羽]10つと[ホシクモの糸]10つをNPC:ナミに渡しました』
「はい、素材はオーケー、[ネビュラハット]の作成依頼を承る。時間はね、ん…三日間が必要なので…」
「へぇー、すぐ貰えないか?まぁ、時間はちょうど同じだから。じゃあ、お願い」
「ふふふ~、あたしの腕を楽しんでくれよ」
「はい。では、さよなら」
「グォ~」
「うん、さよなら。ヒュプくん、フィユちゃん」
ナミの店から出て、ヒュプは始まりの町へと転移する。
魔法都市から一瞬で活気あふれた城下町に切り替わる。
いつものように、モフモフのパンダちゃんセットに身を包んだヒュプは広場に現れたら、直ちにプレイヤーに注目されていた。
ヒュプはやれやれというふうに溜息を吐く。
「全く、俺は見せ物じゃない。フィユ、しっかり掴んで」
「グォ」
ヒュプは空を翔るように急いで隣の路地に駆け込んだ。
「これで彼らが振り払われたんだ。えっと、約束の場所への最短ルートは…」
ヒュプはそう言いながら、マップを空中に浮かべる。
「ん…分かった。フィユ、出発するぞ。フィユ!?」
先まで自分の肩に座っていたフィユの姿が不意に消えてしまった。
不安に襲われたヒュプは細長い路地で狂奔しながら、フィユを呼び掛ける。
「フィユ!何処に行ったか?早く出てきてくれ!」
「グォ!」
十字路を通る時、右から焦って探していたフィユの鳴き声が伝わって来る。
急いでそこを見ていくと、自分に向かってぶんぶんと手を振ったフィユの姿が目に入る。
ヒュプは右へ曲がって、フィユをギリギリと強い力で抱き締める。
「フィユ!無事でよかった!」
「グォ?」
「何で一人で行っちまったか?俺はすっごく心配したぞ!」
「グォ!」
フィユはそのふにふにとした肉球で心配顔をしたヒュプの頬を撫でて、あるピカピカの物をヒュプに手渡す。
『貴重アイテム:妖精の涙を獲得しました』
「フィユ、これは?まさかさっきはこれを?」
「グォグォ」
フィユは鳴きながら、その丸々の手で真上を指す。
ヒュプは空を眺めると、素早く飛んでいた小さな光が瞳に映る。
その光は瞬きの間に消えていった。続いて、チョウの鱗粉のようなものが空を漂って、陽光をキラキラと乱反射した。
「うわぁ!綺麗だ。妖精さん?」
「グォ~」
先ほど路地に入った時、フィユは空を飛んでいた妖精を見つけていた。
前にヒュプが妖精の里を探したことを覚えているため、すぐ追いついていく。
ここに着いた時、地面に落ちた涙の結晶を見つけたのだ。
「ありがとう。フィユ大好きだ!でも、またこんなことがあったら、絶対に俺に教えてくれよ!約束して」
フィユはヒュプが差し伸ばしている小指を掴んで、「うん、分かった」と言いたげそうに小さく頷く。
「指きりげんまん、嘘ついたら針千本飲ます♪~」
「グォグォグォ~」
ヒュプはニコニコをしたフィユを肩に置いて、マップを見ながらタナと約束した場所へ向かう。
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