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VRMMOで始めましたモフモフ生活  作者: 水無月コトキ
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夜の図書館④

 それを読み終わった二人は、冷たい眼差しでその本をジーっと睨む。


「なぁ、タスク」

「なんだ?」

「自分のせいで化け物を生み出して、そのまま放っておいた。紛れもなく、責任逃れだよね!この野郎!」


 ヒュプはそう叫びながら、本を力任せに床にドンと叩きつける。

 すると、床がぐらぐらし始まる。

 周りの本棚が次々に倒れていった。

 それを目にしたヒュプは、ビックリして声を上げる。


「えええ!俺のせいぃ!?」

「グズグズするな!ここは崩れるぞ!クロスケ、フィユは頼んだぞ!」

「ホー!」


 タスクはそう叫びながら、片手でスフレを抱いて、ヒュプの手を引っ張って、サイコキネシスでフィユを連れたクロムと一緒に部屋から逃げ出した。

 しかし、そこはもう先ほどの図書館ではなく、空に浮かんでいる本で積み上げた狭い浮遊島だった。

 そして、百冊程の本型モンスターは牙を剥き、獲物を見つけた鷲の眼差しでヒュプたちを睨む。


「おおお!さっきのモンスターだ。ラッキー!」

「お前、意外に盛り上がったんだ。急に何を?」


 先ほど、百頁以上全て逃げていったところを読んでいた時、ヒュプは一頁ずつ探せば、今日はきっと徹夜してしまうのだと思ったので、怒って本を叩きつけたのだ。

 獲物がもう自分でやってきたので、瞳がキラキラと光ったヒュプ。


「よーし!さっさと敵をやっつける」

「俺に任せろ!」


 戦闘開始。





「敵が来るぞ。気を付けろう!」


 数冊の本が勢いよく飛んでくるのを確認したタスクが皆に声をかける。


「ホー!」


 詠唱が終わったクロムは先手を取って、氷魔法を撃ち込む。

 先ほどの敵と同じHPがかなり低く設定されているようで、三冊のモンスターは氷の槍でザキュと串刺しにされて、消えていった。

 と同時に、敵の巨大化能力が心配したヒュプの耳元に最高のお知らせが流れ込んだ。


『貴重アイテム:モンスター図鑑の残頁・其の二を獲得しました

 貴重アイテム:モンスター図鑑の残頁・其の三を獲得しました

 貴重アイテム:モンスター図鑑の残頁・其の四を獲得しました』


「やった!コイツらは一度死んだら復活の能力がない!思い切ってやれ!」

「ホー!」

「グォ!」


 敵が巨大化できないのを判明したため、クロムはサイコキネシスでフィユを連れて、ふらりと空を飛んで、得意の空中戦を始める。

 進化したクロムは、確かにサイコキネシスでフィユと一緒に空中戦が出来たが、MPの負担が厳しくなる。プレイヤーのようにMPポーションで回復できないので、クロムは前のように怒涛の魔法攻撃ができなくなってしまったのだ。

 クロムが不満な気持ちを表していなかったが、ヒュプはとうにそれに気付いた。きっとMP消費の負担が軽減できる装備を見つけるようにと決心した。


 一方、十数冊のモンスターがクロムとフィユを避けて、狭い浮遊島でうまく回避できないヒュプたちに襲い掛かる。


「メェェ!」


 本のモンスターたちが二人の攻撃範囲に入った瞬間、スフレの鳴き声が上げると共に、空から細い光が地面に射しこむ。

 続いて、その一点を中心として、周りに広がっていった。

 その光に触れた本のモンスターはまるで視力が奪われたように、動きが停まった。

 それと、同じ光の中にいるヒュプとタスクは、敵の姿がはっきりと見える。


「これは[レイ]、阻害魔法か。ずっと光の攻撃魔法と思ったぞ」


 [レイ]では、眩い光の結界を展開して、闇属性の敵の視力を奪う阻害系魔法である。本のモンスターたちはちょうど闇属性であったので、その鋭い牙が付いた口を開けたままぼーっとする。


「やるじゃない、スフレ。俺たちの出番だぞ、タスク!」

「おおお!俺に任せろ!スターダスト・インバウンド」


 タスクは疾風の如く本の前に来て、足をしっかりと地面を踏み込むと、剣を本のモンスターたちに刺突する。その星々ように輝いた剣気に刺されて敵が全て塵となって、始末された。

 ヒュプは空に向かって、繊細な指先でハープの弦を弾き始める。

 すると、七つの半透明な音符が飛んで来る本のモンスターに飛んで行った。


「ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ」と演奏のような澄んだ音が空で響くと共に、本のモンスターが次々と光の粒子となって、消えていった。


 圧倒的な実力の前に、いくら数の優勢があっても、本のモンスターたちも次々と残頁となって、ヒュプの道具欄に入ったのだ。


『貴重アイテム:モンスター図鑑の残頁・其の百八を獲得しました

 モンスター図鑑の残頁とモンスター図鑑のカバーを消費しました

 貴重アイテム:モンスター図鑑を獲得しました

 クエスト:[紛失したモンスター図鑑]進度 3/3』


 最後のお知らせがヒュプの脳の中に響き渡ると同時に、ヒュプたちの体が光に包まれる。

 次に目を開けた時、既に図書館の入口に戻ってきた。


「ホ~」

「グォ~」


 クロムとフィユはまるで子供のように、ヒュプの胸に飛び込んだ。


「よしよし。二人とも、イヤ、三人ともよく頑張ったぞ!」


 ヒュプはクロムとフィユをスフレの隣に置いて、一羽と二匹のモフモフの子に腕を回し抱きついてくる。


「サンキュー、お前たち」

「おいおい、俺も結構頑張ったのに、何で褒めるもサンキューも何も貰えないんだ?」

「ホー!」

「グォ!」

「メェェ!」


 文句を吐いたタスクに対して、クロムたちは一斉に「黙ってくれ!空気が読めない奴!」と示すように鳴き声を上げる。


「ほほほ…」


 落ち込んだタスクを目にすると、ヒュプは立ち上がって、拳骨をタスクの胸鎧に当てる。


「男なら文句を言うな。今日はいろいろサンキューな!」

「なに、大したことじゃないんだ。助けが必要なら俺を呼べ」


 リアルでいつもこうやって感謝し合ったので、タスクは拳を握って、自然のままヒュプの胸に差し伸べる。

 その結果。


「ホー!」


 その手がクロムの翼にピシッと叩き落とされたのだ。









 こうして、図書館のクエストは無事終了してきた。


この度、自分の拙作をお読み頂き、誠にありがとうございます。

『面白い』『続きが気になる』と思われましたら、是非ブックマークの登録をお願いします。

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