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VRMMOで始めましたモフモフ生活  作者: 水無月コトキ
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夜の図書館②

 鍵を扉にある鍵穴に差しこむと、ヒュプたちは図書館に足を踏み入れる。

 既に閉館時間なので、中に明かりが一つもついていないのだ。


「暗闇で何も見えない。こんな状況なんて全く予想してなかった。照明を用意すればよいな」

「ふふん~、こんなこともあろうかと」


 タスクはそう言いながら、道具欄からランタンを取り出し、火をつける。


「えぇ、タスクって何時でもこんなものを持ってるの?見直したぞ」

「ほほ~、この程度で驚いたら困るぜ、俺は何時でも準備万端だぞ!魔法陣なら、こっち。俺についてこい」


 明かりがあると言っても、前の進む道しか見えない。


「グォ」

「メェェ」


 フィユとスフレは暗いところが怖いように、ヒュプの足にしっかりとくっついている。

 ヒュプはビビっているフィユとスフレを抱き上げて、優しく慰める。


「フィユ、スフレ。大丈夫だよ、俺がここにいるから」

「グォ~」

「メェェ~」

「ホ…」


 クロムは暗視能力を持つが、皆とはぐれないように、ヒュプの肩におとなしく立っている。

 ヒュプと違い、タスクはまるでここのレイアウトを熟知(じゅくち)しているように、易々と進んでいる。

 先頭を歩いているタスクを見て、ヒュプが尋ねる。


「なんか。タスクってここに来たのは初めてじゃないような感じがする、まさか?」

「そのまさかだ。寝る前にここのボスに挑むのは俺のデイリーだぞ。だから、ここはもう俺の庭みたいなところだ」

「へぇー、一人でボスが倒せるって、タスクは凄いじゃない。って、今日はボスを倒さなくてもいいのか?」

「いいんだ。俺の勝ち目は半分だけだ。やられたら、今日はおしまいだぁ」

「お前、死ぬ前提の戦いを辞めなさい!」

「まぁ、怒るな。どうせ寝る間にデスペナルティを解除されるんだ。ヘイキヘイキ。そろそろ着くぞ」


 ヒュプはタスクについて最奥(さいおく)の本棚の前に行き着いた。

 タスクは本棚から数冊の本を取り出して、順番を入れ替えて元に戻すと、地面に妙な紫色の光を放った魔法陣が現れる。


「昨日ここが来た時、本の順番が昼間と違うことに気付いたんだ。元に入れ替えたら、これが現れたが、俺が何度も試しても何の反応もないんだ」

「へぇー。お前、結構やるじゃないか。少し見直したぞ」

「さっきも言っただろ、俺のいいところはまだまだあるぞ」

「全く、調子に乗りすぎて、痛い目に遭うぞ」

「ホ~」

「なんだとう?こら!」


 二人は笑いながら、魔法陣に向かった。


「じゃあ、行こう!」

「おおお!」

「ホー」

「グォ」

「メェェ」


 そして、転移の光が輝くと共に皆の姿は光となって消えていった。







 二人の視界を覆っていた光が消えていく。

 目の前に広がったのは、天井まで届いた本棚のような壁一面が本で埋め尽くされた通路だった。


「うわぁ!見ろ、床も本で埋められてるぞ。すげな、図書館の中でこんないい場所があるなんて」


 タスクが感心している時、ヒュプはその二人で並んで歩くしかない通路の向こうを眺める。


「壁が天井まであるなら、クロムの索敵スキルが使えなくなってしまう。どうしよう……」

「ホー」


 クロムはふらりと空を飛んで、機敏に飛び回っている。まるで「安心して、索敵が使えなくても警戒できる」と伝えるように鳴き出す。


「そうか、警戒のこと頼むぞ。クロム」

「ホー」

「じゃあ、早速出発するぞ!」


 タスクが先頭を歩き、通路を進み始める。

 本に囲まれた通路をある程度進むと、本に埋められた山が進む道を塞いでしまった。


「アレ?道を間違ったのか?」

「バカ言うな。真っ直ぐの道で、何処で間違ったか?ん……」

「ホー!」


 二人が腕を込んで途方にくれる時、クロムは何かに気付いたように、鳴き声で注意を喚起する。

 すると、本の山から勢いよく一冊の本が飛び出してきて、二人の方へと向かってくる。


「うわぁ!おっと!」


 タスクは素早く反応して剣で飛び込んできた本を遮る。


「グォ!」


 フィユはこのタイミングで本の下に着いて、攻撃をアップさせる赤いオーラを身に纏い、ピョンと跳び上がりパンチを本に叩きこむ。

 すると、本型モンスターは元の本に戻って、床に落ちていった。


「おおお!お前やるじゃない」

「グォ~」


 タスクとフィユが敵を速やかに倒して喜んでいる時、ヒュプはあることに気付いた。

 それは、本型モンスターのHPバーが既にゼロまで減っていったが、他のモンスターのように消えることはない。

 嫌な予感が背筋を走ったヒュプは即座に声を上げる。


「二人とも、早くそこから離れろ!敵はまだ死んでないかも!」

「えっ!?」

「グォ!?」


 タスクとフィユが驚愕の声を上げると同時に、本型モンスターの体から不意に赤い光を放つ。

 続いて、道を遮った山ほどの本を吸い込んで、HPバーが満タンに回復すると共に、巨大化して復活した。

 そしてばっと開かれて、野獣のように鋭い牙がページの端に現れ、タスクたちに襲い掛かる。

 たった数秒でこれらの出来事が起こったため、皆が反応すら出来ないうちに、巨大化した本は既にタスクの首に噛みつこうとしていた。


「メェェ!」


 危機一髪の時、スフレの鳴き声が響くと共に、タスクと本の間に虹色のバリアーが現れて、タスクの代わりに噛み砕かれていた。


「ホー!」


 その瞬間、クロムは空で魔法陣を展開する一方、ヒュプはハープを弾く。

 凄まじい冷気に包まれた氷の槍と半透明な音符を一斉に本の口の中に撃ち込む。

 すると本の牙がキラキラと輝く氷に覆われて、攻める手段が奪われた。


「タスク、フィユ!早く敵を止めろ!氷がすぐ溶けてしまう」

「任せろ!ダブル・インパクト!」


 タスクは大きく一歩を踏み出し、両手で剣を本に刺し込む。

 そして、渾身の力で剣をあげて、本を空中に投げ出す。


「お前の番だ、フィユ!」

「グォ!」


 フィユは空中から落下している本の下にやって来て、気をその小さな体にどんどん溜めていく。本が床に落ちた瞬間、バンと爆発する。

 爆発による嵐は凄まじい刃のように、本を切り裂いた。

 怒涛のような攻撃を受けて、巨大化の本のHPバーが再びゼロとなって、散らばって消えていった。


 と同時に、クエストの提示音がヒュプの耳元に流れ込む。


『貴重アイテム:モンスター図鑑の残頁・其の一を獲得しました

 クエスト:[紛失するモンスター図鑑]進度 1/3』


「やった。俺たちの勝利だ!」

「グォ~」


 タスクは嬉しそうなフィユを肩に置いて、褒める。


「お前、さっきの攻撃やるじゃない!クロスケもよくやった。さっきの凍結ははんぱじゃねぇな!」

「グォ~」

「ホ~」

「当たり前だろう。クロムとフィユはうちの子だから。そして」


 ヒュプはそう言いながら、ふわふわの枕みたいなスフレをぎゅっと抱き締める。


「フィユとタスクを助けてくれて、ありがとうね。スフレ」


 すると、スフレは嬉しそうに目を細めて、心地よい笑みを浮かべる。


「メェェ~」


この度、自分の拙作をお読み頂き、誠にありがとうございます。

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