兄だから
自分の拙作をお読み頂き、誠にありがとうございます。
誤字脱字について、今は12話まで修正していました。
今日と明日で徹夜でやり直すと思って、絶対に今週中で全てをやり直しますように。
では、これからもよろしくお願いします。
「いてっ」
剣士の男が倒れたので、ヒュプも地面にバタンとへたり込んでいた。
タナは飛ぶような速さでヒュプのところに来て、ギリギリと強い力でヒュプを抱き締める。
「ヒュプちゃん、大丈夫?怪我はない?うわああ!」
涙が目に溢れたタナを見て、ヒュプは会心の笑みを浮かべる。手を上げて、優しく涙を拭く。
「泣くなよ。忘れたか、俺は不死身だ。ほら、皆の前だぞ!」
「ううう…どうして一人であんな危険なことを…あたし心配したんだからああ!!」
「分かった、分かった。俺が悪かった。ごめんな!」
この感動的なシーンを見て、皆がニコニコと笑い出す。
勿論、例外の人もいる。
「ふふふ~、今回の画面は強すぎる。幸せぇぇ~!あたし、死んじゃう~!」
「ルイーナ、死んでる時間はない!そちらのラブラブシスターズも、早く手伝ってくれ!」
皆は気絶した三人をロープでしっかりと縛った。
自分をひどい目にあわせた三人を見て、ヒュプが尋ねる。
「この三人はどうするんだ?セツナさん」
「あたしたちはPKじゃないから、このまま放っておけ」
セツナがそう言ったが、ルイーナはもう怒りを我慢できないように、三人に対して杖を斜めに突き出す。
「ダメだ!やはり殺さないとあたしの腹の虫が治まらないよ!」
「よしなよ。コイツらの処分は被害者のヒュプちゃんが決めるわ」
「だって……分かった!!やめてください!」
ルイーナはまだ執拗に彼らを殺したがるが、目を細め笑っているエリスを見て、直ちに諦めていた。
「ヒュプちゃん、どうするの?クルルはセツナさんが言ったように、放っておいていいと思うよ」
「うん。俺も殺すつもりはない。タナはどう思う?タナ!?」
先ほどまでずっと側にいたタナが急にいなくなったため、ヒュプは急いで周りを見渡す。
崖縁のところにタナの姿を見つけた。
「タナ、コイツらはどうする?」
「へぇー、どうでもいいよ。早くこっち見て、とっても素敵な牧場だよ~」
自分に向かってぶんぶんと手を振るタナを見て、ヒュプはやれやれというふうに力なく笑った。
「っく!」
と同時に、剣士の男は意識を取り戻して、険しい目つきでヒュプたちを睨む。
「お前ら、俺たちをどうするつもりだ!殺すならさっさとやれ!」
「いや、俺たちはそんな非道なことをやらないんだ。お前らのようなPKじゃないから」
男は悔い改める様子が少しもなく、負け犬の遠吠えのように脅し続ける。
「[デス・バンパイア]を敵にしたくないなら、さっさと俺たちを放しなさい!」
「この反省を知らない奴!ヒュプちゃん、やはり、殺そうか」
男の挑発的な言葉におでこに青筋を浮かべるルイーナは杖を持って、詠唱を始める。
「やめとけ、ルイーナさん」
「だって!」
「この男にちょっと聞きたいことがあるから」
ヒュプはそう言いながら、男に近づいていく。
「お前らほどの程度のPKなら、何人いようが怖くないんだ!いいか、おとなしく俺の質問に答えなさい!さっき俺を邪魔した壁は、お前の仕業だな。結界魔法か?それともバリアーか?」
「はぁ?壁だとう?何かバカなことを!さっきはお前が勝手に転んだんじゃないか!?」
「なに!?」
男の言葉が耳に届くと、ヒュプは体中の血液が逆流するほどの恐怖を感じてしまう。
「タナ、早くそこから離れろぉぉぉ!!」
ヒュプは大声でタナを呼びながら、死ぬ気で崖縁へ駆け出す。
しかし、それはもう遅かった。タナはまるで誰かに後襟を掴まれたように、空中に引っ張られてしまった。
「ヒュプちゃん、これは一体!?」
「やはり、誰かが隠蔽スキルで姿を隠しているのだ!誰か探索系のスキルは使えるか?」
「アハハハハ!そんな必要はない!」
男性の声が響くと共に、タナの後ろに灰色の毛皮に覆われた狼の獣人が現れて、その鋭い爪をタナの首筋に当てる。
ヒュプたちだけでなく、剣士の男を含む全員が驚いた。
「早くあたしを放せ!この狼男!」
タナは全身の力でもがいているが、掴まれた状態で手も足も全く敵に届かない。
「お前、こいつらの仲間か?早くタナを放せ!」
怒鳴っているヒュプに対して、男は交渉のつもりがなさそうに、楽しそうな顔をしてヒュプたちを見据える。
ただ一人の妹が敵に掴まれたので、ヒュプは思考の力がもうなくなってしまった。
「早く言え!お前もあのカード欲しいよな。だったら早くタナを放せ!カードなら…」
ヒュプが慌ててカードを取り出そうとした時に、男は目に見えるスピードで縛られている三人にナイフを投げていく。
ザクッと刺す音が響くと共に、三人が光の粒子となって殺されてしまった。
いくらゲームの中と言っても、人の命を軽く奪ったことが目に入ると、皆ショックで呆然としてしまった。
「お前、仲間になにをした!?」
「仲間?笑わせるな!レアアイテムを狙う三流のPKなんかと一緒にするな!俺様が欲するのは血沸き肉躍る戦いなんだ!」
男はそう言いながら、崖の下を眺める。何か企みがあるように不気味な笑みを浮かべる。
「そうだ、いいことを教えてやろう。PKのデスペナルティを避けるもう一つの方法はな!」
男は笑いながら、片手でタナを持ち上げ始める。
「やめろォ!早くタナを放せ!」
ヒュプの叫び声が聞こえると、男は意外にも手を止める。
続いて、ヒュプを指す。
「良かろう。お前、自分で飛び下りたら、コイツを放すぞ!」
タナの苦しんでいる顔を見て、ヒュプは歯を食いしばって、決心した。
そして崖縁に行った。
「分かった。お前、絶対に約束を」
「心配するな。すぐ放すぞ。そして、そっちの娘たちをもろともこの手で葬りやろう!」
「クソ!お前!!」
男が自信で笑っている矢先に、タナは渾身の力で体を回して、男の腕を掴んで、カムと噛みつける。
痛みのせいで男が手を放した。このタイミングで、タナはダガーを抜き出して、男の首を切り裂いていく。
不意の攻撃なので、男はとうてい避ける暇がなかった。
ザクっと斬られて、崖の下に倒れていく。
「オノレ!チョーシに乗りやがってガキめ!お前も一緒に落ちろ!」
僅かな瞬間で、男はパっとタナの足を捕まえて、渾身の力で投げ出した。
投げられる瞬間、タナは思わず目を閉じてしまう。
するとまるで数百メートルの高さから落ちるように、耳元にぴゅうぴゅうという風の音がする。
「タナァァァァ!!」
ヒュプは叫びながら、崖の下に身を躍らせて飛び下りる。
ヒュプの呼び声が耳に届く瞬間、まるで彼かにしっかりと抱き締められたような感触が全身に伝わってくる。
急いで目を開ける。瞳に映ったのは、優しく笑顔を見せるヒュプだった。
「お兄ちゃん!どうして!」
「タナ、怖くないよ。俺がここいるから」
いくら自分より低い女の子になっても、自分を大切にする兄は昔からずっと変わらないのだ。
ヒュプの優しい顔つきを見て、タナはニヤリと笑い出した。
「何を笑ってるんだ?しっかり掴まって。後は俺に任せろ」
「うん、お兄ちゃん大好き~!」
ヒュプはタナをしっかりと抱いて、体を回して自分の背中を地面に向けると、絶体絶命のピンチから逆転できる言葉を口から出す。
「スヤー」
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