フィユの進化①
翌日の朝、ヒュプはタミの店に行き着いた。
「タミさん、おはようございます」
「おはよう、ヒュプくん。フィユちゃんの装備品はもう出来ましたよ。はい、これ」
「ありがとう」
タミの差し出した[若竹ノ髪飾り]を受け取る。
それは、若竹のように青い竹の形の髪飾り。
ヒュプはフィユを鏡の前に抱きかかえて、それをフィユが着けている髪飾りの下に着ける。
「竹とササ、まるでセットのようにピッタリだね~、フィユ」
翠緑色の光が輝いている髪飾りを付ける自分の投影を見て、フィユはそれを触りながら、嬉しそうな笑みを浮かべる。
「グォ~」
「うふふ、フィユちゃん嬉しそうですね。次の子はまだ決まっていないんですか?」
「うん、クロムとヒュプが満足しない子はダメだと思ってるから……でも、もうすぐ会えるかなと思います」
「そうですか。なら、頑張ってくださいね」
「はい。あ、そうだ、これはナミさんから頼まれた手紙です」
「ナミですか、ありがとう。ヒュプくん」
『貴重アイテム[タミへの手紙]をNPC:タミに渡しました
クエスト:[ナミの手紙]完了しました』
タミは手紙を受け取って、開けて読むと、眉根を寄せて困惑した表情を見せている。
ヒュプが尋ねようとした時、クエストのプレートが空中に浮かぶ。
『クエスト:[紛失したモンスター図鑑]を受けますか。[Yes][No]』
「ん…なるほど、継続クエストだよね。タミさんの顔つき、流石に放っておけない。そして、図鑑って、俺の武器じゃないか。まさかいい武器を手に入れられるかも」
ヒュプはボタンを押して、タミに尋ねる。
「タミさん、何かあったんですか?」
「え、えぇ。実は、ある封印術師は凄いモンスター図鑑をナミの店に預けていたんですが、三日前に急になくなってしまいました」
「えええ!まさか、盗まれてしまったんですか?」
「それは分かりません。ナミによると、誰かが入った形跡はないです」
「ん…ほかに何か手がかりはありますか?」
「手がかりかどうかが分かりませんが、町の北にある図書館に、三日前から、毎晩変な魔法陣が現れます」
「図書館ですか…分かりました。俺に任せてください、きっと本を取り戻してきます」
「ヒュプくんにお願いします。危険なことはしないでください!」
「分かりました。行くよ、クロム、フィユ!」
「ホ~」
「グォ~」
[EGO]での時間の流れはリアルと同じである。つまり、その謎の魔法陣はリアルの夜にしか現れないのだ。
既に朝10時を過ぎていたので、始まりの町にプレイヤーがだんだんと多くなる。
そして、パンダちゃんセットを着るヒュプはまるで焦点かのように、周囲のプレイヤーに注目されていた。
「パンダちゃんだ」、「あ、パンダだ」「看板娘のパンダちゃんだ」などのような言葉が耳に届くと、顔を恥ずかしそうに赤く染めたヒュプは即座に魔法都市に移動していた。
「なんで俺がじろじろと見られるんだよ!パンダちゃんセットの情報はもう広がっているはずなのに……まったく!」
ヒュプは呟きながら、塔の前にある広場のベンチに座る。
気持ちを少し緩めると、今日の予定を整理する。
「ん……図書館の探険は今夜にしよう。今日は帽子の素材を集めよう。あ、昨日レベルは一気に18まで上がったんだね、そして……」
ヒュプはそう言いながら、フィユとクロムを太ももに置く。
「フィユ、もうすぐ進化できるぞ!きっとわくわくしてるよね。皆一緒に確認しよう」
「グォ~」
「ホ~」
ヒュプはステータスのパネルを空中に浮かべる。
――――――
名前:ヒュプ 種族:半神族 ジョブ:封印術師
レベル 15→18
体力15→16 筋力5
魔力31→34 精神32→36
敏捷25→28 器用23-26
幸運8(+50)
スキル:[神化][従魔の盟約LV2][召喚LV2][従魔強化LV2][手加減LV2][催眠魔法LV2][石化魔法LV2][毒魔法LV1][眠るパンダちゃん][スヤー][パンダちゃんの瑞夢]
名前:クロム〈オオコノハズク〉種族:飛行系 属性:風、氷、念
レベル 15→18
体力18→20 筋力12→13
魔力42→48 精神39→45
敏捷29→32 器用29→32
スキル:[索敵][ウインドカッターLV3][アイスニードルLV3][フリーズランサーLV1][サイコキネシスLV1→LV2][ステルス]
名前:フィユ〈ヤンチャパンダ〉種族:野獣系 属性:無
レベル 12→15
体力20→23 筋力32→37
魔力10→11 精神16→18
敏捷36→42 器用20→23
スキル:[跳躍][パンチLV2→LV3][キックLV2→LV3]
[進化]/[取り消し]
――――――
「ふむふむ、新しいスキルはないか。まぁ、あんまり期待していなかった。じゃあ、待ち望んでいた進化を!」
「グォ~」
――――――
従魔:フィユ(ヤンチャパンダ)進化候補
[カンフーパンダ]
速度と攻撃力に特化する小型パンダ。
見た目は可愛いパンダだが、その脚から繰り出されるキックは岩を砕く力を持つ。
必殺技は、パンチを高速で繰り出す[パンダ・舞]という連続技。
スキル:[パンダ・舞][キック・岩砕]
[トウキパンダ]
可愛い度が200%アップした小型パンダ。
成長はヤンチャパンダと同じだが、闘気で自分の基礎能力を上昇させる。
必殺技は、体から放出した闘気で周りの敵を攻撃する[発]。
スキル:[剣ノ舞][鋼鉄ノ構][韋駄天ノ足][発]
――――――
「両方ともモフモフで可愛いな~、カンフーの方は火力とスピードが上がる。トウキの方はそれ以上に防御も強化できるよね。更に、その発って強そうな感じだ。でも、MPの消耗も考慮すべきだと思うけど……どうしようかな…」
「グォ!グォ!」
「ホ!ホ!」
ヒュプが悩んでいるうちに、フィユとクロムは鳴きながら、モフモフの手と羽先で一緒に[トウキパンダ]の下にある『可愛い度が200%』のところを指す。
「そう…か。そうだよね、可愛いこそ正義だぞ!」
「グオグオ~」
『従魔:フィユがトウキパンダに進化しました』
「うわぁ!すげっ!」
「ホー!」
進化したフィユは、モフモフの毛皮が前より柔らかいだけでなく、そのキラキラと輝いている瞳の上に、可愛い麻呂眉毛が生えている。
可愛い度が200%ということは確かに嘘ではないのだ。
「グォ~グオ~!」
フィユは嬉しそうに鳴きながら、その丸くふわふわの手で町の外を指す。
「フィユは早く新しい力を試してみたいよね。じゃあ、まずホシクモを狩りに行こう~!」
「グォ~」
「ホ~」
ヒュプは立ち上がって、モフモフの子たちと一緒にワクワクして町の外に向かって行く。
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