女の子になっちゃった!
朝に目覚めた時、何と!VR日間52位を取りました。
読者の皆、大変ありがとうございます。
皆のため、頑張らなければいけません!
これからもよろしくお願いします。
「うわ!なんだ、この人混みは!」
[EGO]の世界に入った薫の視界に飛び込んだのは、中世ヨーロッパ風の街並みでなく、溢れかえるプレイヤーだった。
この山ほどの人集りにビックリしたため、薫は自分の声が非常に高くなっていることに全く気付かなかった。
「ぐずぐずしてる場合じゃない。早く光と合流しないといけない!確か南にある勇者の像の前だと言った。えっと、南はどっち……うん、彫像を探せばいい!」
ゲームを始めたばかりの薫はマップで方位を確認できることを分かるはずがない。
よって、集合場所を探すため、前を見上げたが、目に入ったのはプレイヤーたちの頭だけだった。
「アレ?気のせいかな、視野が前より狭くなってそうな…」
薫はこれがきっとVR特有の違和感だと思って、プレイヤーたちの隙間から外を覗く。
すると高さ数メートルにある彫像が目に映る。
「見つけたぞ、こっちだ!」
薫はその小さな体を利用して人混みを擦り抜けると、彫像の前に辿り着いた。
「お兄ちゃん!こっちよ!」
彫像の下で、ある女の子は手を振りながら呼び掛ける。
空から青く澄んだ光はその銀髪をキラキラと光らせている。
薫は一目ですぐ分かった。それは自分の妹――光だった。
ほとんど地に足が着かないような早歩きで彫像の下にやってきた。
薫が話しかけようとしたところ、光が驚きの表情を見せながら声を上げる。
「どうしてお兄ちゃんがちっちゃくなったの?」
「失敬な!体が小さくて悪かったな…全く、何でわざわざこんなこと……」
薫は急に話をやめて、引き続き驚いたように非常に青白い顔を見せる。
何故ならば、自分の身長が光の鼻ぐらいの高さに縮んでしまったからだ。
「な、な、何で…光は俺より高くなった!?このゲームは身長を調整できないと言ったよね!」
「あたしが高くなったじゃなく、お兄ちゃんがちっちゃくなったよ!」
「えええ――――っ!!」
薫はやっと気付いた。先ほど視野が狭くなった原因はプレイヤーたちが高いからじゃなく、自分が低いからだ。
薫は懸念している身長問題が更に深刻になってしまったため、目の中に絶望の色がうつろう。
「これでどうすればいいのよ!」
泣く寸前の顔をした薫の非常に高い声が耳に届くと、光は何かに気付いたようにその体をじっと見つめる。
引き続き、分かったような顔を見せて声を上げる。
「お兄ちゃんがお姉ちゃんになっちゃった!」
「えええっ!くだらん冗談を辞めろ!」
「冗談じゃないよ!その体と声、女の子に決まってるじゃない!」
光にそう言われて、薫は目線を下に向ける。
胸の前に何もないのを確かめていたため、一安心した。
続いて手を当ててほっそりした腰回りを触ると、その柔らかな感触が掌に伝わる。
しかし、薫はそれがきっと何かを間違ったと信じて、強情らしい顔を見せる。
「きっと何かの間違いだよね!ほら、胸がないぞ!」
「ほほ~、強情だね。それじゃ、これはどうだ~」
光は小悪魔のように意地悪な笑みを浮かべると、薫の胸に手を当てて軽く撫でる。
「ほほ~、こんな体は本当に男かしら~」
すると、薫は電流が全身に流れたような感触がして、全身が麻痺してしまった。
頬が赤くなって、胸の動悸がみるみる高まった。
「ぎゃぁ――――っ!」
薫は自分さえビックリするようなトーンで声を上げた。
すると、周りのプレイヤーたちの目線が一気に二人に集中してしまった。
周りの状況に気付くと、光は即座に薫の腕を掴んで南の門へ疾風のように駆け出す。
「お姉ちゃん、走れ!」
「お姉ちゃんじゃない!うわぁ――――っ!」
二人は人が少ない南の門に行き着いた。
薫は荒々しい息を吐く。
「ふうーっ!ふうーっ!これぐらいの距離なのに、何でこんなに息苦しかったんだよ!」
「だってさ、言ったでしょう!お姉ちゃんは女の子だもの」
「またそんなことを、俺は男だ!」
「はいはい、まずフレンド登録しようっと~」
すると、半透明のパネルが薫の目の前に現れた。
『プレイヤー名:タナからフレンド申請が届きました。[承認][拒否]』
「タナって?」
「あたしのPNよ。早く受けてよ!」
「うん、わかった」
薫は[承認]ボタンを押す。
光は薫のPNが目に入ると、にやりと笑う。
「流石お姉ちゃん!言ってなくても双子神のPNをつけたんだ!大好き――っ!」
「当ったり前だろう!俺を誰だと思ってんだ?っていうか、お姉ちゃんって呼び方をやめろ!俺は男だ!」
「そろそろその無駄な抵抗をやめて、女の子になった事実を認めなさい!」
するとシステム効果音が薫の耳元に流れ込む。
『タナからメールが届きました。[読む][取消]』
「メール?」
「そう、証拠写真を付けたメールだ!」
薫はメールの添付写真を開く。
目に映ったのは、身長が150センチあるかないか分からない、金髪の可愛い女の子がさっきの彫像の下でにっこりする写真だった。
そして、そのマジ天使の顔で笑っているのは、間違いもなく薫本人だった。
絶対的な証拠に対して、どうしても女の子になった事実を認めざるを得ないのだ。
薫は世界の終焉が訪れたような表情を浮かべて、溜息を吐く。
「はぁぁ…何でこんなことが起こったんだよ!もう!」
光は落ち込んでしまう薫の顔に目を凝らすと、あるアイデアが浮かぶ。
そして優しく慰める。
「大丈夫よ。モフモフはきっと女の子になったお姉ちゃんが大好きよ!」
双子の心が繋がっているという言葉は紛れもなく、正しかった。
薫はそれが耳に届くと、即座に喜びを顔に浮かべる。
「そうか!分かった、早くモフモフたちと会いに行こう!でも、お姉ちゃんって呼ぶな。女の子の体でも、俺は男だ!」
光は自分より低い薫を見詰めて、小悪魔のような笑みを再び浮かべる。
「確かにお姉ちゃんという呼び方はおかしいね」
「そうでしょう」
「だって、タナトスはヒュプノスの兄だよ!そして大事なのは、今はあたしの方が高いよ!」
「るっせえ!」
「照れてるヒュプちゃんも可愛い――っ!さぁ、遠慮なくお姉ちゃんって呼んで~」
「イヤッ!」
こうして、姉妹(?)二人は笑いながら、町の外へ向かって行く。
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