町中散策
岩場を抜けたところには、広い平野と綺麗な川。
川に沿って進むと、まるで雲上の世界と繋がるような高い塔が視界に飛び込む。
タナはウキウキして塔の方向を指差す。
「ヒュプちゃん、見て見て、あそこが魔法都市よ!」
ヒュプがそっちを眺めると、塔の下に沢山の建物の上に、キラキラと輝く魔法の煙が漂っている。
町に足を踏み入れると、モフモフの子たちは直ちにその神秘的で美しい風景に驚いた。
「ホ~!」
「グォ~!」
天まで届く塔を中心として、見たことのないキラキラした魔力を含む石材で建てられた洋風の建物が両側にずらりと並ぶ石畳の道を、沢山の魔法使いのような人々が歩いていた。
「あたしたちはマジカルリングのクエストをやりに行く予定だけど、ヒュプちゃんも一緒に行ってみない?」
ヒュプはワクワクしているクロムとフィユを見て、
「俺はパス。この子たちと一緒にゆっくりと見って回りたい。ね~、クロム、フィユ」
「ホ~」
「グォ~」
「分かった、じゃあ、いい情報を教えてあげる。ある魔女のクエストをクリアしたら、妖精の里に行けるよ!」
「えっ!どんなクエストなの?」
「わかんない、βテストからずっとそう言う噂があったけど、本当に見つけたプレイヤーは一人もいないよ」
「へぇー、そうか。じゃあ、俺探しに行く~!」
「うふふ、ヒュプちゃんやる気満々ね。夕飯を作ることを忘れないでね」
「あぁ!分かった、お前もね、昨日のようにご飯を忘れちゃダメだぞ」
タナたちと別れると、町を楽しんで見て回る。
「うん……情報は何もないし、何処で探せばいいのかな?」
ヒュプはそう言いながら、周りの建物を見回す。
「あれは……箒!?」
ある店のショーウィンドウに陳列された箒に目を引かれる。
「箒って、魔女の定番アイテムじゃない。あそこならきっといい情報があるぞ。行こう、クロム、フィユ!」
「ホ~」
「グォ~」
ヒュプは『マジックアイテム・ナミ』という看板を掲げる店舗の扉を開けて足を踏み入れる。
すると、星柄のロープを纏った女性が声を掛ける。
「いらっしゃいませ、マジックアイテム・ナミにようこそ」
店主っぽい女性の顔を目にすると、ヒュプはビックリして声を上げる。
なぜなら、この女性は始まりの町にある封印専門店の店主タミとそっくりなのだ。
「タ、タミさん?何でこんなところ…」
「ほほ~、パンダちゃんは姉ちゃんのこと知ってるんだ。あたしはタミの双子の妹、ナミだよ」
初めて敬語を使わないNPCに出会って、そして同じ双子であったため、ヒュプはナミに親近感を抱く。
「間違っちゃた。ごめん、俺は…」
「ヒュプくんでしょう?姉ちゃんから聞いたんだ。パンダ服を着た可愛い俺っ娘。あたしの店に来たってことは、きっと何か欲しいんでしょ?」
「はい。俺は妖精の里に連れて行ってくれる魔女さんを探して、さっきこの箒を見て、魔女さんと関係があるかなと思って」
「アハハ~、そうかそうか。残念、ヒュプくんが言ってた魔女のことは知らない。そして、それは空を飛べる箒じゃなく、箒の形の杖だ。封印術師のヒュプくんはそれは装備できないよ」
「そう…か。でも、きっと何処かで情報があると信じてる。探せば、きっと見つかるぞ!」
「ふふふ~、姉ちゃんの言う通り。ヒュプくんはポジティブな子だ。さぁ、何か欲しいなら、遠慮なく言ってね。割引あげるよ」
「えっ!本当?ありがとう」
ヒュプは店に陳列された商品をざっと見回すと、ナミに尋ねる。
「あの、ナミさん。店の装備はこの子たちも使える?」
「ん…武器と服はちょっと。アクセサリーなら従魔も装備できるよ。あ、帽子もだ」
「分かった、ありがとう。二人とも、何か欲しいなら、遠慮せずに言って」
「ホ~」
「グォ~」
フィユはそっと真ん中にあるテーブルに飛び降りて、ピカピカなアイテムを見回すと、気に入った装備がなさそうにその丸く頭を横に振る。
「ない…か。フィユは格闘家だよね。格闘の専門店に行ったら、きっと気に入る装備があるぞ!」
「グォ~」
「ホー!!」
クロムはその白い羽先で、黒を基調として、ところどころに美しい星々の装飾が施される魔法使いの帽子を指す。
ヒュプはその帽子を持ち上げて、クロムに尋ねる。
「この帽子がいいの?」
「ホ~」
「分かった。ナミさん、これちょっと試着したいんだけど」
「いいよ。それは元々サンプルだし」
「分かった、ありがとう」
ヒュプはその帽子をクロムの白く丸い頭に被せる。
すると、クロムは嬉しそうに店で飛び回っている。
「ホ~」
「全く、クロムは子供っぽい。ナミさん、この帽子はいくらなの?」
「ヒュプくん、さっき言い忘れちゃった。うちの商品は金貨で買うんじゃないよ。指定の素材を集めて、交換するんだ。この[ネビュラハット]の素材は、ん…[ハッピーの羽]10本と[ホシクモの糸]15本だ」
「ハッピーとホシクモ…分かった、今すぐ狩りに行く。ありがとう、ナミさん。クロム、フィユ、行こう!」
「ホ~」
「グォ~」
ヒュプが店から出ようとした時、ナミは急に声を掛ける。
「ヒュプくん、待って。装備の効果をまだ教えていなかったよ」
「それは大丈夫。効果なんかどうでもいい、大事なのはクロムがそれが好きなことだから」
「そう…か。安心して、クロムちゃんにピッタリの効果だよ。あっ、良かったら、この手紙を姉ちゃんに渡してもらえないかしら?」
ヒュプがまだ返事していないうちに、目の前に青色のプレートが浮き出てくる。
『クエスト:[ナミの手紙]を受けますか。[Yes][No]』
「クエスト…か?明日ちょうどタミさんの店に行くよね。じゃあ…」
ヒュプは[Yes]を押すと、話を続ける。
「ナミさん、手紙のこと俺に任せて!では、さよなら」
「うん、お願いね。さよなら」
『貴重アイテム[タミへの手紙]を獲得しました』
店から出ると、夜の帳が下りていた。
月の光は町の上空に漂っている魔法の霧を光らせている。
ヒュプは急にタナと約束した夕飯のことを思い出した。
「うわっ!もうこんな時間!?早くご飯を作らないと……クロム、フィユ。今日はこれで、明日一緒に頑張ろう!」
「ホ~」
「グォ~」
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