悪意妨害された
木立が密生している森から抜けると、ごつごつとした岩ばかりの岩場にやってきた。
「ホー!」
空中で周りを警戒しているクロムは敵を見つけたように鳴き出す。
すると、ヒュプはその方向を眺めると、剣の鋭さに負けない二本の牙を持つ巨大なモンスターが視野に入った。
距離は、30メートルくらい。ぐうぐうと寝ている3メートル以上のイノシシが狭い道を遮断する。体を覆う金色の体毛は鋼のように固い。その硬そうな毛皮を貫くのは、どう見ても凄く困難だった。
イノシシはまだ寝ているが、ヒュプは既にその危険な雰囲気を感じ取った。
「あたし、ちょっと他の道を探しに行く」
タナはそう言いながら、姿をそっと消していた。
タナを待っている間に、ヒュプが尋ねる。
「あの、そのボスを倒さないと前に進めないの?」
「いや、そいつはここのボスじゃないんだよ。まぁ、ある意味でボスより厄介な存在だ」
「えっ!どういう意味?」
「そいつは[グリンブルスティ]、レベル50以上のボスモンスターだが、何でここに…」
「50以上!!!?」
クルルの説明が耳に届くと、ヒュプはビックリして叫び出す。
ルイーナは直ちに手でヒュプの口を押さえる。
「シっ!声が大きすぎ!あいつを起こしたらやばくなるよ。全く、何であいつがここに現れたのよ」
「ん…多分、魔核でランダム召喚されたんだ。ずっとあやしいと思ってた、今まで1パーティーしか着いてなかったわけがやっと分かった。どうやら、最初の奴らは魔法都市のスキルと装備を独占するため、わざと厄介なモンスターを残したようだね」
「えっ!なんで、それは妨害行為では?」
「いや、これぐらいならまだ大丈夫。レベルが上げると、そいつを簡単に倒せるよ。でも、そうすると、マジカルシリングは間に合わないよ」
「えっ!ルイーナさん、マジカルシリングって?」
「セツナ、ルイーナ。ヒュプちゃんが知らない言葉が多すぎるわ。全く、わたくしが説明しよう」
「あ、ありがとう。エリスさん」
「まず、セツナが言ってた魔核は[モンスターの核]という通常モンスターとボスモンスターをランダム召喚できる超レアアイテムだ。前のプレイヤーがここを通る時、魔核で高レベルのボスモンスター[グリンブルスティ]を召喚していた。あいつらの目的は道を邪魔して、[マジカル]というシリーズ装備を独占するためだ。来週のイベントはもう知ってるよね?」
「うん、バトルロイヤルっていう対戦イベント」
「そう、マジカルシリングは魔法都市であるクエストで手に入れられる装備だ。それは元々強い装備とは言えないけど、イベントってそれがないと面倒なんだよ。今から全力でレベリングすれば、三日後にはこいつを倒せるけど、そのクエストは五日間掛かるもの。どうしても間に合わないわ……」
話している間に、タナが戻ってきた。
「ただいま……」
「他の道はやはり?」
「うん、進む道はこれしかなかった。全く、今回はあいつらにやられたな」
「やはり、ダメかしら?」
「あぁ、悔しいけど、今のあたしたちで勝てる敵ではない」
ただ一人の大切な妹は悔し涙を浮かべる。
それを目にして、怒りの感情がむらむらと胸をついたヒュプは頭をしぼって方法を考える。
しかし、平均レベル30のパーティーでレベル50のボスを倒すなんて、どう考えても無理なのだ。
方法が全く思いつかず、クルルはしくしくと泣きながら頭を下げる。
「ひい…クルルがもっと強ければ、あいつの攻撃がガードできる。ごめんなさい」
「それはクルルちゃんのせいじゃないよ。悪いのは、魔核でこいつを召喚した奴らだ!」
「でも、もしクルルが一撃を受け止めれば……皆の力で敵を倒せるよ」
クルルの話が耳に届くと、ヒュプは即座に問いかける。
「あの、もし攻撃を受けて死ななければ、皆はあいつが倒せるの?」
「うん?ヒュプちゃん、何が言いたいのかしら?」
「俺なら、あいつの攻撃をガードすることができるかも。いや、きっとできるぞ!」
「「「「えええ――――っ!!!」」」」
保護対象であるヒュプのそのような発言が聞こえると、セツナたちはビックリして叫び出す。
しかし、タナの顔には少しの驚愕の色も見えない。
なぜなら、兄のヒュプは決して法螺を吹く者ではないからだ。
よって、タナは皆を止め、ヒュプに尋ねる。
「ヒュプちゃん、きっといい方法を思いついたんだよね」
「そう、さすがタナ、それはね……」
ヒュプの作戦が聞こえると、皆はワクワク興奮した。
「すっごく大胆な作戦だね、今回はタンクの役目を譲るよ、頑張って、ヒュプちゃん」
「うん、俺に任せろ!エリスさん、あとで防御と回復のバフをお願い」
「安心して、ヒュプちゃんは死なないわ、わたくしが守るもの」
「アハハ~、エリスさんは頼もしいな!じゃあ、皆は作戦通りでお願い!」
「「「「「おおお!」」」」」
すると、ヒュプとモフモフの子たち以外の皆は岩の後ろに隠れている。
ヒュプはクロムとフィユを抱いて、優しく撫でて、
「クロム、フィユ、勝利は二人に掛かってるよ、頑張って!」
「ホ~」
「グォ~」
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