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VRMMOで始めましたモフモフ生活  作者: 水無月コトキ
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黄金の眠神

 和やかな雰囲気が流れていた中。


「ホー!」


 クロムは何かに気付いたように、空を飛んで向こう側の穴に向かって鳴き出す。

 クロムの異常な行動に気付いたヒュプとフィユは即座に戦闘の構えを取って、警戒した。

 嵐の前の静けさを打ち破ったのは、穴から伝えてきた地面を踏み荒らす複数の足音だった。


「気を付けて、何かの群れがくるぞ!」

「グォ!」


 ヒュプが言い終わらないうちに、地震のように地面がぐらぐらし始める。

 すると、数十匹のグランドトカゲと黒い霧が如く多数のワイプがヒュプたちの視野に入り込んできた。


「うわぁ!これはタスクが言ってた『モンスターラッシュ』か。想像以上の数だ」


 モンスターラッシュ、字面通り数時間に一回起こるモンスターの大量発生である。

 全てのモンスターを退治すると、経験値だけでなく、大量の金貨も手に入れられる。

 プレイヤーにとって、絶好のチャンスなのだ。

 しかし、ランダムの場所と規則のない更新時間などのキツイ条件をクリアして、見つけるのは運に頼るしかないのだ。

 普段から考えると、これは決して敵わない相手ではなかったが、ヒュプは怖がらないばかりか、興奮して目がピカピカになった。


「この数、どう見ても、ヤバイよね。でも、ここで逃げるのは俺の性に合わないぞ!」

「ホー!?」

「グォ!?」


 自殺行為のような発言が聞こえると、クロムとフィユの顔に即座に驚愕の色が浮かぶ。その黒くピカピカした目でヒュプをジーっと見つめる。

 自分のことを心配しているモフモフの子たちを目にすると、ヒュプは自信満々な顔をして話を続ける。


「クロム、フィユ、俺のことは構うな。さっき言っただろう?いざという時、俺もできる男だ。そして、俺には物凄い切り札があるぞ!さぁ、思い切って戦おう!」


 クロムとフィユはまだ半信半疑だったが、ヒュプがそこまで言うなら、やるしかないのだ。

 お互い目を合わせて、再び戦闘の構えを取る。

 戦闘開始。






 クロムはふわりと天井まで上昇した。制空権を取って、空から俯瞰的にワイプの群れを目詰める。


「ホー!」


 と鳴き出すと、その真っ白な翼から風の刃の魔法を飛ばして数羽のワイプを切り裂いた。

 続いて両翼の前に魔法陣を展開して、鋭い氷の矢の魔法を次々とワイプの群れに撃ち込む。


 と同時に、フィユはグランドトカゲに真っ直ぐ突き進む。

 そのふわふわの拳をしっかりと握って、先頭のトカゲの頭にバーンと叩きこむ。

 パンチの衝撃によって、トカゲの体を後ろに傾けていく。


「グォ!」


 フィユは殴った勢いでそのまま足を上げてトカゲのあごに向けて蹴り上げる。


「グォ~グォっ!」


 続いて、地面を蹴り、体を捻りながらピョンと高く跳び上がり踵をトカゲに叩きこむ。そのトカゲは直ちに光となって消えていった。

 続いて、もう一匹のトカゲに向けて突進し、体を回転しながらムチのように蹴りを飛ばし付ける。


 前に言っていた。グランドトカゲとワイプは基本的にプレイヤーを優先攻撃するのである。ダメージを与えてヘイトをひいたり、回復スキルでも使わない限り、そっぽを向けてはこない。

 つまり、ヒュプが倒れさえしなければ、短時間で敵を撃破できるクロムとフィユは決して敵にターゲットにならないのだ。

 肝心なヒュプはと言うと。


 敵の攻撃を躱しながら、催眠魔法と石化魔法で反撃していたが、近づいてきた敵の数が増えるにつれて、苦戦を強いられていた。

 ヒュプは状態魔法を使いながら、後ろに下がり続ける。ついに、隅まで追いつめられてしまった。

 しかし、ヒュプの顔には緊張や固さは全く見えなかった。


「あれ、もう逃げ道がないか。じゃあ~、[スヤー]~」


 ヒュプは迫力のないスキル名を呼び出すと、立ったままに動きを止めた。

 一匹のトカゲはかなりの勢いで無防備なお腹に体当たりをしてくる。

 勿論、動けないヒュプがその攻撃を躱すのは無理だった。

 それに気付いたクロムは即座に救援して来るが、既に遅かった。

 トカゲの突進攻撃はヒュプの腹にモロに当たった。


「ホー!!!」

「グォ!?」


 フィユはクロムの鳴き声が聞こえると、目の前のトカゲを蹴り上げ、すぐ全力でヒュプのところへ駆け出す。

 モフモフの子たちに心配させたヒュプはと言うと。

 少しも痛みを感じないように、ふふふと笑いながらトカゲを挑発する。


「おおお!流石ダメージ激減だ!そんな攻撃は痛くも痒くも感じないぞ~」


 挑発されたトカゲはもう一度ヒュプの腹に突進していく。

 そして、他のトカゲとワイプも一緒にヒュプに襲い掛かる。

 あれほどの攻撃を受けて、ヒュプのHPバーは一割さえ削れていなかった。そして、一瞬で回復する。


 このチートみたいな防御力と回復力はパンダちゃんセットのお陰であった。

 [スヤー]を使って攻撃を受けても解除できない睡眠状態になって、[眠るパンダちゃん]の効果で受けるダメージを9割以上軽減する。そして、[パンダちゃんの瑞夢(ずいむ)]でHPを徐々に回復する。

 最後の[パンダちゃんのイヤリング]の効果は、睡眠状態に陥っていても戦況が見える。

 つまり、ヒュプは寝ている限り、ほぼ不死身であったのだ。

 今のヒュプは正しく[黄金の眠神(眠りのヒュプノス)]なのだ。


「ふむふむ、やっぱり睡眠状態にある俺はほとんどダメージを受けないよね。でも、体が全く動かないのはちょっと不便だね……アレ?もう諦めたの?もっと頑張ってかかってこい!」


 凄まじい勢いで攻め続けるモンスターたちとそれをニコニコしながら受け止めるヒュプ。

 そして、助けるためわざわざ戻ってきたクロムとフィユ。


「えっ!お前たち、何で戻ってきたの?俺は大丈夫だよ!ほら、HPは全然減ってないよ」

「グォ!?」


 ヒュプの天然さを、フィユは初めて見た。

 故に、ビックリして目が丸くなった。


「ホ…」


 いつもの通り溜息を吐いたクロムはその白い羽先を後ろに指す。

 ヒュプがそこを見ると、さっきまで山ほどのモンスターは既に一匹残らず始末されていた。


「おおお!二人とも強い、さぁ、残っているのはこっちだけよ。早くやってくれよ!痛くないけど気持ち悪い!」


 ヒュプの無事を確かめて、クロムとフィユは少し安堵した。

 そして、戦いに完璧な終止符を打つため、敵に向かって行く。


「ホー!」


 クロムは氷の矢をトカゲに次々に撃ち込むと、一匹残らず凍結させた。

 続いて、ふわりと舞い上がって、風の刃の魔法でワイプたちをザシュザシュと切り裂いた。


「グォ!」


 フィユは跳躍して、一匹の氷像となったトカゲにバンっと蹴りをいれて、敵の中心部にやってきた。

 続いて左足を軸にして体を竜巻のように高速回転させながら、周りの敵に連続して回し蹴りをする。


「グォーグォーグォーグォー!」


 あっという間にヒュプを包囲していたモンスターは一匹残らず始末された。

 最後の一匹が光の粒子になって消えた瞬間、ガチャ大当たりのような効果音が響く。


『モンスターラッシュのクリア、おめでとうございます。ただいま、経験値10000と賞金100000Gを贈呈いたします』

『レベルが15に上がりました』

『従魔:クロムのレベルが15に上がりました。上位モンスターに進化可能となります』

『従魔:フィユのレベルが12に上がりました』


「やったぜ!100000Gゲット!」

「ホ~」

「グォ~」


この度、自分の拙作をお読み頂き、誠にありがとうございます。

『面白い』『続きが気になる』と思われましたら、是非ブックマークの登録をお願いします。

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