第1話 大空の戦い
第一次世界大戦を舞台にした話を書いてみたいなぁと思ってその場の勢いで書いた小説です。読んでもらえると嬉しいです。
遥か昔から人類と有翼人はいがみ合い、争いが絶えなかった。空を自由に飛べる有翼人相手に人類は大いに苦戦していた。有翼人はどこからともなく現れ襲って来た。人類が弓矢などで攻撃しようとすると攻撃の届かない高高度から一方的に逃げてしまう。高高度から攻撃されると人類は防戦一方だった。かと言って人間たちが撤退しようとすると撤退先に先回りして奇襲された。圧倒的な強さを持つ有翼人に人類は辛酸を舐めさせられ続けた。
いつしか人類はあの忌々しい翼を全て堕としてやると考えるようになっていた。
それから時代が進み人類の技術力が上がって来るとそれに比例して圧倒的な強さを持っていた有翼人は少しづつ追い詰められて行った。弓矢より弾速、射程、威力のある銃火器が登場すると今まで無類の強さを誇っていた有翼人はバタバタと落とされて行った。更に銃の性能が上がり射程や命中率などが上がると落とされる有翼人の数も増えて行った。そしていつしか有翼人と人類のパワーバランスは逆転した。有翼人によって築かれ、栄えていた国家は衰退し消えて行った。
時が巡り20世紀の現在、人類と比べ立場の弱い有翼人は人間社会に上手く溶け込めず差別、迫害の対象となっていた。
男の子なら、一度は兵器を見てロマンを感じカッコイイと思ったことがあるだろう。連合王国の中でも五本の指に入る都市で生まれ育った僕もその一人だ。最初、僕は陸軍に興味を持っていた。箒の持ち手部分を銃剣に見立てて友達と突き合う遊びをやってたりもした。
でも、僕が12歳になった時に運命の出会いをした。両親と旅行に行った時に僕は飛行機と言う空飛ぶ乗り物を初めて見た。その時の衝撃は今でも忘れない。大空を飛び鳥の様に翼を広げて飛ぶ姿はとても優雅で美しかった。その時から僕は飛行機のパイロットになるのが夢となった。
それから4年後に僕の運命と、世界の在り方を大きく変えてしまう事が起こった。隣の大陸にある帝国が隣国の共和国に宣戦布告したのだ。後に世界大戦と呼ばれることになる今までに類の無い大規模な戦争の始まりだった。
戦争が始まって更に2年後、戦争の勢いは衰えるどころか激しさを増して行き主要な経済大国全てを巻き込んだ大規模なものとなっていた。僕の住む連合王国も戦争初期の段階から連合国陣営に入って戦争に参加し、帝国率いる大陸中央同盟国陣営の国々と戦っていた。18歳になった僕は創設されたばかりの組織である陸軍航空隊に志願した。
何で陸軍航空隊に志願したかと言うとパイロットになりたいと言う夢を叶える為にはこれが一番の近道というのもあったが、国が定めた徴兵法によって18歳から40歳の男性は徴兵されることになっていたのでどうせ戦争に参加させられるなら少しでも自分の夢に近いものを選びたいと思ったからだ。
そして基地で初めて飛んでいる戦闘機を見た僕はその戦闘機に一目ぼれした。小さい頃に見た飛行機とは違う。戦う為だけに作られた戦闘機に僕はロマンを感じた。飛行学校に入りパイロットに必要な技術や雑学などの基礎的な物を学び、訓練飛行隊に入ると長年の夢であった飛行機の操縦訓練を行った。初めて飛行機に乗り空を飛んだ時は大興奮して子供のように大はしゃぎだった。まぁその後に酔って地上に着くなり吐いてしまったのはいい思い出だな。大陸の戦場ではパイロットの数が不足していたらしく、一ヶ月程飛行訓練を受けただけで僕は晴れて一人前のパイロットとして戦場に駆り出されることになった。
その頃の僕は戦場がどのような所か全く理解しておらず、パイロットになれたと言う嬉しさと早く自分の戦闘機に乗って飛び回りたいと言う気持ちでいっぱいだった。でも実際の戦場がどのような所か理解しておらず浮かれていたのは僕だけでは無かった。他の人達も戦争に行くことを壮大な冒険や成人の儀式のようにとらえ、戦場に行くのを夢見る者さえいた。そして僕も含めた全員が思い知らされた。
そこは地獄であると。
僕は最初の頃どこまでの広がる青空を自由に飛び回るのを想像していた。美しい草原や森を空の上から見てみたいとも思っていた。でも、いざ戦場に来るとその夢は見事にぶち壊された。初出撃の時に見たのは度重なる砲撃や爆撃などで荒れ果てた地面。そして灰色の狭い空。いつ撃ち落とされるのか分からない恐怖と隣り合わせの戦場だった。その時僕は地獄に来てしまったんだと理解した。
戦場に来てから今日で5日が経った。体感としてはもう1ヶ月はここにいるんじゃ無いかと思えるが間違い無くまだ5日しか経っていなかった。
今朝敵重要拠点を爆撃する味方爆撃機を護衛せよとの命令が僕の所属する第47飛行隊に来た。僕がここに来てから4度目の出撃命令だった。僕は愛機のブリストルF.2ファイター戦闘機に乗り空へ舞い上がった。
離陸してから高度1500まで上昇した後、10分程飛んでいると味方のハンドレページO/400重爆撃機が見えて来た。ゴゥンゴゥンゴゥンという重低音なエンジン音を響かせながら飛ぶ重爆の姿を見た僕はその巨大さに思わず息を吞んだ。双発の重爆撃機を今回初めて見たのだがデカい。とにかくデカい。ブリストルがとても小さく見えてしまうほどだ。それに機体の前部と後部にはルイス軽機関銃を装備した銃座があり、更に後部の銃座に装備されているルイス軽機関銃は2丁をくっ付けた連装型になっている。もう僕達戦闘機隊の護衛は必要ないんじゃないかと思う程の重武装だ。
「こんだけ集まると壮観だな」
僕の乗るブリストルは複座の戦闘機だ。なので僕の後ろには相棒のディランが乗っている。ディランは周りを飛んでいる戦闘機と爆撃機を見てそう言った。今回の作戦ではハイドラページO/400重爆撃機8機とブリストル戦闘機とニューポール17戦闘機の合計20機の合計28機の航空機が集結している。流石の帝国軍の戦闘機隊もこの数の航空機相手にするのは一筋縄ではいかないだろう。
「こんなに沢山の飛行機が集まっているのは初めて見たよ・・・ん?」
重爆と並走しながら周囲を見回していると隣の重爆の前部銃座にいた銃手が僕の方に手を振って来ていた。僕もその銃手に向かって手を振り返した。
「いつもは4機か5機の編隊で飛んでいるだけだもんな」
さらに言うと本格的な空戦も今回が初めてだ。これまでは偵察活動が主だったし、前回は爆弾を搭載して突撃する味方歩兵部隊の支援攻撃だったが敵機と戦うことは無かった。
「ちゃんと敵機落とせんのか?」
「出来る限りのことはするよ。それに、もし後ろを取られてもディランが撃ち落としてくれるんでしょ?」
「任せろ、全部追い払ってやるよ」
と言いつつディランは手元の旋回機銃型のルイス軽機関銃をぺちぺちと叩きながら言った。昔はルイス一丁で飛行機を落とす事は難しいんじゃないかと思っていたが、意外にチャンスはある。そもそもわざわざ撃ち落とさなくても撃ちまくって敵をビビらせれば敵機は離れてくれるし、僕の乗っているブリストルもそうだが飛行機は結構脆くて主翼に機関銃弾を何発も食らえば簡単にへし折れてしまう。
「期待してるよ」
「にしてもいつ見てもひどい有様だな」
眼下には砲撃で穴だらけになり真っ黒に染まった大地が広がっている。ここからでは見えないが恐らく多くの兵士の死体がゴロゴロと転がっているのだろう。下は正に地獄そのものだ。僕とほぼ同じタイミングで部隊に配属されたディランもこの光景にはまだ慣れていない様だった。
「この様子だと面倒なクリスマスには帰らなくて済みそうだな」
そうディランは笑いながら皮肉を口にした。僕達が戦場に行く時と前線基地でよく聞いた「今年のクリスマスまでには帰れる」と言う噂話。まだクリスマスまで時間はあるがこの戦場の様子を見る感じだとディランの言う通りクリスマスに帰ることは出来そうに無いと思う。地上では敵も味方も何十キロも続く塹壕が掘り、巧妙に作っま塹壕線とそこに配置された機関銃、有刺鉄線などによって強固な防衛線が構築され双方攻めようとしても大量の犠牲者を出すだけで攻勢は失敗するばかり。つまり今前線は進んでもいないし後退もしていない完全なる膠着状態となっていた。お互いこの膠着状態を打破する妙案が思いつかないか、思いついても失敗し続けている状況だ。
「分からないよ?この作戦が成功すれば本当にクリスマスに帰れるかも」
今回の作戦は敵後方の主要な補給施設を爆撃して敵の補給路潰すことだそうで、もしこれが成功すればここの敵は補給不足になり弱りその隙をついて連合国軍が一斉攻勢を仕掛けて戦線を一気に押し上げる予定だそうだ。この作戦が成功すれば他の補給施設も同様に攻撃する予定らしい。
「そんな淡い希望を持っているお前に朗報だ。まぁこれも噂なんだがこの作戦、今回の前に3回行っていて最初の一回以外全部失敗してるそうだぞ」
「え?」
振り向きディランの方を向き聞こうとした時、編隊の前方を飛んでいた重爆から赤色の信号弾が打ち上げられた。あの信号弾は不時着して遭難した時などに自分の位置を教える時に使ったりするが、この場合は敵機を見つけたって意味だ。隣の重爆の方を見ると斜め前の方を指さしている。その方を見てみると8機の飛行機がこちらに向かって来ていた。あの方向から味方機が来る訳が無いのでつまりあれは全て敵機だ。
敵機の姿を見た瞬間僕とディランに緊張が走った。初めての空戦、さっきは冗談を言っていたがやっぱり初めての空戦は緊張するし何より怖い。この空戦で撃ち落とされて僕は死んでしまうんじゃないかと思ってしまう。
「やろうぜ、イーサン!」
「あぁ!」
でも僕もディランも無理やりやる気を出して戦闘準備をする。スロットルレバーを倒してエンジン出力を上げて急加速させる。敵戦闘機は緩降下しながらこっちに真正面から突っ込んで来た。いわゆるヘッドオンってやつだ。僕はそのうちの一機に狙いを定める。敵機との距離は直ぐに縮まり、僕達に向かって敵機がすごい勢いで突っ込んで来る。その迫力に僕は圧倒されそうになるが操縦桿を握り締め、照準器を覗く。因みにこの照準器、最初からあった訳じゃ無く壊れたルイス軽機関銃に付いてた対空用照準器を取り付けたやつだ。
なので本当にこの照準器の狙い通りに弾が飛んで行ってくれるのかは分からないが、元々の何もついていない状態よりはマシだと思う。
照準器に敵機が重なる。距離的にはまだ遠いが、僕は敵機が突っ込んで来る恐怖に耐え切ずトリガーを引いた。胴体上部に固定装備されたウ゛ィッカーズ機関銃一丁が火を噴いた。
「うるあぁぁぁぁぁぁ!!」
僕は無意識のうちに叫んでいた。僕の狙っていた戦闘機は反転急降下して僕の攻撃をいとも簡単に避けてしまった。でももしかしたら数発くらいは胴体かエンジンに当たったかもしれないな。僕も敵機と同じ様に機体を180度反転させてから逆宙返りをして下に逃げた敵機を追った。個人的な意見なんだけど、急降下する時は少し怖いと思ってしまう。地面が凄い勢いで迫って来るのが何とも言えない恐怖感を覚える。が、今ビビっている暇は無い。敵機を追うことに集中しないと。
逆宙返りをしながら敵機を追っていると照準器に敵機が映ったのですぐさま僕はトリガーを引いた。が、てんぱって偏差射撃することを完全に忘れていて弾は敵機の後方に弾は流れて行ってしまった。こう言う場合弾が流れることも考えて敵機より前の方を狙って撃たないといけない。頭では理解しているんだがいざ実戦になると緊張とかでそのことをとを忘れしてしまう。
ぐるりと逆宙返りを終えると敵機は味方重爆の方に向かって行こうとする。重爆を狙おうとして敵機の動きが緩慢になった。僕は敵機の後ろを取ると狙いを定めて撃った。真っ直ぐ飛んでいるだけの敵機を撃つのは僕の様な新米でも出来る。撃たれたことで敵機は慌てて右に急旋回して逃げた。でも僕の撃った弾はちゃんと当たっていた様で敵機のエンジンからは黒い煙が吹き出していた。
「やった!当たった!当たった!!ディランみたか⁉」
「あぁ見たぜ!その調子で撃ち落としちまえ!」
機体を右に急旋回させて逃げた敵機を追う。撃たれた敵機は逃げようとしている様で重爆の編隊から離れて行こうとしている様だ。
「逃げられると思うなよ⁉」
弾を当てれたことで自信を持った僕は逃げる敵機を追った。距離なんて気にせず照準器に敵機を収めて撃ちまくる。
「やばいケツに付かれた!」
そうディランの声が聞こえて来た瞬間、ガガガガッ!ガスッ!と言う嫌な音が後ろから聞こえて来た。振り向いて後ろを見てみると胴体に小さな穴がいくつも開いていた。そして報告通り後ろには敵機が居た。やばいやばいやばいやばい!敵機を追うのに集中し過ぎた!ディランはルイス軽機関銃を敵機の方に向けるとダダダダダダッ!と撃ちまくる。僕はまた撃たれる前に右に急旋回して回避行動に入る。弾丸が機体の直ぐ後ろを通過して行くギュンギュンチュンッ!と言う音が聞こえて来る。更に胴体に何発か弾が当たった。僕は不意に右旋回をやめて左旋回に切り替えた。敵機が騙されてくれないかなと期待したが敵機はぴったりと僕の後ろに付いて来ていた。
「ぬおおおおおおッ!!」
ディランは唸り声を上げながらルイス軽機関銃を乱射する。でも激しい空戦起動中にこちらを追い掛けて来る敵機に弾を当てるのは至難の業だ。敵機がビビってくれたらまだ良かったんだけど相手は離れしてるのかそれとも感覚が麻痺しているのか、弾が掠ろうが数発命中しようが気にせず僕を追いかけて来る。
「味方だ!味方の方に逃げろ!」
空になったパンマガジンを銃から外して新しいパンマガジンを叩き込みながらディランが言った。確かに味方戦闘機の居る方に逃げれば気づいた味方が助けに来てくれるかもしれない。狙いを縛られないように機体を左右に小刻みに動かしながら味方の方に逃げる。
その時ブリストルに影が差した。何だと思いチラリと上を向いてみると右翼を失って回転しながら重爆がこちらに落ちて来ていた。もう回避行動を取っても間に合わない距離だ。でも僕は反射的に操縦桿を右に倒してから手前に思いっきり引き、機体を急旋回させた。だが予想外のことに落ちて来た重爆はブリストルの真後ろを通過して行った。さらに運の良いこと・・・いや、敵にとっては運の悪いことに僕達を追い掛けて来ていた敵機は落ちて来た重爆に巻き込まれ、ばらばらになりながら一緒に落ちて行った。僕は落ちて行く敵機に向かってそっと十字を切った。それから僕は後ろを振り向き撃って来る敵機相手に奮戦してくれたディランの方を見た。
「大丈夫⁉怪我は?」
「あぁ大丈夫だ!体もルイスもピンピンしてらぁ!」
ディランの無事を確認した僕は一度深呼吸をして落ち着くと周囲の様子を確認した。戦闘機の数ではこちらが勝手いるがパイロットの練度は向こうの方が上の様で結構苦戦している。護衛対象の重爆もさっき一機落とされたしこのままでは不味い。質で勝る相手に勝つ方法はいろいろあるが、一番手っ取り早く僕でも直ぐに実現させることが出来るのは一つだけ。それは数でゴリ押す!僕は周囲を見渡し手頃な相手を探す。すると左側に敵機を追い掛ける胴体に「777」と描かれたニューポール17戦闘機の姿が見えた。僕はその後を追った。
「ディラン、後方警戒頼んだよ!」
「任せろ!」
味方機の後ろに着くと味方機に誤射しないように気を付けながら敵機の回避するあろう方向に弾をばら撒く。もし避けようとすると僕のばら撒いた弾を食らうことになるし、回避行動を取らなかったら味方のニューポール17戦闘機の攻撃を食らうことになる。そのことに敵機も気が付いた様で動きが鈍った。恐らくどうしようか迷ったのだろう。その隙を味方機は見逃さず敵機にありったけの303ブリティッシュ弾を敵機に食らわせた。撃たれた敵機はエンジンから真っ黒な黒煙を吹き出し、さらに右翼にも弾を食らい上翼が折れて吹き飛んだ。残された下翼も揚力に耐え切れず勝手にへし折れた。敵機は錐もみ状態になりながら落ちて行った。
ニューポール17戦闘機のパイロットは僕の方を見ると鋭角を上げると右手の親指を上げてサムズアップをした。何とか味方の手助けが出来たようで良かった。僕が頷いて見せると味方機は機体を左右に振ってから他の敵機の方に向かって行った。
「味方の爆撃機が敵機に攻撃されてるぞ!」
ディランが指さす方を見てみると右上を飛んでいる味方重爆が敵機2機から攻撃を受けていた。僕は敵機の方に機体を方向転換させると急上昇して重爆を攻撃している敵機の後を追った。ある程度敵機と距離を詰めていざ撃とうかとした時に重爆を攻撃していた2機の内1機が僕に気がついたようで斜め左下に急旋回して逃げて行った。逃げてくれるのならそれで良い。重爆が攻撃されるのを防げればいいんだから。
今だに味方の重爆を攻撃している敵機に狙いを定める。主翼をへし折れば簡単に撃墜させることが出来るのだが、敵機の背後から薄い主翼を狙い撃ち出来るほどの技量は生憎持ち合わせて居ないので僕は胴体を狙い充分距離を詰めてからトリガーを押した。相手は撃つことに集中する余り動きが緩慢になっていた。だから僕でも当たることが出来た。銃撃を受けた敵機はいきなりバランスを崩すとそのまま機体を借り揉みさせながら落ちて行く。どうやら運良く弾がパイロットに当たったみたいだ。初の撃墜だ!
「よっし!やったぞ!」
「後ろから来たぞ!」
振り向くとさっき逃げた奴が僕の後ろに回り込んで来ていた。慌てて僕は回避行動を取ろうとして、少し躊躇った。今避けると前に居る味方の重爆に敵の銃撃が当たってしまうんじゃないかと思ったからだ。でもこのまま飛んでいると僕の方が撃ち落とされてしまう。自分を犠牲にして味方を救う英雄譚はよく聞くがそれを本当に実行しようとは思えないし、僕がその英雄になりたくも無い。クソがッ!一体どうすればっ⁉︎
と、あれこれ考えていると後ろから銃撃音が聞こえ続けてボゴンと言う小さな爆発音が聞こえて来た。振り向くと僕を狙っていた敵機が火達磨になった状態で落ちて行ってた。一瞬ディランが撃ち落としてくれたのかと思ったがディラン本人も驚いている様子だった。じゃぁ誰が撃ち落としたんだ?と不思議に思っていると下からニューポール17戦闘機が現れた。その戦闘機の胴体には白文字で777の数字。さっき一緒の味方機だ!僕はありがとうの意味を込めて機体を左右に揺らした。味方機の方も機体を左右に揺らした。さっきの礼ってことなのだろうか・・・何処の所属か分からないよけど地上で会うことが出来たら改めてお礼を言いたいなぁ。
周囲を確認すると、数が減り不利を悟った敵機は一目散に逃げて行っていた。その光景を見て僕はふぃ〜〜っと息を吐いた。心臓が煩いくらいバクバクとなっている。
「はぁ"〜〜っ死ぬかと思ったぁ」
と言いつつディランも大きく体をのけぞらせた。僕は操縦桿を握り締めていた両手の力を抜き、座り心地最悪の座席に深く座った。
「取り敢えず、難所は超えたってことで良いのかな?」
「ど〜だろうな。帝国軍パイロットは諦めが悪いって聞くし、それにこれだけではいお終いって言うことだとは思えないだろ?」
それを聞いた瞬間絶望、と言うか・・諦めに近い感情に僕は支配された。さっきは運良く生き残れたけど何度もアレみたいな空戦の中戦って生き残れる自信が無い。
「・・・・ん?」
機体から落ちてしまうんじゃ無いかと心配に成る程体をのけぞらせていたディランが何かを見つけたのか眉間にシワを寄せた。
「何だアレ。鳥か・・・・?」
僕もディランの視線を追って上を見つめる。太陽の光が邪魔でよく見えないが黒い何かが上を飛んでいた。一瞬新しい敵の戦闘機かと思い焦ったが違う。羽が戦闘機の物とは違うからだ。まぁ言っている意味が分からないだろうから分かりやすく一言で言うとアレは鳥の羽に酷似している。更に言うと羽ばたいてもいるから確実だ。でも、鳥にしては大き過ぎる様な・・・・?
「・・・・ッ⁉︎」
僕が首を傾げながら上の撮りにらしき何かを見ているとディランは何かに気づいた様で目を見開いたと思ったら次の瞬間ルイス軽機関銃を手に取った。
「お、おい?どうした?」
「アレは鳥なんかじゃない!バリアントだッ‼︎」
その時僕は思い出した。いや、逆になんで僕は今までその存在を忘れていたんだろか?飛行機が開発されるよりずっと前から空を支配していた者達がいたじゃないか。
有翼人、その背中に生えている立派な翼で人類がこうやって飛行機に乗って飛び回るよりずっと前から青空を飛んでいた種族。
Variantとは連合王国人が忌み嫌う有翼人に対する差別用語だ。つまり、今上を飛んでいるのは鳥などでは無く有翼人ってことだ。
味方の有翼人部隊が来ると言う情報は全く聞いていない。それにウチの上層部が今回みたいな重要作戦に有翼人を参加させるとも思えない。ウチの上層部・・・・と言うか連合王国人の殆ど全ての人達が有翼人のことを嫌っているからな。今回の作戦を練る時も色々いちゃもんを付けて有翼人を参加させなかっただろう。つまりアイツらは全部帝国軍に所属する有翼人達ってことだ。それはかなり不味い。
有翼人はエシュロン隊形を組んで飛行していたが次の瞬間、羽を閉じるとこちらに向かって急降下して来た。その光景は獲物に向かって急降下する猛禽類そのものだ。
「敵直上!急降下ァ‼」
ディランはルイス軽機関銃の銃口を目一杯上に向けてから有翼人の編隊に向けて乱射する。が、戦闘機より的の小さい有翼人に弾を簡単に当てれる訳が無く乱射した弾は掠りもせずに明後日の方向に飛んで行く。
急降下して一気に距離を詰めて来た有翼人は手に持っていた機関銃を撃って来た。目の前を飛んでいた重爆は複数の有翼人による上方からの銃撃を受けて一瞬で右エンジンが炎上し、その次の瞬間には上左翼がへし折れて吹き飛んだ。続けて下翼もへし折れあれだけの巨体と重圧感を誇っていた重爆はあっさりと落ちて行った。重爆に乗っていたパイロット達の断末魔が僕の耳にも届いて来た。
機関銃を持った複数の有翼人による集中攻撃。機関銃の数だけで言えばそこら辺の戦闘機より火力があるな。などと他人事の様に考えていたが次は我が身だと言うことを思い出し戦慄する。
「下から突き上げて来るぞ!」
急降下して得た速度を上昇に使い再度したから有翼人達が攻撃して来た。僕は咄嗟に右に機体を急旋回させたその攻撃を回避する。胴体や主翼に何発か食らったが致命傷となり得る被弾は無かった。が、近くを飛んでいた味方のブリストルが下からの機関銃掃射をモロに喰らい黒煙を吐きながら落ちて行った。
何とか下からの銃撃を回避したが、休む暇も無く上から次々と有翼人達が急降下して来る。
「かかって来いバリアントどもめがぁ!全員撃ち落としてやらぁ!」
うおらぁぁぁッ‼︎と言いながらルイス軽機関銃を乱射するディラン。有翼人達の数は先程の戦闘機隊よりも多い。余り考えたくはないけど20人は確実に居る。いや、もしかしたらそれ以上かも。戦闘機より断然小回りの効く有翼人達はその機敏な機動性を生かして重爆を守ろうとする戦闘機を次々と撃ち落とす。でも戦闘機や重爆も黙っている訳ではなく、重爆は旋回機銃型のルイス軽機関銃で近づく有翼人を撃ち落とし、戦闘機はその圧倒的な速度を生かして有翼人と戦う。が、有翼人の飛行速度も馬鹿に出来ず戦闘機は最高速度を出す前に追い付かれなす術無く撃墜されてしまう。
僕はまだ生き残って居る味方重爆と並走すると上下から攻撃して来る有翼人達をディランが旋回機銃型のルイス軽機関銃で迎撃する。ブリストルに装備されている固定式のヴィッカーズ機関銃で撃ち落とそうかとも思ったが機敏に動き回ることが可能な有翼人に狙いを定めるのは不可能だ。なのでここはディランに任せるしか無い。
後ろから激しい銃撃音と叫び声が聞こえて来たので後ろを確認すると、片方のエンジンがやられて速度が落ちた重爆が有翼人の集中砲火を浴びていた。重爆の周りにを複数人の有翼人が飛び回っており重爆の銃手の必死の反撃も虚しく四方八方から機関銃の銃撃により重爆はボロボロになり、次の瞬間ボッ!っと発火し火に包まれながら落ちて行った。
「なんちゅう脆い飛行機だ・・・・あれじゃぁデカい的だぞ!」
燃えながら落ちて行く重爆を見たディランは顔を歪めながら言った。このままだと全ての重爆が撃ち落とされるかもしれない。
「そこだぁ!」
上から急降下して来ていた有翼人の一人が重爆からの銃撃を避けようと回避行動を取った。その隙をディランは見逃さず見事撃ち抜いた。隣の重爆の方も後部に装備された2連装型のルイス軽機関銃で3人撃ち落とした。気が付くと周りを有翼人に囲まれている状況だった。僕の乗るブリストルの横を有翼人が飛んでいた。ディランは別の方向の有翼人を相手にしているから気が付いていない。次の瞬間その有翼人と目が合った。僕はその目の合った相手が若い、女性だったのに驚いた。いや、見た目だけで言うと女性というより少女に見える。僕が驚いて固まっていると向こうは機関銃の銃口を何の迷いも無く向けようとして来た。僕はホルスターからウェブリーMkIVリボルバーと取り出して少女に向けて発砲した。僕と少女の発砲のタイミングはほぼ同じだった。敵の弾は胴体に当たっただけで僕にもディランにも運良く当たらなかった。逆に僕が放った455ウェブリー弾は少女の左肩に命中し、後ろに体勢を崩した。455ウェブリー弾は拳銃弾の中では威力の高い部類に入る。この状態で左腕を動かすのは厳しいだろう。それでもなお少女はこちらを睨みつけながら撃ってこようとしていた。なので僕はさらに2回トリガーを引いた。ウェブリーMkIVはダブルアクションなのでいちいちハンマーを手動で上げなくていい。2発とも少女の胴体に命中。少女は口から血を吐き地面に向けて落ちて行った。
更に反対側からも有翼人が接近して来たのでウェブリーMkIVで撃つ。さっきより距離は離れていたが運良く弾は有翼人の羽に当たった。が、多少ふらついただけでまだ飛び続けている。更に2発連続で撃ったが相手は回避行動をとったので当たらなかった。
弾切れになったのでウェブリーMkIVは中折れ式のリボルバーなので中折り曲げて排夾する。一度に自動排夾されるエジェクターが付いているので薬莢は勝手に飛び出る。本当なら装填作業は両手の方がやり易いのだが片方の手は操縦桿を握っているので片手でしなきゃいけない。ウェブリーMkIVを足に挟みスピーダーを使って素早くシリンダーに新しい弾を入れる。装填し終えると折り曲げていたのを元に戻しまた構えると近くの有翼人に向けて3発連続で発砲し撃ち落とした。
隣の重爆の方も銃手が懸命に旋回機銃型のルイス軽機関銃で迎撃する。有翼人も全員がそのルイス軽機関銃の弾幕を避けれる訳では無く、何人かは303ブリティッシュ弾を食らって落ちて行く。455ウェブリー弾も充分強力な弾だが303ブリティッシュ弾はそれよりも更に強力な弾だ。人間だろうが有翼人だろうが胴体に1発食らえば即死は免れても致命傷は間違い無しだ。
だが撃たれて落ちて行く有翼人の一人が重爆の左翼にぶつかった。主翼はその衝撃に耐え切れずくの字の折れ曲がりそして上下翼共に後方に吹き飛んだ。僕は回転しながら落ちて行く重爆に巻き込まれない様に急いで距離を取った。これで落とされた重爆は4機目。残る重爆も後4機だ。
「4時の方向!重爆が襲われてるぞ!」
言われた通り右後ろを確認すると重爆が複数人の有翼人に囲まれていた。僕は機体を反転させてその重爆の元へ急行する。これ以上落とされるたら作戦の続行は不可能になる!機体を加速させ有翼人の追い付けない速度で接近する。そしてすれ違い様に機首に装備されたヴィッカーズ機関銃を乱射し重爆の周りに飛んでいた有翼人2人を撃ち落とすことに成功した。更に去り際にディランがルイス軽機関銃で更に1人撃ち落とした。一度すれ違った後は速度を失わない為に逆宙返りで反転し再度攻撃を仕掛ける。が、次はそう何度もこの一撃離脱戦法が通用する訳もなく有翼人達は加速して突っ込んで来るブリストルに向けて集中攻撃して来た。
「うわっ⁉︎」
流石にこのまま突っ込んだらタダで済まないのは目に見えているので僕は銃撃を回避する為に機体を右斜め下に滑らせた。左翼と胴体に何発か食らったが問題は無さそうだ。緩降下しながら一度離れる。これじゃぁ迂闊に近づくこともできないな。どうしようかと悩んでいる内に味方の重爆は片方のエンジンがやられて速度と高度をどんどん落として行く。大量の爆弾と人間を積んで何とか飛んでいる状態の重爆は片方のエンジンが止まってしまうと出力不足で落ちてしまう。重爆は爆弾を投棄して機体を軽くしようとしたが有翼人からの攻撃によりもう片方のエンジンも停止してしまい重爆は緩やかに降下して行った。残りは3機。もう作戦は失敗と言ってもいい位の被害を重爆隊は受けている。
重爆隊もそうだが重爆を護衛する筈の戦闘機隊も有翼人の攻撃により次々と落とされ、自分を守るので精一杯だ。僕の方も同じ様な状況で、近づいて来る有翼人に対してウェブリーMkIVで撃ち落とす。が、リボルバーなんかより火力も射程も弾数もあり連射も出来る機関銃の相手は結構厳しい。僕の乗るブリストルはもうボロボロだ。そろそろ主翼が折れてしまうかもしれない。
斜め後ろから有翼人がこっちに緩降下しながら機関銃を撃って来た。ディランは直ぐ様ルイス軽機関銃をその有翼人に向けて撃った。
「グッ!」
「ディラン⁉」
有翼人を撃ち落とすことには成功したが有翼人が放った数十発の機関銃弾はブリストルの胴体に次々と当たりディランにも弾が当たってしまった様で苦しそうな声を上げた。振り返るとディランはうずくまっていた。
「おい!大丈夫か⁉おい‼」
僕が必死に呼びかけるとうずくまっていたディランはよろよろと立ち上がった。
「心配し過ぎだ。当たってない。掠っただけだ」
腹の右腕を左手で押さえながらディランは言った。本人は掠ったと言っていたが手で押さえている部分の服が赤く染まっていた。
「本当に大丈夫か?無理してないか?」
「大丈夫だ!お母んかよお前は」
心配ではあるが本人が大丈夫だと言ってるしこれ以上聞いても同じ答えしか返って来ないだろうから聞くのはやめて戦闘に集中しよう。
「おいおい・・・新手の有翼人かよ⁉」
傷口を懐から出した包帯で縛ってルイス軽機関銃に新しいパンマガジンを叩き込んでいたディランは左側の方を見ながら言った。僕もその方を見てみるとこちらに真左から急速接近して来る影が見えた。戦闘機と比べて小さい人型のそれは有翼人だとすぐに分かった。今の状態でも壊滅的な被害を受けているのにこれ以上増援が来られるのは非常に不味い。
「ちょっと待った!」
ディランが増援部隊にルイス軽機関銃を向けて撃とうとするのを止めた僕は偵察任務の時とかに使う様にと持ち込んでいた双眼鏡を取り出すとその増援部隊を改めて見た。人数は10人で、飛んでいる有翼人の背中辺りに付けられた敵味方識別用のペナントにはが我が連合王国の国旗が描かれていた。つまりアレは・・・・。
「味方だ!アレは味方だよ!」
「はぁ⁉︎味方の有翼人が来たってのか?一体何処から?」
僕達が驚いている間にも味方の有翼人部隊はこちらに急速接近して来る。そして、戦闘を飛んでいた奴が手に持っていたライフルを構え発砲した。すると僕の上を飛んでいた有翼人が呻き声を上げると落ちて行った。味方有翼人達は散開すると今だに新たな敵が来たことに気がついて居ない敵有翼人に急接近しサブマシンガンやセミオートライフルやライフルなどで攻撃して行く。完全に死角から不意を突かれるように撃たれた敵有翼人はそのまま落ちて行く。あっと言う間に味方重爆の周りを飛び回っていた敵有翼人を蹴散らした。
重たい機関銃を持っている敵有翼人と比べ味方の有翼人はサブマシンガンやセミオートライフルなどの軽く取り回しのし易い銃を使っているので有翼人同士の戦いは味方の有翼人が有利そうに見える。
敵有翼人の1人が僕の近くに逃げて来た。僕はウェブリーMkIVで撃とうとしたがそれよりも先にライフル(近くで見てやっと分かったがアレはリーエンフィールド小銃だ)を持った味方有翼人が敵有翼人の左胸を撃ち抜いた。撃たれた敵有翼人は飛んでいた勢いのまま僕の乗っていたブリストルの胴体にぶつかってから落ちて行った。ぶつかったところを見ると、赤い血が付いていた。
敵有翼人は重爆や戦闘機を攻撃するのをやめて味方の有翼人と戦い始めた。数では敵も味方も同じ位の数だったが味方有翼人部隊は素早く動き周り敵を翻弄させながら各個撃破して行く。体勢を立て直した味方戦闘機隊も戦闘に加わり今まで僕達を圧倒していた敵有翼人部隊は逆に追い詰められていた。僕もブリストルを操って敵有翼人達に攻撃する。例え攻撃が当たらなくても敵の注意がこちらに向けば味方の有翼人達が倒し易くなる。
ディランもルイス軽機関銃を銃身が焼き付くんじゃないかと思うくらい乱射する。良い感じに敵有翼人部隊を追い詰めていたが、前方からアルバトロス D.IIIの編隊がやって来た。先程の戦闘で早々に隊長機がやられたこともあり、更に敵戦闘機の増援が合わさり重爆隊の戦意は喪失したようで次々と爆弾を投棄して右に左に旋回して逃げて行く。護衛対象の重爆が逃げるのなら戦闘機隊もそれに従うしかない。それに敵の戦闘機は優秀で数こそ同じくらいだがもしこのまま戦ったら全滅するのは目に見えている。この場合逃げるのは正解だ。スロットル全開で我先にと戦闘機隊も逃げる。
「こっち来んなぁ!」
追いかけて来るアルバトロス D.IIIにディランがルイス軽機関銃に残った弾をばら撒く様に撃ちまくる。弾は当たらなかったがアルバトロス B.IIIは僕達が投げて行くのを確認すると深追いをせずにそのまま帰って行ってくれた。敵有翼人も味方有翼人に銃撃を加えつつ撤退して行く。
戦闘が終わったのが分かり緊張の糸が切れた僕にどっと疲れがやって来た。時計を確認してみると空戦していた時間はたった10分。約10分の空戦で僕はヘトヘトになっていた。尋常じゃない程の手汗で手袋の内側はグチョグチョになってしまっている。下着の方も同じ様な状態だ。戦闘により興奮状態になり荒くなっていた息を何度か深呼吸して落ち着かせる。頭に上っていた血が下に落ち少し落ち着いた僕はそう言えばあの助けに来てくれた有翼人達の姿が無いことに気がついた。周囲を見渡すがボロボロになった飛行機達しか周りには居なかった。
「あれ?味方の有翼人は?」
「戦闘が終わると同時にどっか行っちまったよ。全く、まさかバリアントどもに助けらるとわねぇ」
そう言いながら包帯を雑に巻いていた右腕を抑えているのを見て僕はディランが負傷していた事を思い出した。
「怪我の方は大丈夫?」
「あぁ。弾は掠っただけだからな。血は派手に出てるがその割に傷は酷くなさそうだ」
巻かれた包帯は既に真っ赤に染まっており見た感じだと傷はとても酷そうに見えるが、別にやせ我慢をしている訳ではなさそうだ。
「まぁ帰ったら取り合えずその傷見て貰った方がいいよ」
腕に銃弾が当たっただけでも運が悪ければ死ぬ時がある。例えば銃弾が腕の上腕動脈に当たれば失血死してしまう。
「言われなくてもこの傷をそのままにしとくつもりはねぇよ」
「そう言えばさっきの噂話の理由、分かった気がする」
ディランが戦闘前に話していたこの作戦より前に同じ様な作戦を3回実行して最初の1回以外全て失敗していると言う噂はどうやら本当の様だな。今の戦闘でその失敗し続けている理由がよく分かった。
改めて周りを飛ぶ飛行機を見る。無事な機体は一機もおらず8機いた重爆は3機しか残っていないし、一機は集中攻撃を受けて飛んでいるのがやっとの状態だ。初めての空戦を体験し、そしてこの惨状を見て改めてこの戦争の恐ろしさと厳しさを身をもって理解した。
「この戦争を生き残れるのは無理かもなぁ・・・・」
思わず零した僕の弱音はエンジン音にかき消されて幸いにも後ろのディランに聞こえる事はなかった。
どうだったでしょうか?戦闘シーンなどはまだまだ上手く無いですが少しでも上手く書けるように頑張って行きます。
次回は第2の主人公と言える有翼人キャラが登場したりするのでお楽しみに。
ご感想お待ちしております。