第3話 聖女の企み
大変遅くなりました!
すみません
「お初にお目にかかる、聖女よ。私は魔王軍暗黒参謀を務めているディードリッヒと申す。以後お見知り置きを。」
違いました。
大仰に手を前に添えお辞儀をする宰相。
そう簡単に魔王には会えないようだ。当たり前か。
「聖女よ、お前をここへと連れてきたのは他でもない。我々魔王軍のために働いてもらうためだ。」
「言っとくがお前に拒否権はねぇーぜ!嫌と言うなら洗脳でもなんでも…」
「いいよ」
「って、は?」
「魔王軍に協力するよ」
聖女のありえない申し出に魔王軍全員ぽかーんと間抜けな顔を晒している。
「貴女大丈夫?自暴自棄になってない?」
「無理しなくていいのよ、嫌なら嫌って言わなきゃ」
「お前聖女だろ、そんなんでいいのか!」
「いや、無理矢理従わせるって言ったのそっちだよね?!」
あまりの四天王達の心配の声に、ありえなくね?と唖然とツッコミを入れた。
「正直私怒ってるのよ。貴重な休日だったのに、映画を見るはずだったのにぃ!人の都合無視して勝手に召喚するって、ありえないだろっ!!」
ものすごい聖女の剣幕に四天王達は怯んだ。
まだ怒りが収まらないのか激白は続く。
「だいたい、この世界の人間がどうなろうが知ったこっちゃないのよ!知り合いがいるわけじゃなし。自分の世界の事は、自分たちで解決するのが筋ってもんだろ!異世界人を頼るんじゃねーよ!!」
かなり最もな話である。
「ククク、奴等には私を召喚した事を後悔させてやるわっ!フハハハハハ」
「…ねぇアレ、聖女よね?…」
「…人違いって事はないの?…」
「…いや〜、あそこにいたのはアイツだけだったし。神官の奴も聖女って言ってたし…」
「…実は召喚失敗してたんじゃねぇか?…」
「…一見すると聖女に見えんが、力は確かに感じるぞ…」
「おーいお前ら、聞こえてんぞー…!」
遠巻きにヒソヒソと聖女を怪しむ魔王軍の面々。分からなくはない。
とりあえず利害は一致しているので聖女は魔王軍に入ることになった。
「あーそういえば私まだ自己紹介してなかったね。初めまして、不本意だけど聖女として召喚された春日部明日香よ、アスカでいいわ。今後ともよろしく!」
「で、聖女サマは勇者どもを後悔させるって具体的にどうすんだよ」
獣魔将軍が気だるそうに聞く。明らかに聖女なんかに何ができるんだ?!と侮っているようだ。
「ふっふっふー、もちろん考えているよぉ。聖女という立場を最大限に利用して奴等に嫌がらせをしてやるのさ!」
「聖女の立場?」
「その通り!向こうは私が拉致られたと思ってるわけだ、当然助けに来るよね世界救うために聖女を召喚したわけだし。で、私が目の前に現れる。魔王軍に操られた聖女という設定でね!」
「は?どう言うことだ!?」
ドヤ顔でない胸を反らし、心底意味がわからんといった顔をしている獣魔将軍にビシッと指を突きつけた。
「お前自分から魔王軍に協力するんだろうが、操られるってどういうことだ。」
「私が魔王軍側についたと分かったら敵とみなされて攻撃してくるでしょ。」
「うー、聖女だからといっても不利益になるのであれば可能性はあるな」
「だから!操られてますって演出をすれば元に戻せるかもしれないと攻撃出来なくなるわけよ!」
「ふーん、なるほど一理あるな」
「そしてそこにつけ込んでこちらはバンバン攻撃を仕掛ける!とこういう作戦よ!」
「ほーぅ、クククおもしれぇじゃねぇか!慌てふためく勇者どもの顔が目に浮かぶぜ!」
「攻撃するそぶりを見せたら私を前に出して盾にすればいいし」
「いやお前万が一もあるのに、サラッと言うな。だが、なかなか悪知恵が働くじゃねぇか聖女さんよ」
「いえいえお代官様程ではありませんよ」
「何だよオダイカンって」
お互いにニヤニヤと悪い顔をして話し合ってる中他の連中はと言うと
「やけにあの二人仲が良いじゃない?」
「だったら、聖女の面倒は獣魔将軍にしてもらいましょ。」
「異議なし!!」
「そうですね、それがいいでしょう。」
あずかり知らぬところで厄介ごとを押し付けられていた。
「へへへ、見てろよ次で勇者どもを仕留めてやるぜ!!!」
意気込みも十分に拳を打ち鳴らす。見るからに獣魔将軍が切込隊長みたいなポジションに見える。
ふと思った疑問を口にした。
「ねえ、獣魔将軍が最初に勇者たちと戦うんだよね?それで倒されたらやっぱり『奴は四天王の中でも最弱よ!!』とか言っちゃうの?」
「はぁ!?誰が最弱だ!俺様が一番強いに決まってんだろうが!そんなこと言うわけないだろ、なぁ!」
他の四天王達を見るも皆視線を一斉にそらした。
「…おい」
「えぇ〜やっぱりハッタリは必要じゃない?」
「そうそう、そんな深い意味はないわ」
「ハハ、気にすんなって」
「気にするわっ!!」
何気ない疑問が魔王軍を崩壊の危機にまで発展させるとは、さすが聖女である。
「ああ、うん…。なんか悪いことした。ゴメン」
「やめろー謝んじゃねー!」
気を使ったつもりが余計に気まずくなるという結果に終わった。
何とか話題を変えようともう一つ気になっている事を口にした。
「そうだ、魔王様ってやっぱりいらっしゃるんですよね?ご挨拶することは可能ですか?」
魔王軍と言うからには当然その頂点に立つ人物『魔王』は存在するはずである。
普段使い慣れない敬語を駆使して御目通りができないか試みる。
「悪いが、魔王様とは今はお会い出来ない。」
暗黒参謀が魔王との謁見を拒む。
当然といえば当然だろう。今日来たばかりの人間がいきなり魔王に御目通りが叶うわけがないのだ。
ましてや味方になったとはいえ聖女なのである。それが最もたる理由であろう。
「うーん、やっぱ無理か。でももし御目通りが叶うようだったら教えてください。ココでお世話になるのだから一応ご挨拶はしたいから。」
「…なるべく善処しよう」
(だけど『今は』ってどう言う意味かな?)
詳しい作戦の内容などは明日話し合うという事になり今日のところは解散となった。
聖女は客室に案内されよほど疲れていたのかそのまま眠る事にした。
はてさて、これから聖女にはどのような運命が待ち構えているのか。神のみぞ知る…いやわからないかも
読んでいただきありがとうございます(*^▽^*)
投稿が遅くなって申し訳ないです。
ちょっと立て込んじゃいまして(汗)
次は早く投稿できるよう頑張ります!
今後ともよろしくお願いします