第2話 魔王軍四天王
遅くてすみません
ようやく第2話です
謎ネコが降り立った中庭は、手入れの行き届いたキレイな庭園だった。
バラの生垣が並んでいる。アリスみたいだなと思った。
庭をぼーっと眺めていると、メイドらしき人物がこちらに近ずいてきた。
人、なのだろうか。外見は昆虫のようだ、全体の輪郭はアリっぽいが口や身体つきは人間に近い。
「ようこそおいで下さいました、聖女様。こちらへどうぞ」
スカートの裾をつまんで軽く会釈をして挨拶をすると、一呼吸置いて踵を返し歩き始めた。
慌ててその後を付いていく聖女。城の中へと入っていく。
中は質素だが清潔感があり好感が持てる。たまに他のアリメイドさんとすれ違ったりした。まさに働きアリだ。
こまめに掃除してるんだろうなぁと、心の中でお疲れさまと呟いてみる。
そうこうしていると目的地に着いたようだ。大きな両開きの扉の前にいる。
その両脇には鎧を着込んだアリの兵士が立っている。メイドが片方の兵士に近づき何事か話す。すると、兵士二人は扉の取っ手に手をかけ手前に引き開けていく。ゴゴンと大きな音を立て扉が開ききる。
扉の中は大きな広間になっていた、天井は高く広さはホテルとか旅館の大宴会場くらいだろうか。
だがそんな事はどうでもいいくらいに中の装飾が異様だった。中庭とか長い廊下などは明るく綺麗だったのだが、この部屋は暗くオドロオドロシイ雰囲気なのだ。窓がないのか、カーテンなどで完全に隠しているのか外の光は一切なく、ロウソクの光のみで異様な陰影を醸し出している。調度品もよくわからない翼が生えた悪魔みたいな彫刻やゴツゴツした岩の柱が立っている。
何だろうか、無理やり悪の組織を演出しているようなそんな不自然さがあった。
「聖女様をお連れいたしました。」
メイドは一礼すると部屋を出て行った。
部屋の中心あたりにはこの部屋に負けず劣らぬ派手な格好をした五人の人物が立っていた。
「よくきたな聖女よ、お前を歓迎するぜ!」
「は、はあ。どうも…って聖女?え?」
狼の人がニヤニヤ笑いながら話しかける。
(え、何、今あの狼の人私のこと聖女って言った?いやさっきのメイドさんも聖女様って言ってたけど!ええ!この歳で聖女で異世界召喚!?ないわ〜〜…若い子ならまだしも私もう三十代よ、四捨五入して四十よ!しかもオタクだよ!!ホントないわ〜)
「何だ、あまりの恐怖に声も出ないか?」
自分の年齢と今の現状を考えて打ち拉がれているのを怯えて震えていると勘違いしたらしい。
「え?ああすみません、今の現状に絶望してました。ところでええっと、どちら様でしょうか?」
「んん?あ、ああ。フン、聞いて驚け。俺様は、魔王軍四天王の一人獣魔将軍ルーフ様だ!!」
意外と冷静な返事が返ってきて一瞬呆けたが、ババーンと擬音が入りそうな勢いで胸をそらして狼の人が名乗った。毛は青銀でてっぺんの辺りに黒いメッシュが入っている。素早さ重視なのかゴテゴテした鎧ではなく裾の長いコートっぽい服に胸当て籠手に脛当てといった出で立ちだ。
「同じく、四天王の一人幻魔将軍イフニィよ」
パチンとウインクして名乗ったのは、背が高くかなりのイケメンだ。言動からしてオネェだろうか。
髪の色は見事な銀色でゆるくウエーブがかかっている。抜けるような白い肌で耳が少し尖っている。
定番のエルフだろうか?などと思いながら不躾に見ていると急に眉間にシワをよせて怒り出した。
「ちょっとアンタ、いくら私が醜いからってジロジロ見ないでくれる!」
「え、はぁ?醜い、誰が」
「私はオークなのにこんなユルフワヘアーで目は切れ長、鼻は高く唇は薄い。手足はすらっと細長くて筋肉も適度にしかついてない。もぅ、醜いったらないわ」
「え!オーク?お兄さんオークなのっ!?」
「何よ!私がオークに見えないって言うの!失礼しちゃうわ!!」
(ぜんっぜん見えません!)
プイッと頰を膨らませそっぽを向く幻魔将軍。ちょっとかわいいと思ったのはナイショだ。
一般的なオークの外見はやはり『ブタ』だろうか。
確かに幻魔将軍とオークの外見は正反対に違う。価値観の違いと言うのは凄いものだ。
だがエロラノベによくある聖女凌辱はなさそうなので一安心である。
むしろこの幻魔将軍相手では聖女が凌辱だな。もちろんしません。
「あら、まだ気にしているの?ふふふ十分ステキなのに。初めまして聖女さん、私は四天王妖魔将軍マージよ」
これもまたすごい美女だ。赤いストレートの髪が腰までありサラサラなびいている。
肩がガッパリ開いているこれまた真っ赤なドレス、俗に言うマーメードドレスを着こなし、まさにバン!キュッ!バン!な感じだ。ウラヤマケシカラン!
「オイラは四天王豪魔将軍ドゥディだ!」
背の低い子供のような出で立ちだ。飛行帽のような兜をかぶり皮鎧を付けている。
背中には背丈よりもデカイハンマーを背負っている。
ホビットみたいな種族だろうか?
「先に言っとくが、オイラはドワーフだからな!間違えんなよ!」
「え!ドワ…えっと、あの、それは…子供ぉだから?それとも…オシャレ?」
「るっせーーーっ!生えてこねぇーんだよ!!!悪いかっ!!どたまカチ割んぞっ!!!」
「ハイ!すんませんでした!!!」
90度の角度で謝罪をした。
彼、豪魔将軍にはドワーフ特有のモッサリ髭がなかった。だからなのか、見た目はかなり子供だった。
色々な意味で一癖も二癖もある魔王軍四天王である。
そしてもう一人いる。そう、魔王サイドには五人いるのだ。
四天王の他にもう一人と言うことは…
「お初にお目にかかる、聖女よ」
最後の一人、漆黒のローブに身を包み大きなクリスタルのついた錫杖のような杖を掲げている。
左目にはモノクルをつけていた。
明らかに他の四人とは違う静かな威圧感を醸し出している。
(この人が魔王だろうか…?)
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