海と少女
月の光だけでも十分に底が見えるほどきれいな海。星空が反射して海底の砂と戯れる。
波は白い線を先に垂らして、穏やかに行ったり来たりとしている。とても穏やかな海。
夜空が二つになったと思うようなその場所に、少女が一人ぽつんと立ち尽くす。
やがて少女の足元に波が来て、少女に遊ぼうよ、と触っていく。少女はそれにこたえるように、ガラスの靴を脱いで海へと歩いた。
海は歓迎するように少女の足へと押し寄せ、そして連れて行こうと引き返していく。
少女は海と仲良くなれた気がして、どんどんと進んでいった。海も少女を拒むことなく、どんどん受け入れた。
少女は腰元まで海へ浸かり、徐々に体が浮き始めていた。波は優しく少女を揺らして、少女はその揺れに心地よさを覚えはじめていた。
星空を取り込んでいるような海は、少女の目から見てもとても綺麗だった。
波は少女を揺らしながら、さらに海へと連れて行く。少女は身を任せて波の通りに進む。
浮いている少女は海の底へと身を向けた。そこには細かく敷き詰められている砂があった。
海は少女を海底へと引き込んでいった。少女は海底へと進んでいった。
海底に着いた少女は、ゆっくりと砂に足をつけた。砂は少女の足裏に吸い付くように少女を受け入れた。
心地よい波に、透き通った海、見上げれば綺麗な夜空、下には星を集めたような砂。
少女は満足した。波に身を任せ、海に従い、夜空を見上げ、砂に足をつけながらどこへともなく進んでいく。
少女が元居た場所には、ガラスの靴があるだけになった。