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第7話 盗賊の少女 4

「おい。お前、どこのもんだ?」


無事転職も終わってテーブルで騒いでいたとき、後ろから誰かに話しかけられた。振り返るとそこには大きい猛者みたいなおじさんが立っていた。

僕はこんな人に絡まれる覚えはなかった。少しうるさいかなとは思ったが、別のテーブルの酔っぱらいよりはいくぶんかましだと思ってる。するとその男がさらに口を開いた。


「お前、バイトなんだってな。俺もだ。よろしくな」


おい! お前そんな強そうななりをしててバイトかよ。ビクビクしてた僕が何だか恥ずかしいじゃないか。

話を聞くとどうやらここにたむろっているのは基礎職か戦わない初級職の人たちばかりらしい。戦う人は常に何かのクエストに出ていたり、それぞれ自分の宿で作戦会議をしてたりするらしいから、こんなところに昼間から居ることはないらしい。

バイトも思ったより珍しくなくこのギルドに今聞いただけでも4人はいた。


「俺の名前はクーロンだ。よろしく」


ちょっとダサいと思ったのは僕だけだろうか。まあこの世界のネーミングセンスはダサいって先入観を植え付けられてるしな。


「まあ、見た通り戦いには出てないが、このまち一番の情報家だと自負している。聞きたいことがあったら俺のところに来な。色々な情報をおしえてやるから」


そう言うとごつい男は自分がもといたテーブルに戻っていった。


「こ、恐かった。襲われるかと思った」


「君は人を見る目が無いですね。私は一目で優しい人だと分かりましたよ」


「え? マジで?」


「まあ、昔からここにいるので知ってる人なんですけどね」


「なんだよ。それ」


俺たちは3人で笑いあっていると、突然ギルドの扉が勢いよく空いたと思うと一人の男が入ってきた。その男はどこかで見たような。いや、最近というかついさっきみた、あの盗賊団のリーダーだ。


「ここに、俺の連れは見なかったか?」


その男はカウンターの女性に詰め寄った。息は荒々しく、まるで闘牛のようだった。


「ど、どのようなお方でしょうか?」


「小さい盗賊職の女の子だ。見なかったか?」


「い、いえ見てませんね。職業の見分けは装備くらいでしか出来ませんので」


そうお姉さんが言うと、男はそうか、と頷いて外に出ていった。賑やかだったギルドの空間が一気に闇に落とされたような瞬間だった。

しかし、あの男はモルを探しているのか。なんとか顔を向けなかったから僕がここにいるのは気づかなかったみたいだ。さて、どうしようか。

こっちには最弱のステータスの男と、300程度の少女、戦えないチートキャラか、勝ち目なくね?いや、待てよあいつのステータスさえ思いだせれば、もしかしたら。

ん? あ、そうだ、あの紙に書いてあるんじゃないのか? そう思いポケットから紙を取り出す。


国語 162

数学 124

英語 32

社会 153

理科 132


お? 英語が低いな。英語は攻撃力、防御力共に必要なステータスだから上手く立ち回ればいけるかな?


「モル。あの親分レベルはどれくらいか言ってたか?」


「ええと。詳しくはわかりませんが大体30くらいだったと思います」


30か。ということはレベルボーナスは1.3倍。ステータスの計算をしてみようか。


HP 1567

SP 370

攻撃 374

防御 451

速さ 252

魔力 371


か。うん。勝てない(確信)。たしか僕のステータスが


<セツナ>のステータス

HP 328

SP 51

攻撃 120

防御 89

速さ 74

魔力 64


なるほど。絶対勝てない。あ、ついでにモルのステータスの確認もしとこうか。


国語 93

数学 23

英語 39

社会 123

理科 46

合計 324


「モル、レベルは?」


「ええと10です」


ふむ。10かじゃあ1.1倍だな。


<モル>のステータス

HP 712

SP 185

攻撃 118

防御 280

速さ 145

魔力 127


なるほど。


「もる。ちなみになんのスキル持ってる?」


「え? 策敵と、鍵開け、あとはコピーです」


「コピー? なんだそれ」


「正式名称は、擬態化による油断消しのための能力コピー。ってやつなんですけど。自分のSPすべてと引き換えに一日の間、一人の一つのステータスをコピーすることができます」


「え? 上限なく?」


「上限があるのかは知りませんが、前知り合った強力な人をコピーしたら500までは行けました」


500か。メイラは


<メイラ>のステータス

HP 5144

SP 1012

攻撃 1420

防御 1723

速さ 1100

魔力 999


だからな。いけるかな?

もしいけるとしたらめいらの攻撃をコピーしてもらって、対抗すればいいのか。いや、そもそもコピーって強すぎるだろ。苦手な分野の1つを補えるってことだろ。やばすぎやしませんかね。


「よし、じゃあもし、あの盗賊たちに襲われたら、モルがメイラの攻撃をコピーしてくれ。」


「分かりました」


モルはそう言うとかっこよくポーズをとって見せた。ダサい。


取り合えず何かクエストを受けてみようと思い、クエスト依頼を見に行った。クエストには古龍の討伐や、配達の仕事があったが、どれも自分達の実力に合ってない。それもそのはずこの中級都市では強い旅人などほとんどおらず、初心者ばかりだからだ。そのため簡単なクエストは直ぐに消費される。


「クエストはいいのが入るまで気長に待ちましょう」


隣でモルがアイスを舐めながら話しかけてくる。バニラのいい香りだ。


「そうだな。仕方ないし。というかアイス買ったんだな」


「はい。暑かったので。お金もそこそこありますし」


そういってモルは小さな袋を取り出す。中を見ると4000Gが入っていた。


「あ。結構持ってるな」


「まあ盗賊にいると使うことがありませんでしたしね」


これで防具とかを揃えられないだろうか。いや、しかしこれはモルの金だ。僕たちが使っていいものではない。でも、しかし……うーん。

突然ギルドの扉が勢いよく空いた。するとあの盗賊のリーダーが立っていた。そして一言


「こいつだ。こいつを見てないか?」


そう言っている盗賊の頭の手には何やら似顔絵のようなものが握られている。その似顔絵をみると紛れもなくモルの顔が描かれていた。

これは後で聞いた話だが、絵をきれいにかくスキルなんかもあるらしい。それを利用したのだろう。


「そんなやつ見たことねえよ」


クーロンが前に出て答える。ごつい二2人だ。迫力が半端ない。


「本当だろうな? 仕方ないな」


そう言うと盗賊の頭は手を広げると、何やら呟き始めた。

次の瞬間、クーロンの顔色がどんどん悪くなってゆく。


「このスキルはな、嘘をついているやつを下痢にする能力だ。使うことはほとんどないと思ってたが。まさかこんなことに使うとはな」


そう言うと盗賊の頭はクーロンの頭をわしづかみにすると、剣をクーロンの首まで持っていった。


「きけ!モルよ! こいつが殺されたくなければ直ぐに出てこい! さあ! 早くしろ! 」


盗賊の頭は剣をより強く、くーろんの首に当てた。クーロンの首からは少しずつ血が流れていくのが見えた。


「おい! そいつを放せ! 私ならここだ!」


次の瞬間、モルが勢いよく立ち上がった。もるの体は震えていた。しかしそれ以上に何か恐ろしい気配を感じた。


「ほう。出てくるか。 では早くこっちに戻って夕食の支度をしてくれ」


「ダメだ! モルはもう僕たちの仲間なんだ。盗賊団に入れさせやしない!」


僕は勢い余って立ち上がった。後悔はしてる。なんで立ち上がってしまったんだろうと。使えなくなればバッサリ切り捨てる。そうして効率よくクリアしていくものなんじゃないのか? ここで無駄なイベントを追加する意味はあったのだろうか。

しかし、立ち上がらなければ今以上に後悔する。後悔の度合いなんて計れないが、僕はこっちが正しい後悔だと思った。だから立ち上がった。


「俺とやるって言うのか。いいだろう」


そう言うと盗賊の頭は何かまた呪文を唱え始めた。次の瞬間僕とモル、メイラは光に包まれた。そして気がつくと、あの盗賊に出会った森に着いていた。


「さあ。 あのときの決着をつけようじゃないか。今度は逃げさせはせんぞ」


そう言うと盗賊の仲間たちは何やら呟き始めた。すると生えていた木々が変形していくと思うと、盗賊団と僕達を囲んだ。完全に逃げ道を無くされたのだ。


「さあ、始めようか」






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