第6話 盗賊の少女 3
ギルドの中には何だか闘いの猛者みたいな人たちがたくさんいた。何だか恐ろしい感じがした。
「あ、そういえば先にいっておきますけど、町の中では相手のステータスを見ることは出来ません。直接聞くか、覗くしかないですね」
そう言うとモルはカウンターの方へ向かっていった。
「ここで職業を選ぶことができます。私は向こうの方で待っているので詳しいことはこちらの受付の人に聞いてください」
そう言うとモルは遠くに見える丸型のテーブルがある所に座った。それを眺めているとカウンターのお姉さんが話しかけてきた。
「それでは職業について説明しますね。ここで就ける職業は、初級職、中級職、上級職です。」
「まずは初級職。これは初期職業で大体の人が好きな職業になることができます。」
「次に中級職。 これは強くなった初級職、または頭がいい人がなることができる職業です。まあ、頭がいい人は大体これを選びますね」
「最後に上級職。これは初級職or中級職の何か必要なものを極めていて、さらにレベルが高く、頭がいい人がなることができる職業です。このような中級都市ではなかなか見ることがありません。大体上級都市か、王都、あとは兵士とかで見ることができる職業でしょうね。とりあえずカタログを渡しときますので見てみてください」
「ちなみに職業を変えるとレベルが0になり、覚えていたスキルを忘れます。ただし、初級職→中級職、中級職→上級職の場合のみスキルをそのまま、受け継ぐことができます。ですから敢えて頭がよくても初級職から始めるのはありかもしれませんね」
そう言うとカウンターのお姉さんは奥からカタログを取り出してきた。そして、にっこりと笑うとさっきモルが座りにいったテーブルに案内した。
僕はモルの隣に座った。何がいいかアドバイスを聞こうと思ったからだ。
そして、僕はそのカタログを開いた。
「何につけばいいかな?」
僕がモルに聞くとモルはそっけなく答える。
「なんでもいいんじゃないですかね。まあなるべくパーティを組む人と職業が被らない方がいいと思いますけど」
カタログを見ると様々な職業が書いてある。僕はそれを見た。何にしようか悩むところだ。
<初級職>
『旅人』 五教科合計250以上
『戦士』 数学+理科が150以上
『僧侶』 国語+社会が150以上
『魔法使い』英語を除く合計が220以上
『生産者』理科+社会が100以上
『盗賊』 五教科合計300以上
あれ?待ってよ。ふと思い僕は自分のステータスを確認する。
国語 22点
数学 42点
英語 52点
社会 15点
理科 36点
何にもなれない。
「どうしたの……。って、これはひどいですね」
横からカードを覗きこんで、モルが言った。モルの顔はまるで人間を見るような目をしていなかった。
「どうすりゃいいんだ!」
僕がそう叫ぶと、モルは耳を塞ぎながら言った。
「別に基礎職ってのがありますけど。というか合計250すらとれてないって、今までも別に旅人って訳じゃなかったんですね。フフ。」
「ちょっ! 笑うなよ! 恥ずかしいだろ」
「ま、まあまあ。取り合えず基礎職ってのを見てみてください」
<基礎職>
『町人』五教科合計200以上
『農民』理科が50以上
『商人』数学が50以上
『工人』理科+数学が100以上
『バイト』 何かひとつ50以上
『奴隷』 特になし
……。基礎職すら『バイト』か『奴隷』にしかつけない。
「なるほど。これならバイトに就いた方がいいですね。1レベルでも上がればテスト受け直せますし、そこで初級職の何かの条件を満たしましょう。というわけで、セツナさんはバイトに決定。次はメイラさんのを選びましょうか」
<中級職>
『魔法戦士』五教科合計1000以上
『パラディン』五教科合計1200以上
『博愛戦士』 国語+数学+英語が800以上
『騎士』 英語を除く合計が1000以上
『魔術師』 数学+理科が600以上
『上司』 社会が400以上
『射手』 数学+社会が600以上
なるほど流石は中級職。条件が難しい。ただそれよりも恐ろしいのは
国語 534点
数学 465点
英語 566点
社会 623点
理科 389点
メイラがどれにも成れてしまうということである。あ、ちなみにこの中級職は一例でもうちょっとあるみたいだけどここの町では扱ってないらしい。ただそこまでめぼしいものはないらしいし、ここにあるので十分らしい。
「戦わないのがいいんだけど」
めいらがもるに向かって話しかける。
「残念ながら中級職は戦闘用+なにかって形ですからねー。まあサポート系に回るんだったら、博愛戦士がいいですかね。一通りの回復技も覚えるし」
「じゃあそれにするわ」
めいらは博愛戦士にするみたいだ。
「さてと、じゃあ転職してきてくだい。待ってますので」
こうして僕達二人は無事に転職することができた。あと、初級職で最も難しい職業って盗賊だったんだな。あの盗賊団の人、低くても300を切らなかったのそういうわけか。
「お疲れさまです。バイト頑張ってください(笑)」
モルが笑いながら話しかけてくる。やべぇ。殴りてぇ。い、いやここはこらえないと犯罪者になってしまう。
「では、ここで私からお願いがあります」
モルが突然真剣な顔をしてこちらに向いてきた。瞳はまっすぐで、まるで突き刺さるかのようだった。
「私を仲間にしてください」
彼女曰く、盗賊団に戻るわけにはいかないが、このまま一人で放浪しているとまた盗賊団に捕まってしまう。だから仲間にしてほしい。とのことだ。
「ま、まあいいけど。僕らなにやるかもわからない、ずぶの初心者だよ? それでもいいの?」
「問題ありません。 楽しければ」
楽しさを求めるのかよ! ま、まあ悪いやつではなさそうだし、別に仲間にしてもいいのかな?
『モルが仲間に加わった!』