第3話 各ステータス
2人でいったいここは何なのか考えあっていると、頭の中にノイズのようなものが入ってきた。そしてそのうちなんと言っているのか聞き取れるようになっていた。
『それではステータスについての説明をしたいと思います』
突然二人の頭の中に声が伝わってきた。未だ混乱している二人はその声がいったいどのようなものなのか直ぐには理解できなかった。
「ええっと……。つまりゲームのなかに吸い込まれたってことでいいのかな」
「ええ。そうみたいね、にわかに信じがたいけど」
二人は頭の中に入ってきた音声を気のせいだと思い遮断した。しかしなおもその声は大きく響く。
『すみません。お願いですから聞いてください』
「……やっぱり気のせいじゃないか……」
「私も聞こえるわ……」
『よかった! やっときいてくれた!』
「お、おう。じゃあ説明頼む」
『あ! はい! じゃあ説明しますね』
頭の中の声はテンションをあげ、今までで最高に明るい声で話し始めた。
『それではですね。まずここの世界について説明したいと思います。ここはBSet nukdyyoの世界です。特に決まった名前はないのだから適当にべセット世界とでも呼んでください』
なんだこれ、ださいなと思ったが、さすがに失礼だと思って声には出さなかった。
「ダサいわね」
萌衣は直ぐに声をあげた。
「……折角言わなかったのに」
『ダサいとか言わないでくださいよ! まあ好きなように呼んでください。そしてこの世界、まあぶっちゃけていうと魔王に支配されかけてます。そしてレベルとか色々ある、まあRPGです(笑)』
「だろうな」
「そんな気はしてた」
二人は当然の顔で対応する。
『……もうちょっと反応してほしいな。滑ったみたいだから』
「うぉぉぉ! マジで!? すげーよ! 僕達RPGの世界に入っちゃったよ!」
『さて、ここで他のRPGとは違うところを説明します』
……無視かよ。なんか今度は僕が滑ったみたいになってるなぁ。瞬は何だか残念な感じで萌衣から見られているのがわかった。
『このRPGにはステ振りがありません。その代わりにテストの点数によってステータスが決まります。まあ、いってるだけじゃ分かりにくいと思うので実際に見てもらいましょう』
そういうとしばらくの間声が消えたかと思うと二人の目の前にカードがそれぞれひとつ現れた。
『そのカードは簡易ステータスカードです。レベル、所持金、テストのそれぞれの点数がかかれています』
その時、瞬は肝心なものがないことに気づいた。
「ん? これステータスが載ってないけど」
そういった瞬に向かってここぞとばかりに頭の中の声は話しかけた。
『そうです! ステータスは自分で計算してもらいます。と、いっても町にいけば確認できるんですけどね』
「自分でステータスの計算か。ダメージ計算とはするけどまさかステータスの計算をすることになるとは」
「まるで話についていけない」
萌衣はゲームなんてマインスイーパーやソリティアくらいしかやったことがなかったので、そもそもRPGというものがよくわかっていなかった。
『まあ、そのうちわかるよ。じゃあまずは基本的なステータスの計算方法だよ』
そういうと一枚の紙が二人の前に現れた。
『HP 五教科の合計値×2』
『SP 理科 社会の合計値』
『攻撃 数学 理科 英語の合計値』
『防御 国語 社会 英語の合計値』
『速さ 国語 英語の合計値』
『魔力 国語 数学の合計値』
「ふむふむ。なるほど」
『じゃあ二人ともこれを元に、ステータスを書いてみてよ』
「えっと僕の結果は
国語 22点
数学 42点
英語 52点
社会 15点
理科 36点 だから」
<セツナ>のステータス
HP 328
SP 51
攻撃 120
防御 89
速さ 74
魔力 64
「……。初期ステータスにしては高いのか?」
瞬はそんなことを思いながら萌衣の方を振り向く。
<メイラ>のステータス
HP 5144
SP 1012
攻撃 1420
防御 1723
速さ 1100
魔力 999
……ふぁ!? いま見てはいけないものを見てしまったような……。なんだほぼ1000オーバーじゃないか! 瞬は驚きを隠せない。
『さすがのステータスだね。やっぱり選んだだけはあるよ。ずっとつけてた甲斐があったってもんだよ』
その言葉に萌衣は耳を疑った。ずっとつけてた? ってことは、あれ? あの現象はすべてこの子のせいってこと?
「え、じゃあこのゲームを置いたのは君?」
『ピンポーン! ご名答! この世界を救ってほしくてね、呼んだんだよ』
「なるほど。選ばれし勇者ってことか」
瞬が決め顔で言う。
『え? 君は違うよ』
「は?」
『偶然来ただけだよ。何個か流通させてその一つが君に当たっただけのこと。そもそも適当に呼んでるから大体の人は死んじゃうんだけどね』
瞬は思った。なんか僕の扱いひどくない?
『まあ、簡単にいうと君たちには魔王を倒してほしいわけですよ。魔王を倒してくれたら元の世界に帰してあげよう。あとはそうだね、僕が無理矢理つれてきたんだし、一回だけなら死んでも大丈夫なようにしといてあげよう。あ、少年。君のはついでだよ』
「あ、はい」
瞬にはもう元気に返事をするほどの考えは無くなっていた。
『それからステータスの説明自体をしたなかったね。攻撃、防御、HPはいいよね。それ以外を説明するよ』
『まずはSP。これはまあドラ○エでいうMPみたいなものだね。スキルとかを使うときに消費するよ』
『次に速さ。まあ足の速さや攻撃速度なんかに影響するね』
『最後に魔力。 魔法系の攻撃、防御に影響するよ。魔法系の攻撃は魔力と攻撃や防御によって決まるよ』
『こんなものだね』
「なるほど」
「……さっぱりわからないわ」
『さて、最後にレベルボーナスについて説明しようか。まあこれは簡単なんだけど、ステータスはさっき計算したものにレベルボーナスがついて正式な値が決まるんだ。計算方法は以下の通り
基礎ステータス×(1+自身のレベル×0.01)
(ただし、小数点以下は切り捨て)
』
『ちなみに君たちのレベルは0だよ』
「なるほど。ちゃんとレベルが上がるとステータスが上がるようになってるのか」
瞬が納得する。
『まあ君の場合はレベルが上がっても1くらいしか変わらないだろうけど』
「ちょ! うるさい!」
『ああ、あといい忘れたけどテストはレベルアップ時、もしくは町の学校で受けられるから再度受けたくなったら行ってみてね』
「よかった。ちゃんとステータス変えられるんだ」
『よし、じゃあこれで終わりだね。君たちの旅の幸運を願ってるよ。 あ、そうそう役に立つステータスを教えとくから見といてね。他のステータスは自分で見つけるんだよ。あ、そしてこの世界の二人は<セツナ>と<メイラ>だからねそこのところよろしく。じゃあ!』
そう言うと頭の中の声は消えてなくなった。そして、二人の目の前に一枚の紙が落ちてきた。
<お役立ちステータス>
『値切り 数学の点数』
『コミュ力 国語 社会の合計値』
『修復力 理科の点数』
「……。え? コミュ力までテストで決まるの?」
せつなは何か釈然としない気持ちに包まれながら、二人の旅は始まった。