表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/39

第34話 覚悟

「みなぎル。思ったヨリもすばらシイ」


そう言うとその女性は剣を抜き、飛びかかってくる。速い。僕は確かにメイラやアボ、さらにはモルのスピードを見ているから速さにはなれている自信がある。そもそも彼女らの速さに匹敵する人は滅多にいないと思っている。だから目の前にあるものはその一瞬の間では判断できなかった。

……あれ? これよけれなくね?

僕の頭にひとつの言葉がよぎった。『不可能』その一言で今の現状を表すことができる。

女性は剣を振りかぶった。僕はとっさに目を瞑った。もちろんとっさにだ。これは死を意味していた。


ガキンッ。と快い音がする。その音にまぶたを開けると、目の前には一人の男がたっていた。


「大丈夫ですか!? セツナさん!」


「アボ! どうして!? モルの様子を見ててって頼んだろ!」


「い、いえ……。実は」


「私を放っといて、私のことをするなんて酷いですね……」


後ろから声が聞こえる。もちろん誰だかは分かっている。しかし、振り替えるのが怖い。そうであって欲しくないと望んでいる。

僕はゆっくりと振り向いた。


「セツナさん。いい加減に私を蚊帳の外に置くのはやめてくれませんか?」


「外に置いたことなんてないぞ……」


後ろにいたのはモルだった。それを見たときにこころの中には後悔の気持ちで溢れ帰っていた。もっとしっかりと言っとくべきだったとか、伝えずに来るべきだったとか。しかしその奥底に、安心して、嬉しくなった自分もいる。近くにモルがいる。それだけで、やる気が道溢れてくる。


「では、行きましょう。セツナさん。私たちならばきっと倒せますよ」


「ああ。そうだな」


そう言いながら女性の方を見る。女性はアボと戦っているようだった。


「アボだけじゃ劣勢だな……。攻撃力が低い分をスピードで補っている。スキルの効果が切れてしまうと、一方的に負けてしまうぞ」


「だったら私たちも早く加勢しましょう!」


「……やつは強い。加勢したところでアボの邪魔になるだけなんじゃないのか……」


「それでも! やってみないとわかりませんよ! 諦めんるなんてセツナさんらしくないです!」


そう言ったとき、モルはふらついた。まだ風邪がよくなっていないらしい。


「いや、うん。そうだな。僕は諦めない。まだひとつ方法はある。それを試したい。モルはアボと共に時間稼ぎをしてくれ。メイラがそこで倒れている。速さをコピーすればいいだろう」


「試してみたい方法?」


「ああ。だが、これは僕一人でできる。時間稼ぎを頼んだぞ」


「わかりました。頑張ってください」


モルはそう言ってメイラのもとへ向かった。僕はゆっくりとその後について行く。そして暫くすると、モルは超スピードでアボたちのもとへ向かった。


「こんなことしていいのだろうか……」


僕はとても不安に思っている。まず一つ目、これに、よってちゃんとメイラが目覚めるかどうか。メイラはメイレイの夢の中に囚われている。この方法で、それの鍵を開けられるかどうかなんてわからない。次に二つ目、この方法をみて、周りの人がどう思うかだ。出来れば誰にも見られたくない。見られたら駄目だ。まず非難されるだろう。そうならないためにもこれは円滑に行わなければならない。

そして三つ目。僕がそれをする『覚悟』があるかどうかだ。

僕はゆっくりとメイラのもとへ近づく。

メイラはいつ起きてもおかしくないような姿で寝ていた。しかし、メイラの性格からして永遠に起きられないだろう……。

僕は剣を抜いた。ちゃんと効果があることは既に自分で実証済みだ。多分大丈夫。問題ないはず。

手の震えが止まらない。本当に成功するのかという疑いがどんどん大きくなって迫ってくる。このままいけば僕はそれをできなくなってしまうだろう。『覚悟』は決まった。やるしかない。


僕は剣をメイラの首もとに当てるとおもいっきり引き裂いた。


血が吹き出る。もちろん僕はそれを見ていることは出来なかった。しかし、暫くするとその血飛沫は止んだ。

そして、メイラの首元が光り始めたのだ。その光はまるで奇跡の光のようだった。

モルもその光に気づいたようだが、幸い僕が影になっているのと、メイラが輝いて直視できないのとが合わさって傷口は見えていないようだった。


そして、突然メイラの目が開いた。

メイラは動揺しているように、自分の首もとを触っている。既に光は収まっているが、喉に違和感があるのかもしれない。

僕はメイラにどやされる覚悟はしていた。しかしメイラから出た言葉は意外なものだった。


「ありがと」


ただ、そう一言だけ言うと、メイラはゆっくりと、僕にだけゆっくりと見えたのかも知らないが。 そのゆっくりとした動きであの女性の元へ向かっていった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ