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第33話 メイレイ 3

「ほう。早かったな」


メイレイがこちらを向いて話しかける。メイレイの足元にはメイラとポトゾルが寝転んでいた。


「そいつらに何をした!?」


「別になにも。この白髪の子はずっと倒れたままだし、もう一人の方はまだ術のなかだ」


「術の中?」


「お前が入っていたのと同じ術だ」


僕と同じ術? それならば簡単に倒して外に出てきてもおかしくないんだが。メイラのステータスを見てもわかるが。

そんな顔が出ていたのだろうか。メイレイは少し口元を緩めながら話した。


「この術は術をかけられたときと同じ戦力のモンスターを産み出す。術をかけられても強い意思と向上心があれば簡単に抜け出せるんだ。 だが、逆に言えば向上心のないものに、この術は脱出できん。永遠にこの女は私の術の中で眠っているだろうよ」


そういうとメイレイは手を大きく広げた。


「さあ。始めよう。一対一なんてすぐに決まってしまうと思うが、まあいい。行くぞ!」


そういうとメイレイは走ってこちらに近づいてきた。そのスピードはアボガドロやメイラ程ではないが、常人にはなかなかさばくことができない。

僕は正面からメイレイの拳を腹に食らった。

気持ちが悪い。その一撃がいきなり僕の体に大ダメージを与えた。喉が熱くなる。こちらはふらついて攻撃どころではない。しかし、メイレイはすぐに体勢をもとに戻すと、今度は思いきり蹴ってきた。

強い衝撃が体に走る。既にほとんど動けないまでのダメージを受けてしまっている。


「くそがっ……」


それでもなんとか力を振り絞って立ち上がる。


「む? しぶといな。まあいい。すぐに楽にしてやるよ」


次の瞬間、メイレイは手に力を込めた。手が赤くなっていく。それは単純な炎魔法だった。


ボウッと手から炎を繰り出す。そして一気にそれをこちらに向けて放出した。

もちろん僕にその炎を防ぐ手段はない。メイラが居ればアンチファイアで耐えることができたかもしれないが、メイラは復活できていない。そのまますべてを無に帰す存在であろう炎が僕を包み込む。


と、思っていた。しかし、いつまでたってもその炎は僕を焼き尽くすことはない。いや、正確には炎はあるひとつの魔法によって消火されていた。

通常、氷は炎に弱い。炎は氷を溶かし、水にし、無力化する。しかし、その氷があまりにも強かったら? 炎は炎であるための温度を失って、消える。

そう。その現象が目の前で起きているのだ。

見るとポトゾルが氷魔法を使っている。彼女の氷魔法は最大威力の魔法が使える代わりに、かなりの体力を犠牲にする。その攻撃を僕はただじっと見つめているしかできなかった。

僕は無力なのだから。できればこんなこともしたくない。よくこんなに低いステータスで盗賊の幹部に出会っても生きていけるな……と思う。

しばらくすると氷が消えた。正確には氷を作る冷気が消えたのだが。

しかし、それだけあれば十分だった。時間にして数十秒の冷気はしっかりとメイレイの足を固定していたのだ。


「なっ! こ、こんな単純な攻撃で……」


「単純かもしれないが、ポトゾルは命を懸けているんだぞ!」


僕はポトゾルの方を見る。体力を使って倒れている。やはり早く病院に連れていかなければ、死んでしまうかもしれない。


「馬鹿な。こんな結果は望んでいない。もっと熱い闘いを要求したい」


「お前の都合に合わせている暇があると思うか?」


僕はそう言いながら剣を抜いた。


「くそっ! くそが!」


メイレイが声を荒げてどうにかして氷を解こうとする。メイレイ自身も炎魔法は得意でないのか、冷えきったからだでは上手く発動することができない。

僕はゆっくりメイレイに近づく。


「くそがっ……」


僕は思いきりメイレイに剣を降り下ろした。

ゴンッと鈍い音がして、メイレイは倒れた。しかし、死んではいないようだった。メイレイわ殴ったのは剣の刃の部分ではなく、柄の部分だったのだ。


「やったのか……?」


メイレイをぐるりと見回す。しかし、起き上がる気配はない。


「とりあえず、あの二人を起こさないと……。いや、ポトゾルは病院に連れていかなければいけないのか?」


悩んでいると後ろから物音が聞こえた。とっさに振り返る。そこには一人の女性が立っていた。


「やはり、ダメだったか……」


そういうとその女性はポケットからひとつの玉を取り出した。その時何か寒気がした。それをどうするのかわらないが、それでもどうにかさせてはいけない気がした。

しかしその女性はすぐにそれを飲みこんだ。


「うっ。 くっかぁ……」


言葉にならないような音を上げている。ここで攻撃するべきなのか迷った。だが、攻撃知る対象なのかもわかっていないのに攻撃なんてできない。僕はそのまま、見届けてしまった。

しばらく唸っていたが、急に体の動きを止めた。そして次の瞬間、その女性はメイレイに飛びかかった。


「はぁあアアぁ……。ぁ」


女性は呟きながらメイレイの胸に手をのせる。そして次の瞬間、メイレイの姿が消えた。

やはり女性は苦しんでいたが、しばらくするとこちらを見た。


「アア……。これはすバらしい。なるホド。こんな感じナノか」


その女性は、何だか急に体がごつくなった。それだけでなく、声が片言で聞き取りにくい。まるで日本語を話すのが慣れていないようだった。


「何だ……こいつ」


「何だ? 私にもワカらない。だけど、君を倒すのがモっともよいと頭の何かがメイレイすル!」


そういって、そいつは攻撃を仕掛けてきた。


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