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第27話 盗賊団

街から少し離れた廃墟。そこは盗賊団のアジトになっていた。廃墟と言っても崩れたような跡地ではなく、何かのお屋敷のような場所だ。そして、その盗賊団のリーダーであるカカリは焦っていた。


「全く……いつになったらモルを取り返せるんだ」


それを聞いたシュウシは近づきながら答える。


「あいつらをこっちのアジトに招待すると言う話を聞いたんですが、それは本当でしょうか?」


「ああ。そろそろ決着を着けたい。まあ、誘ってみることを提案したのはムスビなんだけどな」


そう言うと、カカリはテーブルの上に置かれていたひとつの蜜柑を手に取ると、皮を剥き始めた。蜜柑の柑橘系の匂いが漂う。


「あんたもあいつらを迎え撃つ準備をしなさい。絶対に仕留めるのよ」


そう言うとカカリは蜜柑を一房口に運んだ。


「はい。分かりました!」


そう言うとシュウシは走って自分の部屋に戻っていく。その姿を見てカカリは少しイライラしていた気持ちが収まった。

そのまま、特に何をすることもなく、自分のステータスを確認する。


カカリ

『国語』 421点

『数学』 311点

『英語』 296点

『社会』 361点

『理科』 241点


全く。ひとつの強化に特化したミゼンやイゼンですらかなわなかった相手だ。このままじゃやられるのは目に見えている。カカリはひとつの不安に押し潰されそうになっていた。

すると後ろから足音が聞こえる。足音はあまりにも静かで、一瞬誰かと思った。振り替えると一人の老人が立っていた。


「何だ。ムスビか」


「何だとは変な言葉ですね。まあ、神経質になっているのもわかりますけどねぇ」


そう言うとムスビは向かいのテーブルに座った。

その姿を見て、カカリはムスビに話しかける。


「私が街の荒くれものだったとき、突然あんたが現れたのよね」


「そうでしたかな」


カカリはもうひとつ蜜柑を取り、皮を剥き始める。


「あれはもう5年前になるのかしら。あれはそうね、確か舎弟を一人だけ連れていた、本当にどうしようもないような人だった頃ね」


その話をムスビは何をすることもなく、静かに聞いている。


「私達が他のグループの争いに巻き込まれていて、ボロボロになっていたときに貴方は現れた。『盗賊団を作りませんか?』ってね。あなたみたいな怪しい人をすぐには信じられなかった。でも、このまま何もせずに死んでいくのもつまらない気がした。だからその誘いに乗ってみたの。そのあとのことはよく覚えていないわ。でも盗賊団を作ったときの大きな感動は覚えているわ」


そう言うとカカリは蜜柑をまた、一房、一房と食べていく。するとムスビは手を前で組むと、口を開いた。


「ひひ。では私の昔話も少しだけしてみましょう」


そう言うとムスビはカカリに向かって話しかけた。カカリもムスビの昔話を聞くのは初めてだった。


「昔と言っても、ここに来る少し前のことですよ。私はひとつの魔法の研究をしていたのです。その研究は何年も続けてきました。あるときその魔法を試す機会ができたのです。私はその魔法を使ってみました。しかし、思ったような成功はしなかったのです。私はその実験にかなりの体力を使っていました。ですのでそれの研究を続けるのを断念したのです。私は自分の体力が回復するまでかくまってもらう場所が必要でした。そうしてカカリ様に盗賊団を作ることをおすすめしたのです。」


今度はカカリが黙って聞く。はじめて聞く話で、どう反応したらいいのか分からなかった。


「そして、盗賊団の参謀として、様々なことをアドバイスしながら、研究を続けてきました」


そう言うとムスビはポケットからひとつの玉を取り出した。そして、それをカカリの前まで持っていった。


「これが私の研究結果です。いざというときに使ってください。使い方はそれを飲み込むだけです」


カカリは目の前に出された玉を見つめた。それはあめ玉と同じくらいの大きさで黒く光っていた。


「分かった。最後の手段として使わせてもらう」


「そうですか」


そう言うとムスビは立ち上がった。そして、扉の方へ向かっていった。しかし扉を開ける前に振り替えると、カカリにひとつのお願いを言った。


「そういえば私はこれからテストを受け直してきます。レンタイも一緒です。カカリ様が戦う前には戻ってきますのでよろしくお願いします」


「あ、ああ。分かった」


その言葉を聞くと、ムスビは扉の方を向き、カカリに気づかれないように顔に嫌な笑みを浮かべるとどこかにいってしまった。

カカリが部屋を見渡すとそこは静かだった。既に他の皆は自分達の支度がすんだのだろうか、物音ひとつしなかった。自分の部下たちを思い出す。ミゼン、レンヨウ、シュウシ、レンタイ、イゼン、そしてメイレイ。メイレイを除くそれ以外の部下たちは皆ことごとくやられているのだ。特にミゼンは死んでしまった。この盗賊団に入ってたった4ヶ月しかたっていないといえども、流石に自分の部下が死んだのは辛い。多少やり過ぎたところはあるようなのだが。

カカリはその大部屋を出て、自分の部屋に戻る。自分も戦う準備をしなければいけないのだ。正直、自分のところまで敵が来たらそれはそれで終わりだと思っている。私と同じくらいのステータスのメイレイがやられたことを意味しているのだから。手に握っているムスビからもらった不思議な玉を見つめる。こいつが最後の賭けか。ムスビから貰ったものだ。信頼できる。だが今すぐには使いたくない。それこそ本当に追い詰められたとき、その時に使いたいのだ。そう思い、その玉をポケットに入れておく。敵が来るまでもう時間がない。そろそろ迎え撃つ準備をしなければ。そう思いカカリは大部屋に戻り、幹部たちを招集した。


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