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第1話 南野 瞬

「いやー。今日もいい戦いだった」


そういってパソコンの画面を閉じるのは15歳の少年、南野瞬(みなみのしゅん)。彼は東延高校に、通っている学生だ。今日も日課のオンラインゲームを夕方の6時から朝の6時までやって来た。次の日に学校があるにも関わらず。

窓を見ると既に朝日は登り、カーテンの奥から光がこぼれていた。まるで何も変わらないいつもの朝のように。

朝食を取ると、彼は学校に向かった。通学路は建物と田んぼが交互にやって来るかのような、田舎だった。田舎と都会の中間くらいの町と田舎の中間くらいの町だ。

学校につくと既にほとんどの人が登校していた。瞬は最後から2番目だった。教室にはいると、みんなが騒がしくしていた。2学期が始まり、体育祭、文化祭と終わりその熱が未だ覚めていないのだろう。


「おい、そろそろ中間テストだな。調子はどうよ」


クラスメートの一人が話しかける。余り仲良くないのにテストのことだけ、瞬に、話しかける。自分より下の人を見て、自分がいる位置に安心感を持たせようとしているのだろう。


「うーん。まあまあかな。今回は脱ワースト10って感じだな」


瞬は明るくそう答える。正直いって瞬にとって定期テストなどどうでもよかった。早く家に帰って、オンラインゲームの続きがしたいくらいだ。やっと上位50まで入ってきたんだ。もうすぐで目標の30に入れる。そこに入る方が重要で、学校を休もうかと朝考えたくらいだ。

しばらくするとチャイムがなった。いつも通り何も変わらないように授業が始まる。しいて違うことを言うならば、学校1の天才? 秀才? が遅れてきたことだった。

なぜ遅れたかはわからなかったが、とても焦っている様子が顔から読み取れた。授業中に入ってきたのでそのわけを聞くわけにはいかず、クラスの皆は静かにその様子を伺った。休み時間になっても誰もそのわけを聞こうとはしなかった。

瞬にとってもどうでもよかった。天才が何をしようが瞬にとっては何も変わらない。

いつものように瞬は授業の時間をオンラインゲームについて考えるのと、寝るのとに費やした。授業が終わると直ぐに自宅に向かった。


「ああ、疲れた。この世界は複雑すぎるなぁ……。こう、ゲームみたいに争いとかも全部ひとつのアルゴリズムできるようになればいいのに。そんな世界に生まれたかった」


瞬はそんな独り言をいいながら、もよりのゲーム屋に向かった。今やっているゲームがもうすぐ彼にとってのクリアになるので新しいゲームを漁りに来たのだ。

いたって普通の商店街の中の普通の店。そんなところが瞬は気に入っている。人はそれほど多くないが、有名なゲームはしっかりと入荷してくれるし、マイナーなゲームもときどき店長の気まぐれで入荷している。マイナーなゲームは大体オフラインゲームだから暇なときにやっている。家にあるゲームもオフラインゲームの方が多い。片手間にやっているが、早くて1日、時間がかかっても3日もあればクリアしてしまう。やりこみ要素が多くあるゲームでも、通常のクリアをするとほとんどやめてしまう。全クリアはしないのだ。これは彼のこだわりなのか、それとも飽きっぽいだけなのかはわからないが、彼の家に全クリしたゲームは数えるほどしかない。

そして飽きたゲームは大体このゲーム屋に売る。そのお金でまた別のゲームを買うのだった。


「おっちゃん。なんかいいの入荷した?」


「ん?瞬ちゃんか。一昨日も来てなかったか? そう簡単に入荷せんよ」


「あはは。まあそうだよね」


瞬が周りを見渡すと、カウンターの近くにひとつのゲームソフトがおいてあった。そんなに古くもなく、どちらかと言うと新しそうだった。パッケージは遠くからでよくは見えないが、派手な爆発シーンが写されている。戦闘ゲームだろうか? しかし瞬の目を引いたのはそれではなく、その値段の安さだ。なんと10円。隣に売っている駄菓子よりも安い。


「おっちゃん。このソフトどうしたんだ?」


瞬が聞くとおっちゃんは少し明るい雰囲気で答えた。


「それか? 勉強系MMORPGとかいうやつだったな。詳しくはわからんが」


え? これがRPG? アクション系ではないのか。しかしそれ以上の疑問にまだ答えてもらっていない。


「おっちゃん。何でこのゲームこんなに安いんだ?」


おっちゃんは少し顔をこちらに向けて答えた。


「ああ。まあそれな持ち主が次々死んでいくとかいういわく付きのゲームなんだ。まああんまり俺はそんなの信じないがな。どうだ? 買っていくか?」


うーん。どうしようか。瞬は迷った。正直なところいわく付きとかどうでもいい。ゲームができればいいのだから。ただ……、彼にも苦手なゲームがあって、クイズ系とパズル系のゲームだ。この二つはできれば遠慮したい。しかしRPG要素があるというじゃないか。スマホアプリでパズ○ラとかもいれているが、パズルだけとかでなければ十分なのだ。

3分ほど迷って結局買うことにした。どうせ今やってるゲームが終わったらやること無いんだし、これでもやっとけばいいか。とのことである。

買い取ったゲームには


『BSet nukdyyo』


とかかれていた。『ぶせっと ぬくどよう』?何て読むんだろ。yyってなってるとこって発音どうすればいいんだ?制作会社のところは黒く塗りつぶされていた。

家につくと早速そのソフトを起動させてみた。取り敢えずアカウントだけ作っておこうという魂胆だ。一応毎日ログインして、ログインボーナスでも貰っておこうとのことである。


『名前を入力してね』


「名前か。特に考える必要もないしな。セツナでいいか」


『<セツナ>ですね。性別を選んでください』


「男」


そんなやり取りをあと10個ほど繰り返した。大体のゲームにあるくらいの当たり障りの無い質問だった。


『さて、ここでテストを受けてもらいます』


「……テスト?」


『国語、数学、英語、理科、社会の5教科を受けてもらいます』


『あなたは理科の科目は何を選択しますか?』


するとパソコンの画面に、物理、化学、生物、地学とかかれた選択肢が出てきた。


『最低1つ。最高3つ選んでください』


「なんだこれ? ああ勉強ゲームだもんな。そこら辺は考慮するのか」


そういうと瞬は物理と化学の2教科を選んだ。すると直ぐにまた別の質問が画面に現れた。


『社会の科目は何を選択しますか?』


するとやはり、地理、日本史、世界史、現代社会の4つの選択肢が出てきた。


『最低1つ。最高3つ選んでください』


瞬は直ぐに地理と現代社会を選択した。


『それではテストを受けてもらいます。テストは1教科につき60分。100点満点のテストです。ただし、そのテストが80点以上であり、さらに時間が余っていた場合のみ、追加でテストを受けることができます。これが80以上を取り続ける限り続きます』


60分もやるのか。しかも5教科も。まあ時間はあるからいいけど。


『難易度は高校生以上レベルです。では5分後に始めますので、準備をしてください』


「高校生レベルか。うーんどれくらいとればいいんだろうか。80とればいいんだろ。理系なら80超えるかな。文系は……まあ60超えればいいか」


『それでは始めてください』


<国語>

ホイッスルの音がして問題が表示された。うん。まあ国語だもんね。うん。仕方ないよね。うん。


<数学>

うん。うん。出来ないね。


<英語>

おぅ。あいむそーりー。


<社会>

知るか


<理科>

……


『それでは結果を発表します』


終わった……。色々な意味で。


国語 22点

数学 42点

英語 52点

社会 15点

理科 36点


……。これっていい結果なのだろうか? 大体皆がどれくらいとるか分からないんだよな。


『ちなみにあなたの学年の目標得点は、それぞれ150点です』


あー。なるほど。そんなものなのかー。うん。ていうかそもそもこのテストってなんの意味があるんだ?


『それではこの結果を踏まえ、キャラクターのステータスが決まります。しばらくお待ちください』


え? これでステータス決まっちゃうの? 他の皆は150とかとれるのに? 30程度のこの結果で?


『結果が出ました。詳しくは向こうで聞いてください』


向こう? どういうこと―――


次の瞬間、視界が暗転した。いったい何が起こったのかはわからない。しかし、もうすでに考えるまもなく意識を失った。










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