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第13話 高速の生徒 4

運動場につくと、まだ、二人の戦いは、続いているようだった。みると他のメンバーたちもそれの観戦をしている。

相変わらず、アボの攻撃をひたすら避けていくモル。そしてチラッとこちらを見た。その様子から、こちらがフラッグを取ることを失敗したことを知ったようだった。

ただ何か変な違和感を感じる。その正体がいったいなんなのかはわからないが、こちらが不利になりそうな何かだ。

しかし、まあ。アボは速い。メイラで慣れていたと思っていたが、メイラより少し遅いくらいで普通の人からしたら十分速い。


「いったいどんなステータスなんだ?」


その独り言のような声に対して、パスカルは一枚の紙を渡してきた。そこにはあぼのステータスが書かれていた。


アボガドロ


国語 324

数学 162

英語 192

社会 150

理科 98

合計 926


……あら? そんなに高くないな。なんでだ?


素早さは516。メイラの半分にも及ばない。なぜ、あんなにも早く感じたんだ?

次々と疑問がわいてくる。しかし解決の糸口は見つからない。いったいなんなのだろう。この感じは。

そのとき、モルがアボのスピードに追い付けていないことにきづいた。違和感の正体はこれだ。

いや、まてよ。と言うことはまさか……

その時突然、アボがしゃべった。


「楽しかったですよ。モルさん。 でもそろそろおわりにしましょうか」


そう言うと、次の瞬間、アボのスピードが2倍にはね上がった。その瞬間の速度は明らかに、メイラを超えていた。

そのままモルの背中に貼っておいたフラッグを取ると、恐ろしいほどの砂ぼこりをあげて、停止した。


「僕の勝ちのようですね」


アボはそう呟くと教室に戻っていった。

みると、モルはまだ腑に落ちないようだった。


「なぜ、負けたのでしょうか。 コピーはしっかりできていたはずなのですが」


モルが話しかけてくる。ここで、僕が気づいたことをモルにすべて話した。

まず、アボの素早さのステータスはめいらの半分にも達していなかったこと。そして、コピーしたモルのスピードはアボに及んでいなかったこと。そして、ラスト一瞬、メイラを超える速さを出したこと。


「これらから明らかになることはただひとつ」


「そういうタイプのスキルを持っているということですね」


先に言わないで欲しかったなぁ……。


「ああ」


そんな会話をしていると、後ろからパスカルが話しかけてきた。


「そう。彼の持ってるスキルは『加速』。自分の素早さを自在に変えることができる。もちろん、速くしすぎるとすぐにSPが切れてしまうから、あんまりたくさんは使えないらしいんだけど」


『加速』か。皆それぞれ個人のスキルを持ってるけど、どれも有能なのが多いな。モルのコピーだってうまく使えばかなり強いし。僕が個人のスキルを手に入れたらどんなのになるんだろうか。まあ、そのためにはレベルをあげていかなければならないんだけど。


「そろそろ講義が始まるわ。行きましょう」


パスカルがそう話した瞬間だった。町の広場の方で何やら大きな音がした。


「……何?」


学校の生徒たちもよく理解できず、校庭に居るものはその音のした方を、校内にいる生徒は、窓から顔を乗り出して見ていた。

そのとき放送が流れた。


『皆さん。 危険ですので体育館、または大講義室に急いで避難してください。繰り返します――』


校内放送が流れ続ける。校庭にいた多くの生徒は体育館に、校内にいた生徒は大講義室に避難したようだった。僕たちも無事、体育館に避難すること後できた。

しかし、いったい広場の方で何が……




――――町の広場――――


二人の小柄な男たちは、広場で兵士と闘っていた。闘っていた? いやそうではなかった。ただ単に、兵士の虐殺ショーのようなものだった。


「あれ? にぃちゃん。 こいつ動かなくなったよ」


みぜんが一人の兵士の頭をつかんで持ち上げる。


「それは死んだっていうことかな。 汚いから捨てとこう」


イゼンがそう言うと、ミゼンはその兵士を他の兵士めがけて投げ飛ばした。兵士は簡単にその兵士を受け止めた。


「お、おい! 大丈夫か!? 」


「う、うーん。 何とか……」


投げ飛ばされた兵士たちが会話をする。


「あれ? 生きてたじゃないか。 もったいないことをするなよ」


「ごめんよ。にぃちゃん」


「でも、まずいね。ギルドの旅人たちも集まってきたみたいだね。已に囲まれてるみたいだけど」


「にぃちゃん。にぃちゃん。未だに逃げる方法はいくらでもあるよ」


「そうだな。 取り合えず、兵士たちは皆殺しだ♪」


この町に配置されている兵士はせいぜい20人ほど。これくらいの規模の町になると100人を越えていてもおかしくはないのだが、この町には国にとって大事な機関を配置しておらず、魔物も攻めてくることがないため、この人数で抑えられているのだ。

残った兵士たち、約10人が剣を構える。次の瞬間、いぜんは不適に笑うと姿を消した。そして、すぐに3人の兵士の首が飛んだ。


「クスクス。まだやるのかな? 子供たちが集まりそうな場所を教えてくれたら、助けてあげようかな」


イゼンは兵士たちに語りかける。するとこのまちの兵士長が一歩前に出た。


「そんなこと教えられるか! 市民の安全は俺たちが護るのだ!」


「ふーん。 君はこの町に命を懸けるのか……。でも、皆が皆そうって訳じゃないよね」


すると、一人の兵士がイゼンに向かって歩いていく。


「子供たちが集まるなら学校がいいと思います」


「なっ!」


兵士長が驚く。


「うーん。さすがだね。それでこそ人間だね。でも、僕は人間が嫌いなんだ。特定の人以外には興味がわかないからなぁ」


「いったいそれはどういう――」


次の瞬間、子供の居場所を教えた兵士の首がずれ落ちた。


「うん。いい感じだな。 よし、学校いくか」


「にぃちゃん。にぃちゃん。こっちも、旅人の始末はあらかたできたよ」


みると、広場の回りには兵士長と兵士が5人ほど、そして、市民、なんとか耐えた旅人ぐらいしか居なくなっていた。


「き、 貴様ら悪魔か……」


「悪魔? それは魔類と言うことかな? 違うよ。あんな野蛮な生物と一緒にしないでほしいな」


「そうそう。じゃあいこうか、にぃちゃん」


「そうだね」


二人は学校の方に向かって歩き始めた。 残された兵士たちは追うこともせず、ただただその背中をずっと見つめていた。









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