1. 進路決定
将来の夢など何もない。
だから進路を決めろと言われても、とりあえず「高校進学」としか答えられない。決められないまま時間だけが過ぎて行くので焦っていたが、私はある日、とある学校のホームページに行き着いた。
『星霜学園高等学校』
自由な校風。国際社会に対応するための異文化コミュニケーションに力を入れているらしい。偏差値は高過ぎず低過ぎず。毎日通うには少し遠いけど、寮生活も可能なようだ。
「寮生活か…」
校風も特色も、どんなものが自分に合うのかなんてさっぱり分からない。けれど、実家から遠過ぎない位置に寮があることに、私はとても興味を惹かれた。寮の有無で学校を決めるのは何かが違うかもしれないけれど、高校に進学したいというだけなのだ。進学校なら問題はないだろう。
私は常々、外に出たいと思っていた。家が嫌いなわけではない。家族は大好きだが、自分はそこに甘え過ぎているのを知っている。社会に出る前に、もう少し自分で行動出来るようになりたいと思っていた。一人暮らしの敷居は高いけれど、寮だったら同じ学校の生徒達が集まるので、少しは安心だと思うのだ。
それでも、やはりネット情報だけでは心もとない。私は翌日、進路指導の先生に相談をしてみた。先生は何度かこの学校を訪れたことがあり、校内の雰囲気も先生方の印象も、とてもよいとのことだった。また、ボランティア活動にも力を入れているので、近隣住民の評判も良いらしい。
ただ、星霜学園は中高一貫校なので、6年間を通したカリキュラムの途中から参加することになる。私の成績は中の上くらいだけれど、別クラスでの指導もあるらしく、まあ大丈夫だろうと先生は言った。
よし、ここに決めよう。
私は優柔不断でなかなか物事を決められないが、一度決めると揺れることはあまりない。何より、ホームページの片隅にあった『主に人間の子供募集中!』の文字に背中を押された。なんて遊び心のある学校なのだろうと、親しみを覚えたのだ。
心配する両親と兄を説得し、私は入学試験に合格。4月から、星霜学園の生徒となった。