理人と麗奈と
「わぁ……っ!!」
会場に入ってみると、本当に驚いた。
「天井高…っ!広…っ!眩しい…っ!豪華…っ!」
「ははっ!そんなに驚く?」
「だって、こんなところくるの初めてだもん!!」
会場は煌びやかでとても綺麗だった。人が多いことが少々気になってしまうのだが、今の麗奈にはそんなことどうでもよかった。
父と母たちがなくなってから、こうやって誰かと出かけるのも久しぶりだし、ましてやこんな立派なところへ来れるなんて…!
「あ、麗奈!!」
ふと感嘆の瞳であたりを見回していた麗奈立ちのそばに、ある人たちがかけてきた。
「あ、澪さん!」
「よかった!来てくれたね!!」
澪はそう言って、麗奈の両肩をポンポンと叩いた。
すると澪たちの後ろから、唯夏や真一、拓斗も来た。
「あ、主役登場?」
「へぇ、似合ってるじゃん!」
「やっぱ麗奈は暖色だな」
「でしょ!?あたしと唯夏のコーディネート!バッチリでしょ!?」
みんなにまた褒められると恥ずかしくなるが、さっきみたいに逃げ出したりはしない。
時折、雅のほうを見つめる視線が気になるが……。
「こんなに大きいところ初めてです!!」
「そっかそっか!じゃあ思いっきり楽しめ!!」
「はい!」
やっと緊張の糸がほどけてきた麗奈に、全員は安堵の息を漏らした。
パーティーと言っても、本当にあとは自由気ままだった。
料理を食べるもよし、会話するのもよし、ただ座っているもよし。何をしてもいい時間が果てしなく続いた。しかし、麗奈は一向に飽きる気がしなかった。
最初のほうではしゃぎすぎたのか、少し疲れ気味になってしまった。
雅が飲み物を持ってきてくれるといったため、会場の入口前の椅子に座って待っておく。
澪たちはしばらく席を外すと言っていた。それが気を使ってくれたのか楽しんでいるだけなのか、どちらにせよ心境はわからない。
雅を待っている間広い会場を見渡すと、時折こちらを見つめるような視線を受ける。
「……やっぱ、変だったかな…」
若干ではあるが、他人から見られている気がする…。自意識過剰だろうか?
(むぅ……もうちょっと普通の食事会とかだったら…もうちょっときままだったのに…)
そんなことを思いながら、もう一度会場を見渡す。雅はまだ帰ってきていない。
「あれ……どこまで行ったんだろう…」
あたりをきょろきょろと見回してみるが、雅の姿が目に入らない。どこへ行ったのだろうと思い、座っていた椅子からそっと立ち上がってみたその瞬間―――――。
「あれ?麗奈ちん…?」
「はい…?」
突如、右後方から声が聞こえた。あきらかに自分の名を呼ばれたようなきがするのだが、何かが違う。こんな呼び方する人初めてだ…。
麗奈がそっと背後を振り返ったその瞬間――――。
「あ…っ!」
思わず、声を上げてしまった。そこに立っていたのは――――――――。
「嘘だろ!?こんなところで会うと思わなかった!!」
「り、理人君…っ」
この前クラスメイトになったばかりの青年。久遠理人が立っていた。
「ど、どうしてこんなところに…っ」
「いや、俺……実は、さ。歌い手やってんだ…」
「えぇ!?初耳よ!!」
そんなに話す機会もなかったため、そんなことを知る由もなかった。その事実に驚かないわけがない。すると理人はすこし照れたように頬を掻く。
「一応、な。まだ見習い課程だけど…。麗奈ちんは?」
「…その前に、あの…『麗奈ちん』って、なんでちん…」
「いや、好きに呼んでいいって言われたから…」
まぁ確かにいったけれども。いや、そんな呼ばれ方すると思ってなかったし…。
「嫌だったら変えるけど…」
「…いや、別にいいわ。好きに呼んでって言ったのは私だし」
自分にも非はある。それに別に嫌なわけじゃないからいい。すると理人の顔にまたも華が咲く。
「そっか!ありがとな!!」
「うん…。あ、私はね。一応プロデューサーのほうやってるの。契約者さんもいるし」
「嘘!プロデューサーなんだ!?契約者もいるの!?すげぇ!!」
「そんなことないよ」
直球で褒めてくる…雅と同じタイプだな。そう思うと、自然と笑がこぼれた。
すると理人はまだ何か言いたそうに口をパクパクさせていた。麗奈は首をかしげる。
「どうしたの?」
「え!?い、いや…い、いつも…制服しか見てなかった、から…っ。そういう、格好は…新鮮というか、か、可愛いと言うか…」
いつの間にか理人は顔が真っ赤だった。麗奈はふと、その顔を見て思った。
(……赤面症?)
「ふふっ、ありがと。だいぶ恥ずかしいのもなれたな」
これも、雅のおかげかもしれない。そう思うと、また違った笑みを浮かべてしまう。
すると理人が突然、話を変えてきた。
「そ、そういえば!今日は1人なの?もしよかったら…」
「あ、ごめん。1人じゃないの。その契約者さんたちと来てるの」
「へぇ…。その人、今どこに…?」
「今ジュースとってきてくれてるの。…って、さっきから姿が見えなくて、ちょっと心配してるんだけど…」
そういえば、雅がやけに遅い。どうしたんだろう…。あたりを見ても、人影しか見えない。
「へぇ…その人、男の人?」
「うん」
「………そっか…」
「え?どうしたの?」
突然声が小さくなって声を聞き取るのが困難になった。何を言ったのか再度確認しようと理人のほうを振り返った途端―――――。
「あっ!!」
「へ?」
麗奈の声に反応して、理人までもが麗奈の見つめた方向を向く。
そこには、2人の男性の姿があった。その2人の影を確認した途端、2人は同時に叫んだ。
「雅!!」
「父さん!!」
2人の男性は同時に手を振り、麗奈と理人は、互いに顔を見合わせた――――――――。




