第一回閣僚会議
まず、俺たちがやったこと。当たり前だが、人事だ。
さすがに俺たちだけでこの国を仕切るのは無理だ。内政だけならまだしも、対外的には俺の英語じゃとてもじゃないが各国首脳連中とわたりあうのは無理。
もっとも、サトルの技術を借りれば通訳なしで…っていうか、普通に日本語をしゃべってれば、相手の国の言葉になるし、相手の言葉は日本語にってのを知ったのはもう少し後のことだったが。
「ね、サヨっぺとミンちゃんも誘っていいでしょ?」
俺に親友と呼べる友達は少ない。洋子の友達ならいんじゃね?そんな気楽な感じで、人事はとりあえず俺たちの身近な友達から始めた。後は、コミュニティサイトで知り合ったネットでの友人たちが二人。
人事が決まり、とりあえず議事堂の空いている小部屋に三日後、俺たちは集まった。三日後となったのは、一人が沖縄出身ですぐには動けなかったためだ。
さすがに本会議場や委員会室は俺たちだけでは広すぎる。控え室なんだろうか?この部屋が国王と側近たち、合計12人にはほどよい広さだったが、どうもすわり心地はあまりよろしくない。
「それじゃ、第一回閣僚会議でも始めますかねー」
副大臣兼司会進行が洋子。
「で、何やりたいんだよ?面白げだったから来てはみたけどさ。」
ここでそれぞれの自己紹介が終わって初めてサトルが口を開いた。
「まずは、国の体制を国民と外国に認知させること。俺たちがやりたいことは、どんどんやっていけばいい。ただし、人道とか道徳とかってのか?そういうのから外れない程度にな。」
「お菓子博覧会やろうよー!美味しいが何たって一番の正義だか…」
「却下!」
サヨっぺのいきなりの発言にかぶせるように他の11人は即座に発声。うん、なかなかチームワークのいい閣僚たちだ。
体制の変更から3日経過していたが、国内はこれといって変化はない。もうしばらくすれば何らかの変化があるのかも知れないが、要するに総理だの内閣だの、国会議員だのがいなくても、この国は前に進むってことだ。
「昭二が国王だろ?昭二のやりたいこと、やっていきゃいいさ。俺たちのはそれから追加していきゃいいんじゃね?」
「そうね、それでいいと思う。」
閣僚会議とは言っても、ホームルームとノリは変わらない。
「それじゃ、俺のやりたいこと、とりあえず言ってくからミンちゃん、ホワイトボードに書いてってくれるかな?順番とか担当はそれから決めていこう。」
そう言って、この3日で考えていた俺の「やりたいこと」=「国政方針」が決まっていく。本当はもっとやりたいことがあったんだが、洋子はじめ3人の女性閣僚がいる前じゃ、さすがに国王とは言え、言い出せないこともあったんだが、そいつは俺の脳内の引き出しにしまっておこう。いつか彼女たちのいないところで、取り出す機会もあることだろう。
列挙された第一次国政方針は次の通り。
1.公務員改革:公務員の給料を現行の最低賃金法に基づく最低賃金とする。当たり前だ、公務員=公僕。国民の奴隷だ。それが高給取りってのがそもそもおかしい現実だったのさ。
2.「暴」と名のつくものを全て軍隊(自衛隊の名称は廃棄された)に編入。
暴○団、暴○族、それに追随する者たち、そうしたエネルギーがあり余ってるなら、国のために役立っていただこう。
3.税制改革:超累進課税で、高い給料、収入のある者や企業から税金を取り立て、当面の国の借金を健全な税制に戻していく。
4.強行外交政策:あまりにもこれまでの対外姿勢は軟弱すぎ!NOと言える日本なんてのが一時もてはやられたが、YESと言わせる日本、とりあえずそれを目指していくぜ。
5.弱者優遇政策:経済的、肉体的、精神的な弱者に対する優遇措置、支援措置とそれを脅かす存在に対する報復措置、罰則の強化。
いじめ、介護、経済的破綻者…かっての憲法でうたわれていた「最低限度の文化的生活」は、この絶対王政で本当に花開くことにしよう。
昭二が思い浮かべた方針をおおまかにまとめると以上の通りだった。それをタタキにしてホームルーム…いや、閣僚会議は深夜まで続くのだった。
とちゅう、和芳がサトルのお気に入りの某大手牛丼チェーンとコンビニに閣僚全員の夕食(夜食)をパシリにやらされたのは些事か…。