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猪娘の宿敵

テスト期間中なので暫く上げれません。

遅れましたが本編をどうぞ!!

決意と共に部屋を出てしばらく進み何度目かの曲がり角に差し掛かった時、私は前方に人影を見つける。

私は素早く身を隠そうとしたが、その前に声が聞こえてきた。


「やっと、見つけた」


その声を聞いて私は反射的に身構え、声の方に視線を向けると予想通りの人物がいた。

目を向けると三日月の様に歪んだ唇。

そこには、ついさっき私の事を殺そうとしていた女性がいた。

ここの警備をしているという事は、この人もあの子供らを実験体にしている奴らの同類なのだろうか。

そう考えるだけで私の中に恐怖とは違った負の感情、その沸き上がる感情のままに女性を睨む。

そんな私の態度に女性は苛立ちを露にした。


「何、その目? 侵入者反の癖に抗的な目ね…いいわ、弄ぶだけ弄った後、殺さないで私の下僕にしてあげるわ!」


女性は最後まで言い切ると同時に、前回と遜色がないスピードで私へ接近する。

前回の戦闘から私は女性の能力について、ある程度予想出来ていた。

身体が動かなくなる前の違和感、あの時私は空気中に化学物質を感知していた。

その後に身体が動かなくなる事から恐らく彼女の能力は、自分の身体や周囲の物質を材料に人体に対する作用を持つ特殊なフェロモンを作りだし散布のだろう。

多分それを相手に取り込ませ自由を奪っていたと考えられる。

これならば直接攻撃を受けてもおらず、気付かない間に私の身体が動かなくなった事にも辻褄が合う。

感覚器官や体内器官に作用する成分等に関する知識については、ある程度七凪さんとの座学で学習済だったのは幸運だった。

その時の知識を生かし私はまず周囲のフェロモンと空気中の原子を無理矢理結合させ、別の無害な物質へと作り替える。

そして体内に取り込んでしまった分はどうしようもないので、逆に機能を低下されてしまった体内部分を活性化させる物を生成。

その甲斐もあって前回私は時間がかかり多少無理をしながらも、身体の自由を取り戻し離脱する事ができた。

そして今回は私にアドバンテージがある。

彼女は私が能力に対して対抗策がある事に気付いていない。

最初から迷わず接近してきたという事は、女性に私の能力がばれていないと考えていい。

彼女は接近すれば前回訳も分からず動けなくなった私が身構えると思うだろう。

それが、その隙が私のアドバンテージになる。




接近してくる女性の動きに合わせ、カウンター気味に励起法を発動し掌底を叩き込む。

動かないはずと思っている私が、まさか攻撃してくると思ってなかった様で女性は驚いている。

その表情を見て私が決まるのを確信した時、急に私の視界が反転した。

次の瞬間には女性に組伏せられていて、訳の分からない私は呆然とする。

片膝立ちの状態だが肩関節を極められ、背中から女性が体重を乗せていて少しも身動きする事が出来ない。

そんな私を見降ろし、彼女は冷笑を浮かべる。


「まさか私の『クイーンビー』が破られて最初から攻撃して来た時は驚いたけど、貴女まだまだ未熟ね」


私の考えた作戦は女性の言葉からも悪くなかったと分かる。

だが女性の『励起法』を施した身体能力と技術が、私の予想を越えていたのだ。

女性の言葉に私は、自分の考えの甘さと迂闊な行動に歯噛みする。

しかし、後悔は先に立たない。

このままでは前回の様に女性の能力で自由を奪われてしまう。

絶体絶命の状態。

どうにかしなければと慌てながらも思考を巡らせていると。


「くっ!?」


急に女性が呻き声を上げたかと思うと、私を押さえていた手を放し左手を右手で押さえている。

何が起きているのか訳が解らず女性の押さえている左手を見てみれば、そこには見覚えのあるペーパーナイフが刺さっていた。

それで状況をあらかた理解した私は、いまだに困惑している女性の隙を見逃さず右手の手の平を女性の腹へと当て、自分の能力を発動させる。

発動したのを認識した私は、すぐさま後ずさり女性と距離を取った。

そんな私の行動に動揺から戻った女性は、痛みを抑えて私に追撃しようとする。

しかし、その手が私に届くことなく、女性は崩れ落ちる様に倒れこんだ。


「あんた、何を…」

「あなたの脊髄内に筋弛緩作用を持つアミドグリコシド系の物質を作ったの。当分の間は身体を動かせないはずよ」

「あんたも、私と同系統の…能力者!?」


私は端的に言い女性を見降ろす。

女性は表情を歪め、薄れゆく感覚を無理矢理動かしながら私に言葉を発する。


「私は『クイーンビー』のスセリ。覚えていなさい、いつか、あなたを…見つけ出して、殺して……みせ、る」


女性は自分の名前を名乗り、人を殺さんがばかりに睨んできた。

私はその間一言も発することなく黙ってその様子を見ていたが、クイーンの表情は憎悪に満ちていて…少し後退ってしまった。

女性…スセリが完全に動けなくなった事を確認すると私は近づき、手に刺さっているペーパーナイフを抜き取ってそれを見て私は確信する。

そのナイフはこの四ヶ月間で幾度となく見てきた物。

どうやって気付かれないように付いて来ていたのかまでは分からないが、私は守られていたようだ。

そこまで考えた所で耳元にかけていた骨振動型のイヤホンから撤退の合図が流れる。

私は一度子供たちがいた部屋の方を見てから、施設を脱出するためその場を後にした。




「侵入者は自分が研究員であると確認すると…」


目の前にいる男に、あらかじめに用意していた説明をしていく。

あいつが出ていった後、俺達は一区画が爆破廃棄される前に、研究員達に連れられ避難していた。

そして今、俺達は今までいた施設とは別区画の施設に収容されている。


「しかし、相手の態度に不信感を覚え自分が本当に研究員であるのか確認していたところ照明が戻り、それと同時に侵入者はすぐさま部屋を出ていきました」


この部屋に呼ばれるまで十分に時間があったから、嘘だと気づかれない程度に真実を織り混ぜながら話を作る事ができた。

俺が話し終えたところで黙って聞いていた男が確認してくる。


「侵入者の顔は見ているのだな?」

「はい。一瞬の間だったので私だけが侵入者の顔を見る事が出来ました」


他の奴等には見ていても黙っている様に言っておいたから大丈夫だろう。

あいつらまでこんな事に関わらなくていい。


「では、実験番号7010に命ずる。貴様が確認した侵入者を見つけ出し、情報を引き出し次第に殺せ…失敗した場合は分かっているな?」


言葉の最後に男は念を押すように聞いてくる。

俺は男の言葉の意味を理解しているのですぐに答えた。


「はい、必ず」


俺の返答を聞いて男は頷き俺へ退室を促した。


「任務に必要な手続き等はこちらでしておく。明日から任務につくように。もう下がっていいぞ」


男の許しを得て、俺は一礼してから部屋を出ていく。

これからの俺達の未来に不安と焦燥を抱きながら。



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