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プロローグ へっぽこ勇者のレベル上げ

何とか予定通りにあげる事が出来ました!!


それでは第二部始まりです!!

俺――船津東哉−−は、両親と血の繋がりはない妹の莉奈と俺の家族四人でごく普通の生活していた。

仲の良い友人達と過ごす、充実したいつもの日々。

多少の変化はあるだろうが、そんな毎日が続いて行くものだと思っていた。

たが、その何でもない様な日々はある日唐突に崩れ去る。

ある日の放課後、俺達に降りかかる唐突な事故。

そこで莉奈に起きた、常識では理解できない不可解な現象。

目の前で起きた出来事に頭が混乱していた俺は、走り去る莉奈を呆然と見送ってしまう。

色々な所を捜すのだが莉奈は見つかることはなく、ただ時間だけが無駄に過ぎていく。

そんな中、俺自身も不思議な事件や都市伝説まがいの出来事へ巻き込まれ。

そして今……。




俺は半身で構えたまま深呼吸を何度も繰り返し、さらに集中する事で『励起法』の深度を深めて行く。

今の俺に行える最高深度まで達した事で、一時的に自分の周りの時間が遅くなった様な感覚を覚える。

集中を切らさないようにして重心を落とし、次の瞬間には地面を抉る勢いで右足を踏み込み、弾丸の様に飛び出す。

常人では反応する事も出来ないだろう速さ、俺は相手の目の前まで迫る。

相手との距離があと一歩に迫った所で俺は急ブレーキをかけるように力強く左足を踏み込み、そのエネルギーを伝え腰の捩じりと拳を突き出す力を加える。

足、腰、腕と身体全体を使った全力の一撃。

俺の拳が相手に当たった瞬間、車が正面衝突したような衝撃音が辺りを響かせた。


「…前より『励起法』の最大深度は深くなったみたいだな」

「くっ!」


相手は胸の前で両腕を交差するようにして、その腕で俺の拳を受け止めていた。

相手の涼しげな表情から全然効いていない事に対し短く唸りながら、体勢を立て直すために飛び退ろうとする。

しかし身体全体を使った全力の一撃の代償は大きく、俺が次の動きに映るまでに明らかな隙が出来てしまった。

それゆえに相手の初動に気付いた時には完全に出遅れ、右足からの回し蹴りを避ける事が出来ないと思った俺は、脇をしめ左腕で受け止めようと構える。


「ぐはっ!?」


相手の回し蹴りを受けた俺は、盛大に吹っ飛んでいた。

比喩表現とかそんなものではなく、文字通り宙を浮くほどに吹き飛んでいる。

それから落下運動に入り、地面へと直撃する前までには俺は何とか体勢を整えていた。

防ぐのに使った左腕はあまりの衝撃で痺れて動かなくなっている。

相手が追い討ちをかけるように向かってくるのを見て、俺はある物をズボンのサイドポケットから取り出す。


「これ以上やられるか。見よ! 我が最終兵器。備・長・炭!!」

「はぁ?」



俺の取り出したものを見て、相手の動きが完全に停止する。

あまりの展開と予想外のモノに、理解できなかったのだろう。

俺にとっても予想外の事態だが、これは好都合。

俺は持っている備長炭を相手に向けて全力で投げた。

俺の手から投げられた備長炭は空気に削り取られる様に小さくなり、相手に当たる直前で霧散するように消える。

そのことを不審に思っているのか、相手が眉をひそめた時にそれは起きた。

正確には俺が起こしたのだが、相手の目の前−−備長炭が消えた場所−−が膨大な量の熱量発生し吹き荒れる。


「最近思いついたんだ。やっと離れた所でも分解できるようになったから、それをどうにか活かせないかと考えていたら、こうなった」


流石にこれは面喰らった上に、少し位ダメージが入っただろうと安心していた。

その気の緩みが大きな隙となってしまう。

“ジャリッ”と砂を踏む足音が聞こえたから見てみれば、そこには無傷で炎を突っ切って来る人影があった。


「……まじかよ!」


まさか全然効かないとは思ってもいなかったせいか、反応が遅れてしまう。

相手が目の前まで接近したのを確認したと同時に衝撃、俺の意識は暗転する。

そして、気付いた時には俺の身体は地面に倒れ空を見ていた。


「大丈夫か、東哉?」


仰向けになっている俺の視界に、誰かの影が入り込んでくる。

彼の名前は水上みなかみ 誠一せいいち

同じ能力者で、俺と同じ頃に能力者として自覚したらしい。

しかし、その前から誠一が師事する人から体術の教えを受けていたらしく恐ろしくタフで、能力の相性もあるが俺との実力の差は歴然としている。

しかしながら、さっきまで行っていたように、たまにアドバイスをしながら俺の特訓に付き合ってくれるいい奴だ。


「……はぁ」


地面に倒れ混んだままこれまでの事に思いを馳せた。

俺が研究所を脱出し帰ってきてから、かれこれ3ヶ月が経っている。

脱出した後、俺は何か出来る事がないかと思い五條さんの地図を頼りに俺が出てきた場所やそれ以外の場所を見に行った。

五條さんの地図に描かれている研究所に繋がる場所は全て入口をコンクリ等で固めたり、警備が厳重になり入る事が出来なくなっていた。

これでは再びあの施設へと戻る事が出来ない。

結局俺は何も出来ないままなのかと、嘆きそうになった。

だけど俺はそこで思い出しす。

五條さんやその仲間の人に託された想いを。

この非日常の世界に足を踏み入れているのだ、もしかしたら何かの偶然でまた行けるかもしれない。

それならば今のうちに出来るだけ力をつけようと考えた。

また、あのような事があった時に力があればと思わないように。



「東哉、どうした?」


俺が一行に起き上がらないのを心配してか、誠一が声を掛けてきた。


「いや、なんでもない」


俺は笑顔で答え、身体を地面から起こす。

そんな笑顔で答える俺を、誠一は少しの間不思議そうに見たが特に問題ないと見たのか何も言ってこなかった。

そんな風にゆっくりしていると、誠一が何かに気付いたようで俺の背後の方へ声をかける。


「あっ、彩さん。おはよ、う?」


誠一が声をかけた方を見てみるとそこにはデニムのパンツ、茶色のカットソーと、黒い無地の帽子をかぶっている釣り目がちの目元が特徴的な少女がいた。

彼女の名前は折紙おりがみ あや

誠一と会った時に一緒にいて、詳しい事情は知らないが誠一と行動を共にしている。


「……あんた達、周りを見てみなさい」


彩さんは何かを耐えるように、頬をひきつらせながら俺たちに言う。

言われた通り俺と誠一が周りを見渡してみると、辺りには地面が所々抉れていて、一か所少し焦げた跡もあった。

明らかに俺たちが特訓している間に出来た跡だろう。

俺たちの反応が薄かったせいだろうか。

その時、彩さんの何かが切れる音が聞こえたような気がした。


「馬鹿みたいに暴れて、誰かに見られるかも知れないでしょう! せめて音を出さないようにしなさい!!」

「「いやいや、そんなの無理」」


彩さんの叱責の内容に、俺たちは声を揃えて否定した。

だが、彩さんは納得のいかないようで、腕を組み何かを言おうとしている。

このままだと説教でもされるのかな。

そう思っていると、誠一がおもむろに携帯を取り出した。


「むっ、もうこんな時間か! 彩さんまた後で。東哉、急がないと遅刻するぞ」


誠一が手元の携帯を見て、走り出しながら俺たちに呼び掛ける。

俺も自分の携帯で時間を確かめてみるが、誠一が言うよりはまだ余裕はある。

明らかに逃げる口実だった。

ここは乗らない手はない。


「すみません、彩さん。そういう事で」


俺も誠一を追って駆けだす。


「ちょっと、あんた達待ちなさいよ!!」


彩さんが慌てて俺たちを追ってくる。


こんな日常と非日常が入り混じった世界で、今俺は暮らしている。

もう二度とあんな思いをしたくないから。

そして、妹を…大切な人を捜すために。



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