【この作品は削除されました】
――夢桜しばえもんについての報告書メモ――
**年**月**日
【夢桜しばえもんについて】
夢桜しばえもんは昨今なろうプロジェクトに現れ作品を投稿しているなろう作家であり、彼の作品には様々なジャンルがあるがどれも普通の短編小説だ。
夢桜しばえもんはペンネームで、正体は葉瀬帆高校特別国際支援課の生徒、聖智樹であり、過激思想を持ったテロリストというわけでもない。
昨今のご時世を考えれば作品に適切ではない表現もあるが、それ自体はさほど重要ではない。
問題は彼が書いた作品の内容がことごとく現実のものとなり、夢桜しばえもんは未来で起こる出来事を小説という形で伝えているという都市伝説が生まれている事だ。
以下、現在把握出来ている事例について調査メモを記す。
【人類滅亡後の長崎のとある街にて、マタンゴさんのへーわなお掃除の時間】
この作品は人類滅亡後に魔物達が長崎の平和記念公園で清掃活動をするという話だ。
作品が投稿され程なくしてご時世により撤去された平和の像が何者かによって設置され、雑草だらけで手入れされていなかった平和記念公園もまるで世界が平和だった頃の様に整備されていた。
平和の像は特殊な合金で作られており現在も破壊する事が出来ず、周辺の監視カメラの映像も削除されていた。
つまり何者かが監視カメラをハッキングしている際に平和の像を設置したと考えられるが、数分の間に巨大な建造物を誰にも気付かれずに設置するのはまず不可能だろう。
なお現在も引き続き本事案について二番隊が調査に当たっているものの、まるで手口の見当はついておらずそのままだ。
【蒼海の空に焦がれたトビウオの願い】
この作品は空を飛びたいと願ったトビウオがカモメに頼んで空を飛ぶ話だ。
とりわけ問題になる表現は見受けられない童話だが、人々はこの童話を佐賀県の広範囲で発生したファフロツキーズ現象と結びつけてしまった。
空から魚が落下してくるファフロツキーズ現象は竜巻やいたずらで説明出来るが、事案が起きた時にその様な自然現象は起きていなかった。
また散らばっていた魚はほとんど発見時には生きており、遺伝子を照合した結果地球上のどの生命体とも合致しなかった。
要するに新種の魚だが、一部では地球外の生き物だという突拍子もない発想をする人間もいる様だ。
けれど実際向こうの世界の魚なのであながち間違いでもない。とすると誰かが生きた状態でこちらの世界に運んでばら撒いたのだろうか。
それならば説明がつくが要検証する必要があるだろう。
【終末世界の修羅がいなくなった国、回収屋のとある一日の記録】
この作品は終末の世界で人類が遺した物資を回収する旅人の物語だ。
本作品では博多ドームと思しき場所で旅人が不発弾を解体する描写があり、民衆はそれを博多ドームで発生した暴動と結びつけてしまった。
通称ダルマオンナ事件と呼ばれる暴動は事柄の性質上詳細な内容が秘匿されており、それがより余計な憶測を生み出してしまったと推測される。
けれどもしも本事案に対応した隊員が鎮圧に失敗していれば、おそらく博多ドームを含めた周囲一帯は爆発に巻き込まれて甚大な被害が出てしまったはずだ。
ことごとく小説と同じ様な事が現実になっている。まさか夢桜しばえもんは本当に予言者なのだろうか。
そんなオカルト染みた事があり得るはずがないが、まずはその事実を受け止めなければならないだろう。
【人類滅亡後の熊本のとある街にて、ガブリンが見つけたおいしいたからもの】
この作品はお腹を空かせた魔物達が人間の幽霊の様なものと遭遇し、熊本ラーメンを食べるという作品だ。
同時期、現実世界の熊本の避難所に大量の物資が提供され、その中に宇宙食のスペース・ラムが存在していたのでやはりこれも関連付けられてしまう。
それだけならば親切な人間が名前を告げずに物資だけを置いていっただけで説明がつく。これは比較的説明可能な事例と言えよう。
問題は誰が何のためにそんな割に合わない事をしたかだ。他の事案とは違い、これは伝手と財力さえあれば容易に再現は可能だ。
もしかすると夢桜しばえもんは予言者ではなく、何者かが意図を持って予言者に仕立て上げているのかもしれない。
【修学旅行で木刀を買ってもラブコメは始まらない】
この作品は宮崎の高千穂を舞台にした、失恋をテーマにした恋愛物語だ。
やはり同時期高千穂に推定二トンの構造物が設置されており、それが高額な貴金属であるルテニウムだった事で騒動になってしまった。
構造物はいわゆるモノリスと呼ばれる長方形の物体であり、日本神話の天逆鉾との関連性をこじつける人間もいるがこれはどう解釈すべきだろうか。
長崎の事例とよく似てはいるが、監視カメラがあまり存在しないとはいえ山に登って設置するのは現実的ではない。
神話の道具が登場した事で予言者夢桜しばえもんが神格化されたのは間違いないだろう。前述の宇宙食と組み合わせ、中には宇宙人だと荒唐無稽な推理をする人間もいる様だ。
小説の内容とは特に関係なく、高千穂というワードだけで勝手に結び付けているだけだとしても彼等にとっては些細な問題なのだろう。
【終末レストランのナポリタン】
この作品は人類が滅んだ世界のレストランで、魔物が店主の想い出のナポリタンを食べるという話だ。
心温まる童話の内容とは裏腹に人々はニューヨークで大規模な陥没が甚大な被害をもたらした事案とこの話を結び付けた。被害者の中にイタリアマフィアの幹部がいた事も騒ぎになった理由の一つだろう。
インフラが崩壊した今の時代では世界中至る所でこの手の話は聞く。
作中の街はニューヨークだと明言されてはいないので、パリや南アフリカや東京で発生したとしても同じ様にこじつけられるはずだ。
作中でも廃墟の描写はあるが陥没による死者や怪我人の描写はなく、ナポリタンは実際には日本発祥なのでイタリアマフィアと結びつけるのも無理がある。その連想ゲームが通用するのは日本人だけだ。
【終末世界の炎と岩石の街、回収屋のとある一日の記録】
この作品は前述した回収屋の物語と同じシリーズで、鹿児島をモチーフにした廃墟の街で旅人が切子を探すという話だ。
作中では火山の噴火の描写があったが、民衆は桜島の南岳山の噴火警戒レベルが引き上げられた事と結びつけてしまった。
至る所に火山がある九州で噴火警戒レベルが高まるのは日常茶飯事であり何ら異常と呼べる自然現象ではない。
地震大国にして火山列島の日本では一年以内に大きな地震が起きると言えば大体当たる。誰かが鹿児島で火山が噴火すると予言した場合、むしろ外すほうが難しいだろう。
【ハルカの終末旅、夢の彼方の忘れられた黄金の島】
この作品は終末世界でコールドスリープから目覚めた少女が沖縄を訪れる話だ。
作中では人類が地球外に脱出しようとしていたと推測出来る描写があり、またクライマックスで龍が空を目指して飛んでいるのもスペースロケットを暗喩しているのだろう。
この作品は他のものとは違い現実世界で結びつけられた事案は無かった。
けれど夢桜しばえもんが宇宙人という説、また予言者という説から一部の民衆は近いうちに宇宙人による地球脱出計画が行われるのではないかと考えてしまったらしい。
そして宇宙に逃れて生き残るのは彼等に選ばれた一握りの人間だけ――とてもわかりやすいありがちな陰謀論である。
しかし馬鹿げていても大衆が信じればそれは真実となる。やがて大きな混乱をもたらす可能性は十分にあるので警戒は必要だろう。
【まとめメモ】
予言者夢桜しばえもんの都市伝説には説明出来る事例とそうではない事例が混在しており、それがより信憑性を増大させていると言える。
作者である聖智樹は全く現在の状況を把握していないが、早急に手を打たなければやがて重大事態を引き起こす可能性があるだろう。
やはり何者かが小説に書かれている事を再現する事により、予言者夢桜しばえもんを作り上げ企みに利用しようとしているのだろうか。
心苦しいがこの事を本人に伝えるべきだろうか。
だけどそれは彼を深く傷つけてしまうだろう。場合によっては筆を折ってしまうかもしれない。
駄目だ。いついかなる時も私は秩序を護るものとして役割を果たさなければならない。
それが正しい事はわかっているのに、本当に私は何をしているのだろう。
追記メモ:
このメモは一体なんだろう
私はこんなものを書いた覚えがない
こんな記録は直ちに削除しなければならない
こちらの世界で夢桜しばえもんが都市伝説になっているという事を智樹君に決して伝えてはならないというのは会議で決まったはずなのに
何かがおかしい
これは私の考えじゃない
違うそんな会議は開かれていないなんとかして伝えなければ違う違うあたまがいたいいたいいいいいいいいいいいいいいいい違う違う血がyもヒもあい利用されているあつはともっくとひかりの夢を奪うとしている黒幕はああ繧繧ア医??縷ァ*――
(以降、文字化けして読む事が出来ない)




