シェリー酒
そのバーで彼女と出会った。
僕はフォアローゼズ
彼女はブルーハワイ
二人共、恋を失くしたやるせなさで……
飲み付けないものを飲んでいた。
なぜそれが分かったかって?
バカみたいな平日で……
年老いたバーテンさんの他は
僕たち二人だけだったから
手探りの会話。
話そうとちょっと息を吸ったタイミングが
僕とぶつかって……
彼女は気まずさを抱えて僕から視線を外し
ブルーハワイに色付いた息の逃がしどころを
バックバーに求めた。
「あれもウィスキー?」って訊いたのは
コロシアフィノのボトルで……
「シェリー酒ですよ」
と答えたバーテンさんの
丸眼鏡のレンズが片方光っていた。
酔いに染められた彼女の瞳が
こちらを見つめるので
彼女の方へ
少し体を傾けたら
僕の耳を両の手のひらで包んで
シェリーの酒言葉を教えてくれた。
そして、
その言葉の魔法に……
僕たちは掛かったフリをした。
最初のうちはね。
二人の前に
並べられたグラスへ
シェリーが注がれ
それからいくつグラスを並べたのか?
二人
同じ色の息になって
腕を組んでバーを出たら
指輪の露天商と目が合った。
「指輪ホイホイに引っ掛かった」と二人ケタケタと笑って
そのままネオンに惹かれて
“ホテルホイホイ”になったけど
「今日だけのハネムーンだね」って
キチンと指輪をしたまま……
僕らは
何度も何度も繋がった。
運命の蕾を……
各々の胸の内に秘めながら。
そして蕾は大輪の花となり
あの時の指輪たちは
妻のジュエリーボックスに
僕たちの縁を繋いだ
大切な思い出として
今も並んで収められている。
<fin>
シェリー酒の酒言葉は「今夜はあなたにすべてを捧げます」ですって! ( *´艸`)
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