1.関係
「あ、同じクラスの!」
暑さが芽生えた初夏のころだった。
眼科での診断を終えて建物を出ると、彼女と出会ってしまった。目の前、道路を挟んだ向かい側で彼女は手を振っていた。
角田桜空。いわゆる陽キャ。僕とは住む世界が違う人。正直に言うと、僕は彼女が嫌いだ。まあ、騒がしくて馴れ馴れしい人は皆嫌いなんだが。
僕は、知らない人のフリをしようとした。そうしたら、いつもの生活を過ごせる。そう思えた。また引越しするのも面倒くさいし。
なんてとこを考えていたら、彼女が道を渡って来た。笑顔で。僕にはその笑顔が怖かった。
「やっぱり!えーっと、灰戸くんだよね?」
僕は頷いておいた。正直、何か変な期待をしていたのかもしれない。どうしてかと問われると、困ってしまうが。
「そっかー、平日だったからクラスメイトと会うだなんて想像してなかったよ。」
今日は月曜日。僕は高校をサボって眼科に来ている。眼科の近くには病院がある。
僕は何も返事をしなかった。
「灰戸くんは眼科来てたんだね。コンタクトでもしてたの?」
僕は何も言わなかった。彼女は僕の両目を鋭く見つめている。色の違う僕の目を。彼女と会うなんて知ってたら、カラコンを持って来てたのに。
「色、違う?」
「はい。オッドアイです。」
とうとう僕の口を開くと、彼女は驚いたような顔をした。
正直、僕も驚いていた。なんでこんな人に話してしまったのだろう。
彼女は口を開いたまま固まっていた。僕の目を見比べながら。
「オッドアイ・・・。」
やっと口を開いたかと思うと、彼女は僕の言ったその単語を繰り返した。
「なんか・・・すごいね・・・。」
そう言うと、彼女は笑顔を取り戻そうとした。僕の顔は真顔のままだった。
すごい・・・。それは、僕にとっての侮辱と取っていいのだろう。こんな呪いを、羨ましがっているのだから。
やはり、僕は何も言わなかった。そんな僕の気持ちを悟ったのか、彼女が口を開いた。
「もしかして、嫌だったりする?知られるの。」
僕は小さく頷いた。
「そっか。そうだよね。平日に学校サボってまで来てるからね。」
彼女はなお笑顔だった。気持ち悪いくらいの満面の笑みだった。
さっさと帰ろう。もう疲れた。
彼女はどうせクラス中にばらまいてしまうんだろう。僕の気持ちなんかも理解せず。
僕は口を開こうとした。次に彼女の口から面倒事が飛び出す前に。
でも、いつも事は僕が思うように進まない。彼女が先に口を開いた。手を胸の前で合わせながら。
「ごめん。代わりにって言うのはなんだけど、私の秘密、教えたげるから。」
僕はため息をつきそうだった。彼女の馬鹿さ加減に飽き飽きとしてしまったからだ。
・・・これ以上話しても無駄だ。かといって、このまま彼女が帰してくれるとも思えない。
僕は頷いておいた。彼女がどうでもいい話をするように。
次の瞬間、それに反応するように、彼女の顔からは笑顔が消えた。
僕の心臓が少しだけ大きな音を立てた気がする。
「そっか。じゃあ話すよ。」
さっきとは違って、彼女は少し低い声を発している。
「私ね・・・」
・・・。彼女の言葉は僕の冷たい心に突き刺さり、そのまま快晴の空にまで駈けていった。
「・・・は?」
僕の口からは不意にその一文字が零れていた。
彼女はまた笑顔になった。
「聞こえなかった?じゃあもう一回言うよ。
私ね、もう少しで死んじゃうんだ。」
信じる気もない。ただ、いつもの彼女とは正反対の言葉が放たれたから、驚いている。それだけだ。
「病気でね。あと半年もしないうちに死んじゃうんだって。信じられないよね。まだピチピチの17歳なのに。」
彼女は僕を置いて話を続けた。やっぱり、影ひとつない笑顔で。
そう言った後は、少しだけ静寂の時間が訪れた。それを壊したのは僕だった。
「なんで・・・?」
小さな声で言うと、彼女は首を傾げた。
「なんでって、大凶が当たったようなもんだよ。」
「違います。」
そう言うと、彼女の眉に皺が寄った。
「なんで僕に話したんですか?」
正直に言おう。彼女に興味が湧いた。馬鹿みたいなことをする彼女に。
彼女はまた笑った。
「君にとって、私はどうでもいい人でしょ?
それが気に食わないだけだよ。クラスメイトなんだから少しくらい意識してくれないかな〜って。」
僕は納得できなかった。
「んまあ、ただのエゴだよ。君には多分、理解されないけどね。」
ああ、僕には理解できないさ。だからこそ、聞きたい。
「さっきからずっと、角田さん笑ってますけど・・・」
「さくちゃんか、桜空って呼んでよ。そっちの方が慣れてるし。」
僕は一度ため息をついた。
「じゃあ、桜空さんはずっと笑ってますけど、死ぬことが怖くないんですか?」
そう言うと、彼女の顔が刹那に曇った。
「怖くないのか・・・かぁ・・・。」
彼女は空を仰いだ。
風が吹いて、彼女の長い髪を揺らす。
「怖いよ。」
もう一度僕の方を見た彼女は、やっぱり笑顔だった。
「とっても怖い。だって、死んじゃうんだもん。
私が明るく取り繕ってるのは、怖いからだよ。そうしないと、怖さに押しつぶされちゃいそうなんだ。」
僕は何も言わなかった。彼女の本音に圧倒されてしまって。結局僕も彼女に偏見を持っていたと感じて。
「なんだか、今日は君に秘密をたくさん話してるなぁ。」
そう言うと、彼女は僕の方を見た。その目は、少しだけ潤んでいた。
「代わりにさ、私の友達になってよ。
唯一秘密を知ってる君が、死ぬまで私を楽しませてよ。」
そう言うと彼女はまた笑った。僕は肩を震わせた。
四面楚歌のこの状況。僕は彼女を噛むことができるだろうか。
・・・多分、無理だろう。このまま面倒なことに巻き込まれるんだろう。
僕は首を縦に振った。
それを見た彼女は手を差し出した。
「それじゃ、よろしくね、灰戸・・・」
彼女は笑顔を崩してから僕の目を見つめた。
「灰戸くんって、名前なんだっけ?」
僕は首を横に振った。
「あんまり知られたくない感じ?」
呼ばれたくないだけだよ。あんなクソみたいな名前で。
「ずっと名前で呼ばないって、誓えるなら教えます。名前で呼ばれるのが好きじゃないんで。」
そう言うと、彼女は真顔で首を縦に振った。
「約束するよ。名前で呼んだらハリセンボン飲むから。」
彼女は出していた手の小指を立ててこちらに向けた。
僕は気にも留めずに名前を言った。それと同時に吐き気もした。
名前を言い終わると、彼女は声を出さずに口を動かした。僕の名前を繰り返しているんだろう。律儀にも声に出さずに。
「⬛︎くん。私はいい名前だと思うよ。」
それには何も反応しなかった。
「それじゃあ、改めて。よろしくね、灰戸くん。」
彼女はまた手を差し出した。
「よろしくお願いします。」
僕は特に何の躊躇いもなく、その小さな手を握った。
・・・・・・
「全然大丈夫だよー。」
教室中に声が響く中、何故か彼女の声だけが聞こえてきた。
彼女と友達になった次の日。僕の日々が壊されないか、ただただ心配していた。
彼女は数人の女子生徒と会話を楽しんでいる。対照的に、僕は独りで読書に勤しんでいる。
「いやいや、学校サボって彼氏と遊びになんか行かないよ。てか、私が彼氏募集中なの知ってるでしょ?」
世界中どこにでも居そうな、教室で友達と談笑している少女が死んでしまう。いつも明るく笑顔な少女が死んでしまう。正直、未だに信じられない。
「皆に言ってないだけでモテるんだよ、あたし。」
彼女から僕に接することもないから、夢だったのかもしれない。夢だとしても気分が悪いのだが。
彼女の方をチラリと見てみると、やっぱり笑顔だった。昨日見た笑顔とは違うような笑顔を見せていた。
彼女はこちらに気がつくと、昨日のような笑顔を見せて、小さく手を振った。
僕は目を伏せた。
「んぇ?別になんでもないよ。制服にゴミ付いてたから、払っただけよ。それよりさ・・・」
その後は僕の知らない人の話をしていた。多分、アイドルかなんかなんだろう。興味は一切・・・。
そこで僕は考えるのをやめた。なんで彼女の話を盗み聞きしてるんだ。
僕は一度目を閉じてから、もう一度本に向き合った。ページは一枚も進んでいなかった。
・・・・・・
彼女と出会ってから数日が経った放課後。誰もいない教室で、彼女は待っていた。黒板に落書きをしながら。
ため息をついてから教室に入ると、彼女はこちらを向いた。茜色の西日を背景に、彼女は笑顔を見せた。
「お疲れー、灰戸くん。」
落書きを消してから、彼女は僕と向き合った。
「お疲れ様です。」
僕は廊下の方を見て、誰もいないことを確認してから、自分の席に座った。彼女は少し高い教卓に飛び乗った。
「この後暇ー?」
僕の方を真っ直ぐ見つめて、彼女が口を開いた。僕は何も言わずに帰りの支度を進めている。
「暇だね?それなら遊ぼうよ。」
僕は肩を震わせた。
「嫌です。」
そう言うと、彼女は笑顔になった。
「えー。友達になって楽しませてくれるって約束したのに。」
僕はため息をついた。別にイラついた訳じゃない、呆れたからだ。
「どうせ、暇なんでしょ?だったら、君の長い人生の中の数時間を私に頂戴よ。」
・・・。いちいち僕の立場が弱くなることを言わないでほしい。それに、勝手に暇だと決めつけないでほしい。合っているけど。
僕がなんともいえない表情をしていると、可能は笑った。
「じゃあ、決まりね。あ、君ってどこ住みだっけ?」
「関宮です。」
彼女の圧に押されて、答えてしまった。可能の図々しさには頭が上がらない。
「うっそぉ!私も関宮だよ!そんじゃ、帰りの心配はしなくてもいいね。」
彼女はいつまで僕を鳥籠に閉じ込めておくつもりだったのだろう。昔、ペットショップで見た文鳥もこんな気持ちだったのだろう。
「どこかリクエストある?無いなら私が適当に決めちゃうけど。」
彼女は、彼女はまるで欲しかった玩具を与えられた少女のように、なんだか楽しそうだった。
「自分より・・・」
自然と口を開くと、彼女は不思議そうな顔をしてこちらを見た。
「自分より、友達と行った方が、いいんじゃないですか?」
なお、彼女は不思議そうな顔をしていた。
「灰戸くんも友達だよ?」
「言ってる意味、分かりませんか?」
そう答えると、彼女は眉に皺を寄せた。
「シホとか、アヤカとかのことでしょ?ぶっちゃけ、君といる方が楽だと思ったんだよ。私の本音をぶつけられるし、そもそも余命のこと知ってるのは君しかいないから。」
納得は、できなかった。
「じゃあ、友達に話して、楽になったらいいんじゃないですか?そうしたら、楽しい時間を、素敵な友達と過ごせますよ。死ぬまでの短い時間を・・・」
「そんなの・・・。」
彼女は低い声でそう言った。笑顔なんてなかった。
「そんなの、分かってる。それほど私は馬鹿じゃない。」
彼女は立ち上がり、真っ直ぐ僕を見つめた。さっきとは違う感情で。
「君には分からないと思う。あの子たちに伝えたらどうなるのか。もう、友達じゃいられなくなるんだよ。」
・・・。僕には全く理解できなかった。
「私だけを特別扱いするなんて、嫌だ。どうせ死ぬんだから、それならいつも通りの日々をいつも通りに過ごしたい。私は、そう思う。」
・・・。じゃあ僕は・・・。
「僕は・・・。いつも通りには含まれないと。」
「そうだね。たまたま出会ってしまっただけ。ただ、私の秘密を知ってる、それだけの理由で、私の息抜きになってる。」
・・・。
「私だって、嘘をつき続けるのは、辛いんだよ。」
彼女の目は潤んでいた。
「こんな私と仲良くしてくれる人達に、こんな私を大切に思ってくれる人達に。恩を仇で返すようなことをし続けるなんて、辛いんだよ。私だって嫌なんだよ。」
彼女の頬には涙が伝っていた。
「僕は・・・。いや、僕にはやっぱり分からないです。
ただ、僕が間違っていたことだけは分かります。すいません。」
そう言うと彼女は涙を拭って、また笑顔になった。
「多分、そのうち分かってくれるよ。」
その後は少しだけ静寂が続いた。その静寂を引き裂いたのも彼女だった。
「うーん。やっぱ、敬語慣れないなぁ。これからタメ語で話してよ。」
僕は・・・。
「もーそんな顔しないでー。ほら、私を怒らせたお詫びってことで。」
不平不満を言う暇すら与えてくれない。これから何を言ったって、彼女は我儘を突き通すのだろう。
「分かった。」
そう言うと、彼女は満面の笑みを浮かべた。その笑顔は、この数日見たどんな笑顔より・・・その、素敵だった。
「そのまま呼び捨てで呼んでくれてもいいんだよ?」
今度はニヤニヤとして僕の顔を覗き込んできた。
「それだけはしないよ。たとえ僕が死ぬことになっても。」
僕も口角を上げると、彼女は驚いたような顔をした。その顔を見ると、僕も笑顔を浮かべてしまった。
「君も笑えるんだ。」
「僕をロボットかなんかだと思ってたの?」
そう聞くと、彼女はクスクスと笑った。
「日が暮れちゃうし、早く遊びに行こ。ロボットくん。」
彼女は、僕の気持ちを他所に笑顔で僕の手を引いた。
「よーし。じゃあ、君んちにレッツゴー!」
・・・・・・
彼女に手を引かれて数十分後。彼女は僕の部屋でコントローラーを握って叫んでいた。
「ちょっと!今のズル・・・ああ!話してるんだから攻撃しないでよ!」
僕はというと、うるさい彼女に何度も攻撃を当てていた。
あの後、彼女は本当に僕の家に着いてきた。
「えって、私の部屋には入れたくないもん。私が死んでも部屋にだけは入らないでよ。」
なんとも女の子らしい理由で、半強制的に僕の家に決まったわけだ。いや、訂正しよう。なんとも我儘な理由で、だ。
そんなこんなで彼女は僕の部屋にいる。奇声を上げながら。
今は格闘ゲームをしている。僕の部屋には漫画とパソコンとゲームしかないから、自然とゲームをすることになった。それだけだ。
ちなみに、少し前まではレースゲームをしていた。彼女はビリだったが。
適当にいなしていると、ゲームは僕が勝ったと教えてくれた。
「ああ、もう!勝てない!」
彼女は大声を上げると、仰向けに寝転がった。僕の許可もなしに。
「桜空さんがやりたいって言ったのに。」
そう言うと、彼女は口を尖らせた。
「やりたいのと、勝ちたいのは違うんですぅ。やっぱり灰戸くんはデリカシーが無いなぁ。」
こういうのを負け惜しみというのだろう。その言葉だけはぐっと飲み込んだ。
ころころと表情を変える彼女を面白がっていると、彼女は何か思いついたように起き上がった。
「よし、もう一戦。」
彼女の口角は上がっていた。
「私が勝ったら言うこと聞いてもらうからね。」
唐突になんの脈絡もない罰ゲームを押し付けられ、負けられない戦いが始まった。
「僕にはなんのプラスもないのに?」
「君は強いからいいの。」
そう言った彼女の声は少し高くなっていた。
戦いが進むと、彼女は口を開いた。
「君って、友達いるの?」
「いない。」
心理戦を挑むつもりなのだろう。僕は面白そうなので心理戦に乗ってみた。
「私は?」
「桜空さんを入れれば一人か。」
「え、なんか嬉しい。」
彼女は意味もなくジャンプした。
「じゃ、じゃあ、好きな人は?」
「いない。」
「ええ、寂しいの。」
なんかムカついたので、連続攻撃を浴びせてやった。彼女は一度奇声を上げた。
「じゃあ、気になる人は?」
「いると思う?」
「私とか?」
「面白い冗談ですね。」
そう言うと、彼女は頬を膨らませた。
「それなら、クラスで可愛いと思う子は?」
「いな・・・」
「適当に答えてる?」
「いいや、大真面目。」
「強いて言うなら?」
「強いて言うなら・・・文系だけど数学が得意なあの子とか?」
「サユリちゃんね。へー、あーゆー子がタイプなんだ。」
そう言うと、彼女はニヤニヤと笑った。ゲームの中も、現実の僕にも未だゼロダメージだ。
「彼女欲しいとか思わないの?」
「微塵も。」
「興味は?」
「全く。」
「じゃあ私は?」
「強いて言うなら友達。」
「そこは自信を持って友達と答えてよ・・・。」
彼女はまた口を尖らせた。
「私は友達だと思ってるけどなぁ。」
「そうなんだ。」
「結構真面目な話なんだよ?」
「それならゲーム中に聞きたくなかったよ。」
そう言うと、彼女は笑って確かにと言った。
「てか違う。私が彼女になったらどう思う?」
「面倒くさそう。」
「ひっぱたくよ?てか、そういう意味じゃないし。」
そう付け足すと、彼女は一度ため息をついた。
「すぐ死んじゃうような人が彼女になったら、君はどう思う・・・?」
・・・今度は僕が無意味にジャンプした。
「・・・。」
「答えられない?」
彼女の声は少し低くなっていた。
「僕は・・・。僕にはよく分からない。恋人について考えたことなんて全くないし、欲しいとも思わない。
でも、もしも、そんな人が恋人になったとしても、大切にはする。多分、僕だったらそうする。」
僕は画面から目を離した。
色んな言葉が僕の中を駆け巡った。彼女のも、それ以外も。プラスもマイナスも。
動揺していた僕を現実に戻したのは、ゲームの音だった。さっきも聞いた音。ゲームの勝敗を教える音。
ただし、今度の彼女はガッツポーズをしていた。
「やりい!私の策略に見事引っかかったね!」
彼女は笑顔だった。僕は今までで一番イラついていた。
「ひとでなし。」
「うるさいでーす。勝った方が正義なんでーす。」
さっきの真面目な彼女はそこにはいなかった。その代わりに、いつも通りの彼女がそこに座っていた。
「つまり、君の嘘で僕は無駄に動揺したと。」
「いや、嘘ではなかったよ。悩んではいたことだし。ただ、君があんなに動揺してくれるとは思わなかったけどね。」
そう言うと、彼女は高笑いした。もしも、ここに法律が無ければ、僕は彼女を殴っていただろう。
「うーん。何を聞いてもらおうかな。」
今度の彼女はうねり声を上げた。僕のことを放っておいて。
・・・。駄目だ。モヤモヤする。理由は分かってる。僕は楽しんでいる。嫌いだったはずの彼女と過ごすことが。それに、怖がっている。この関係が、続かないことに。
「よーし。決めた。」
そう言うと、彼女は手を叩いた。
「今度の連休、君んちでお泊まり会しよ。」
「・・・は?」
唖然とする僕を余所目に、彼女はあれやこれやと話し出した。